く~にゃん雑記帳

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<星野道夫の旅> 東大阪市民美術センターで没後20年特別展

2018年02月02日 | 美術

【18年間にわたってアラスカの大自然、生命の息吹を活写】

 東大阪市の花園ラグビー場南側にある市民美術センターで、アラスカの大自然を撮り続けた写真家、故星野道夫氏(1952~1996)の作品を一堂に集めた特別展「星野道夫の旅」が始まった。2016年夏にスタートした没後20年全国巡回展の一環。様々な動物やオーロラ、ツンドラの紅葉、草花など約250点の写真のほか、愛用のカメラやカヤック、寒冷地用のバニーブーツなども展示している。3月4日まで。

       

 会場は5つのコーナーから成る。「イントロダクション」(アラスカとの出会い)、代表作を展示した「マスターピース」に続いて「生命のつながり」「神話の世界」「星野道夫の部屋」。星野氏がアラスカに関心を抱いたのは学生時代に東京・神田の洋書古書店で写真集を目にしたのがきっかけ。早速、アラスカのある村長宛てに手紙を出した。「仕事は何でもするので、どこかの家においてもらえないでしょうか」。半年後「歓迎する」との返信があったのを機にひと夏をアラスカで過ごす。そして大学卒業後アラスカ大学に留学し、以降、本格的な撮影・執筆活動に。「イントロダクション」コーナーにはその時の村長から届いた手紙も展示されている。

 星野氏の作品で最も多いのがクマとカリブー。展示会の案内チラシに掲載された「夕暮れの極北の河を渡るカリブー」も代表作の一つだ。「氷上でくつろぐホッキョクグマ」は雪の塊を枕にして無防備に両脚を広げて眠るクマの表情が愛らしい。動物の親子や子の一瞬の表情を切り取った作品も多い。「小さな流れを渡れない子を励ます母カリブー」「春に生まれた子グマを背中に乗せている母グマ」「タテゴトアザラシの赤ちゃん」……。いずれの作品にも星野氏の温かい眼差しが注がれている。

 作品の間に掲げられた星野氏の言葉も印象に残る。「人間のためでも、誰のためでもなく、それ自身の存在のために自然が息づいている。そのあたりまえのことを知ることが、いつも驚きだった。それは同時に、僕たちが誰であるかを、常に意識させてくれた。アラスカの自然は、その感覚を、とてもわかりやすく教えてくれたように思う」「目に見えるものに価値を置く社会と、見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく、後者の思想に魅かれるのだった。夜の暗い闇の中で、姿の見えぬ生命の気配が、より根源的であるように」

 展覧会初日の1日には夫人星野道子さん(星野道夫事務所代表)によるギャラリートークも開かれた。星野氏は知人から大きなクマにどう接近して撮っているのか問われたとき「クマと一緒に呼吸をするんだ」と答えていたという。道子さんもクマの撮影のため取材旅行に同行したことがあるそうだ。星野氏は自然や動物の一瞬を撮るため、とにかく待ち続けた。どこを通るか分からないカリブーの撮影でも、厳冬の山にこもってオーロラを撮る時も。道子さんは「待っている時間を楽しみにし、大切にしていたからこそ、こういう写真が撮れたのではないでしょうか」と話していた。ギャラリートークには写真家星野さんの人気を示すように、説明会場からあふれんばかりの多くの観客が詰め掛けた。

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