く~にゃん雑記帳

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<ムジークフェストなら⑤> 「堤剛&萩原麻未 デュオ・リサイタル」

2017年06月21日 | 音楽

【年の差44歳! チェロ界の重鎮と注目の女性ピアニストの協演】

 国際的なチェリストの堤剛と若手女性ピアニスト萩原麻未という魅力的な取り合わせのコンサートが20日、奈良市西大寺の秋篠音楽堂で開かれた。堤74歳、萩原30歳。年の差44歳のデュオ・リサイタルだ。堤は名実ともに日本を代表するチェリストで、2013年まで9年間、桐朋学園大学の学長を務めた。現在は演奏活動の傍ら、霧島国際音楽祭音楽監督やサントリーホール館長なども務める。一方、萩原は2010年のジュネーブ国際コンクールピアノ部門で優勝し一躍注目を集めた。コンサートは堤の円熟味あふれる演奏と萩原の溌剌とした演奏が融合し、チェロとピアノの二重奏の醍醐味を満喫させてくれるものだった。

      

 プログラムは前半がベートーヴェンの「モーツァルトの『魔笛』の〝娘か女か〟の主題による12の変奏曲」、モーツァルトの「幻想曲二短調」、セザール・フランクの「チェロ・ソナタ」。15分の休憩を挟んで、後半は三善晃作曲の「母と子のための音楽」5曲とリヒャルト・シュトラウスの「チェロ・ソナタ」。ピアノソロの「幻想曲二短調」以外はいずれも二重奏だった。

 フランク「チェロ・ソナタ」は元々バイオリン・ソナタが原曲。フランクはベルギー出身で19世紀にフランスで活躍した。バイオリン・ソナタの傑作といわれるこの曲はチェロのほかフルート・ソナタなどとして演奏されることも多い。堤は身も心もチェロに委ねるように、時に目を閉じ時に体を大きく揺らしながらビロードのような艶やかな音色を紡ぎだした。萩原もそれに呼応するように繊細かつ大胆に卓越したテクニックで鍵盤を操った。とりわけ第4楽章のフィナーレの息の合った演奏は感動的だった。

 萩原がジュネーブで優勝したのは23歳の時。コンサートのファイナルではスイス・ロマンド管弦楽団をバックにラヴェルの「ピアノ協奏曲」を演奏した。その時の演奏と授賞式の模様を繰り返しユーチューブで見たのが懐かしい。当時の新聞には萩原が現地から広島の母親に「信じられない。私が1位でいいのかなあ」と電話で話したことなどが詳しく紹介されていた。その後、1位の名に恥じないよう研鑽を積み数多くの演奏会をこなしてきたためだろう、萩原の演奏は自信に満ち溢れていた。演奏後、聴衆に向かって深々とお辞儀する姿も印象的だった。

 アンコール曲は2曲。最初にラヴェルの「ハバネラ形式の小品」、次いでラフマニノフの「ヴォカリーズ」。この「ヴォカリーズ」は甘美なメロディーが愛され、映画「プラトーン」で使われるなど聴く機会も多いが、堤がチェロで奏でる「ヴォカリーズ」は深みのある音色と旋律がマッチして、より味わい深いものになった。

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