経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期GDP・2%成長はならずとも

2017年02月19日 | 経済
 月曜に公表されたGDP速報は実質で年率1.0%成長と、ほぼ事前予想のコンセンサスどおりだった。強気の筆者は「はずれ組」ということになる。とは言え、GDP速報は変わり得るものだし、特に、在庫や設備投資は、法人企業統計が出るまでの「仮の姿」だ。当たり外れも面白いが、中身をよく分析することが大切である。その意味で、消費の結果は、今後を占う上で、とても興味深いものだった。

………
 今回のGDPの一般的な受けとめは、外需依存で消費が弱いというものだろう。しかし、「名目」の消費は意外なほど強かった。家計消費(除く帰属家賃)の前期比を追うと、+0.11、+0.29、そして、10-12月期は+0.35と加速している。一方、「実質」は-0.09である。つまり、天候不順による生鮮食品の高騰がなければ、輸出の好調と相まって、2%成長に届くくらいになっていたかもしれない。

 高騰は一時的なものだから、消費の基調は強いと言える。それは、いずれ表面に出てくることになろう。日銀の消費活動指数では、名目と実質の差は更に大きく、10-12月期の前期比は、名目+1.1に対し実質+0.1である。GDP速報の消費は、異様に不調だった家計調査の影響を受けて、低めに出ていると思われ、今後、改訂が重ねられる中で、上方修正される可能性がある。

 また、消費のベースとなる雇用者報酬は、前期比が名目で+0.5、実質で0.0と、これも差がついた。ただし、7-9月期の名目+0.6より、やや低下している。毎月勤労統計からすると、7月の給与総額は高かったのに、12月に伸びがなく、冬のボーナスが振るわなかったようだ。12月の消費は、消費活動指数でも落ちが大きく、生鮮食品の高騰以外では、この影響もあったと考えられる。

 消費は追加的需要とパラレルな性質があることから、実質GDPの「住宅+公共+輸出/2」を見ると、前期比が4-6月期+0.4、7-9月期+1.3に続き、10-12月期も+0.8と順調だったにもかかわらず、実質の消費は、+0.2、+0.3と推移して、10-12月期が逆に-0.1と減ってしまった。経済活動からすると、消費はもっと高くても不思議でなく、こうした乖離も、消費の潜在力を示していよう。

………
 10-12月期GDPは、激しい物価変動の下で消費を予想するという難度の高いものだった。今回、筆者が手掛かりにしたのは、家計消費状況調査である。なぜなら、4-6期、7-9月期のデータがGDP速報に近い値だったからだ。これを使うと、10-12月期までの各期は、+0.11、+0.25、+0.06であり、これに対し、今回のGDP速報の名目は+0.11、+0.29、+0.35であった。この関係もあり、GDP速報は高いと評したわけである。ちなみに、実質化した状況調査の結果は+0.17、+0.35、+0.03で、対するGDP速報の実質は+0.19、+0.33、-0.09だった。

 オタクしか興味はないと思うが、一応、算出方法を記しておくと、状況調査の二人以上世帯の速報値を使い、支出総額から「除く仕送り金及び贈与金」を作り、12か月移動平均をかけ、期差を取るという簡易なものだ。実質化は、消費者物価の季節調整済指数の「除く帰属家賃」で割っただけである。なお、図では、比較のために、家計調査の支出総額から仕送り金と贈与金を除いたものを並べておいた。

 こうして見ると、家計調査の消費レベルの低さが目立つ。しかも、勤労者世帯の差が開いてきている。これでは、家計調査は下ブレするし、物価上昇に弱いわけである。家計調査の改善の方向としては、ちゃんとお金をかけて、簡易項目の調査サンプルを増やすことではないか。また、人手の問題になるとは思うが、とりあえず、状況調査と結合した指数の算出を求めたい。

(図)



………
 景気がテイクオフするには、条件が揃うことが必要である。雇用が引き締まり、輸出が堅調だったこともあって、10-12月期には、大いに期待していた。そこへ、秋の長雨による生鮮食品の高騰である。ツイてなかったが、10月の消費が悪くなかったことで、甘く見ていた点もある。政策的には、公共事業の息切れも拙手となった。需要管理の無計画ぶりがなければ、外需拡大のチャンスをものにできただろう。

 今後の最善のシナリオを描けば、外需拡大を受けて輸出が堅調を保ち、補正予算で復調した公共が住宅の衰えを補い、需要リスクの低減の中で、設備投資が徐々に増し、雇用の引き締まりの下、賃金上昇が加速するというものだろう。消費は、無職世帯の多さを踏まえれば、緩やかな円高の方が有利に働くと思われる。言うまでもないが、財政も、金融も、需要安定の観点が求められる。回復にも財政を退かず、円安を金融政策にしないのは、結構、難しい。


(今日までの日経)
 年金「世代間」の盲点、予算増えず少子化加速・石塚由紀夫。正社員緩和・吉野家。転職者300万人回復、賃金増が初の逆転。共働きと値上げで食費増・エンゲル係数。保育所新設 企業が主導。消えた新規国債0.6兆円。残業上限 月60時間。景気緩やか回復続く、GDP10-12月 年1.0%増。

※石塚さんが書くように、少子化対策はいつもtoo little too late。それは今も同じ。本コラムが、年金を使って乳幼児給付をせよとか、若者の保険料を軽減せよとか、主張しても、常識外れにしか聞こえず、「そこまでやるの」という感じだろう。しかし、時が経てば、「どうして、そうしなかったんだ」となる。昔も、そうだったのでね。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする