経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・破綻懸念をよそに財政は急速に回復

2021年12月26日 | 経済(主なもの)
 12/20に公表された7-9月期資金循環では、一般政府の資金過不足が季節調整値で-5.4兆円まで縮まり、一気に前期から6.1兆円改善した。水準は2014年頃と変わらないレベルである。むろん、同日に成立した補正予算の執行によって、再び不足幅が拡がるとしても一過性で、コロナ前のGDP比-2%程度を超える健全財政へ向かう。財務次官の破綻懸念どころか、先々の急速な緊縮による成長の委縮が心配されるところだ。

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 誰かの借金は誰かの貯蓄であるから、7-9月期は、政府の借金が減った分、家計と企業の貯蓄も減って、コロナ禍前に近いレベルに戻ってきた。海外は借金が幾分少なくなっている。リーマンショックの際は、政府の高水準の「赤字」が長く続いたが、今回は、谷が深かったものの、戻りは早い。それとは裏腹の関係となる企業の過剰についても、異様さが尾を引いた前回とは違い、短く済みつつある。

 財政収支が改善した背景には、税収の好調さがある。企業期業績見通しの経常利益は、2021年が3割増、2022年が1割増なので、法人税を中心に更に伸びそうである。また、社会保障基金が平常レベルに回復したことも大きい。ちなみに、雇用保険料率の引き上げが来秋になされるし、年金の支給開始年齢は64歳に延ばされる予定である。財政収支は、ますます改善されることになろう。

 他方、2022年度予算案が決定されたが、一般歳出の増は+4700億円に過ぎず、消費税の前年度補正予算からの増収幅の+4650億円と同程度にとどまる。つまり、高齢化に伴う社会保障費の増は、消費税の自然増で賄われる形だ。その他に、所得税、法人税等の増が+8900億円あるので、見事な緊縮ぶりであり、2021年度補正予算が剥落した後は、急速な財政再建が進み、コロナ前の健全ぶりへと戻って行くだろう。

 地方財政も同様で、地財計画の2022年度の一般歳出が前年度比+4460億円に対し、税収は+3兆7120億円と伸び、ほぼ同じ額の地方債の縮減がなされる。問題は、これら予算の税収は過小ではないかと思われることだ。例えば、国の消費税収は、経済見通しの名目消費が2021年度+2.2%、22年度+4.8%とする中で、前年度決算から2021年度は+0.7%、22年度は前年度予算から+2.2%しか伸びない設定である。

 法人税は更に著しく、証券2社の企業業績見通しが2021年度+30.4%、22年度+9.6%になっているのに、2021年度は14.7%、22年度は3.5%にとどまる。税収全体の上ブレは、2022年度で4.7兆円に及ぶ可能性がある。また、地方税は、国の7掛けくらいの規模がある。税収が上ブレすれば、それだけ緊縮が強まり、コロナ禍を抜けたら、財政再建ができていたといった思わぬ結果になりかねない。

(図)


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 財務次官の懸念をよそに、コロナ対策が一過性のものである以上、税収の好調さを踏まえれば、破綻はほど遠く、国債の「ゼロ金利」は揺るぎないと思えるほどだ。アベノミクスの成果の一つは、2度の消費増税によって、名目2%成長で社会保障費の自然増を賄えるようにしたことかもしれない。そして、並行して伸びる所得税や法人税の税収はどうするのか。すべて財政再建に充てるのが「新しい資本主義」とは思えぬが。


(今日までの日経)
 107兆円予算案 社会保障・国債費60兆円超。3%成長へ回復力試す 来年度、政府は3.2%予測。地方交付税、4年連続増 臨財債1/3。大阪でオミクロン市中感染。

コメント (1)
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