く~にゃん雑記帳

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<奈良大学博物館> 奈良の鹿を彫り続けた彫刻家太田昭夫の作品9点

2014年12月07日 | 美術

【収蔵品展で、江戸時代の『源氏物語図屏風』なども】

 奈良大学博物館(奈良市山陵町)で彫刻家・太田昭夫(1930~88)の鹿の木彫などを展示する収蔵品展が開かれている。太田は大阪市生まれで漢学者の祖父、日本画家の父の下で漢籍や芸術に親しみ、大阪市立工芸学校に入学するが、終戦末期の大阪大空襲で一家は罹災。その後、母方の親戚が住む奈良に移り、46年、奈良県工芸伝習生木彫科に入学した。23歳の時「鹿」が日展に初入選、以降、鹿をモチーフに多くの作品を発表した。

 

 太田の自宅アトリエは奈良市内の般若寺町にあった。そこから春日山に行って鹿をよくスケッチしたが、特に晩秋の雄鹿を好んだ。展示作品は9点。『晩秋』(上の作品㊧)は等身大とみられる大きな作品で、立派な角を持つ雄鹿が背中の毛繕いをする。その悠然とした姿は雄同士の闘いに勝った余裕からか。太田の作品は表面を磨いたり彩色したりせずに、ノミの痕跡をそのまま残した素地仕上げが特徴。全身に残る1つ1つのノミの跡は今まさに打ち込まれたような荒々しさで、それが鹿の野性味を引き出している。材はヒノキより粘りのあるクスノキを多く用いた。

 

 雄鹿が上を向いて鳴く『野生』(上段㊨)からは、雌鹿を呼ぶ高い「キーン、キーン」という鳴き声が、また躍動的な『闘争せる雄鹿』(上㊧)からは、角が激しくぶつかり合う音が聞こえてくるかのようだ。小鹿たちが親の足元で休む『群鹿』(上㊨)ではノミ跡の荒々しさが消え、木の温もりが伝わってくる。太田は自著『照玄・太田昭夫の世界』にこう書き残しているそうだ。「私が作ろうとするのは動物そのものではなく、その行動や生態にあらわれる大自然の息吹きなのだ」。(照玄は太田の号)

 収蔵品展では江戸時代作の『源氏物語図屏風』(㊧)や源氏物語色紙絵の『紅葉賀』(㊨)『蛍』なども展示中。色紙絵は源氏物語54帖の各段から1つずつ場面を選んで描いたもの。それを画帖や屏風に仕立て直すことが室町時代末期から江戸時代にかけて盛んに行われた。会期は1月23日まで。

   

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