く~にゃん雑記帳

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<クサタチバナ(草橘)> ミカン科のタチバナに似た清楚な白花

2017年05月19日 | 花の四季

【ガガイモ科の多年草、シカが嫌う〝忌避植物〟?】

 ガガイモ科(キョウチクトウ科とも)カモメヅル属の多年草。5~7月頃、まっすぐに立ち上がった茎の頂に直径2cmほどの白花を多く付ける。花は5つに深く裂け横に平開する。日本から朝鮮半島、中国にかけて分布、主に石灰岩地帯に多く自生するという。日本の分布域は本州の関東以西と四国とされてきたが、1992年に福島県の鶴石山(いわき市)で群落が発見され、その後、九州の宮崎県北部にある黒岳(諸塚村)でも見つかった。

 名前はミカン科のタチバナの花によく似た草本であることから。田中澄江著の『花の百名山』には群馬県の黒檜山(くろびさん、赤城山の最高峰)を代表する花として紹介されている。関西では大峰山系の行者還岳(奈良県)や伊吹山(滋賀県)の群落が有名。行者還岳では毎年6月頃、クサタチバナの大群落が大峰奥駈道を明るく彩る。四国の石立山(徳島・高知県境)にはやや小型の変種イシダテクサタチバナが群生する。

 クサタチバナは環境省のレッドリストで「生息条件の変化によって絶滅危惧種に移行する可能性のある種」として準絶滅危惧種に指定されている。イシダテクサタチバナは絶滅危惧Ⅱ類。全国各地でシカの食害が問題になっている。ただクサタチバナに関してはむしろ新しく群落が形成されている地域もあるといわれる。2013年に群馬県立自然史博物館が開いた報告会「上野村のシカ食害について」ではクサタチバナが「赤城山で急増している」という。

 シカが嫌う忌避植物として知られるのがアセビ(馬酔木)。奈良公園(奈良市)一帯には千数百頭のシカが生息するが、その一角「ささやきの小径」はアセビの花の名所にもなっている。この他、トリカブトやサラシマショウマ、イケマ、ハシリドコロなどもシカの忌避植物。これらの多くはアルカロイド系の毒成分を含んでおり、クサタチバナも同様の毒性によってシカを寄せ付けないのかもしれない。

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