く~にゃん雑記帳

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<松伯美術館> 松園・松篁・敦之三代展「清らかな世界を想い描く」

2017年12月03日 | 美術

【三者三様の画面に漂う高い気品と静謐な空気感】

 松伯美術館(奈良市登美ケ丘)で上村松園・松篁・敦之三代展「清らかな世界を想い描く」が開かれている。気品あふれる近代美人画で女性として初めて文化勲章を受章した上村松園(1875~1949)。その息子松篁(1902~2001)は花鳥画の大家として名を成し、孫の敦之(1933~)も多くの鳥を飼育し観察しながら静謐な花鳥画を描く。今展では親子3代の代表作とともに制作の過程を示す下絵や素描を、前期・後期の2期にわたって展示する。

 

 前期は「四季に詠う」と題して12月17日まで開催中。松園の作品では「楊貴妃」をはじめ「唐美人」「伊勢大輔」「雪」「16歳の自画像」などが展示されている。「楊貴妃」(写真㊨の作品)は48歳のときの作品で第4回帝展出品作。絶世の美女楊貴妃の湯上がりの姿が二曲一隻の屏風に描かれている。「伊勢大輔」は一条天皇の中宮彰子に仕えた平安時代の女流歌人で、百人一首「いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな」の歌で知られる。

 松篁の作品は「月夜」「真鶴」「蓮」などの大作を中心に15点。松篁は98歳で没したが、展示作は22歳のときの「椿」から96歳のときの「笹百合」まで幅広い作品を網羅している。松篁は「中国の麝香(じゃこう)のような香りのする絵」を理想とし、「卑俗なにおいというものを排して、本当にたおやかな、本当に東洋的な精神の香りみたいなものを選んでいきたい。そういう香りのするところには恐らく格調といったことと響き合うものがあるのではないか」。そう話していたそうだ。

 敦之は京都市立芸術大学名誉教授で松伯美術館の館長も務める。祖母松園、父松篁と同じく京都市生まれだが、独自の花鳥図の世界を描くため奈良市山陵町の丘陵地で約260種1600羽の様々な鳥類を飼育し観察を続けている。展示作品はインドのシカを描いた「月に」「夕日に」や大阪新歌舞伎座の緞帳原画「四季花鳥図」など。「自然界の営みはあくまで優しく、そして厳しいものである。花鳥図は自然の英知に導かれ、教えられて深めていく。それゆえに自然に対する謙虚な気持ちを捨てては成り立ちえない世界である」。作品のそばに掲げられた「敦之のことばから」が印象的だった。後期「生命の詩」は年明けの1月5日から2月4日まで。

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