落葉松亭日記

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ロシア軍の実態

2022年05月10日 | 世相
5月7日、ウクライナのゼ大統領は、マリウポリは完全に破壊されたと述べた。
マリウポリは「完全に破壊」 ウクライナ大統領
2022年5月7日 10:07 発信地:ロンドン/英国 [ 英国 ヨーロッパ ウクライナ ロシア ロシア・CIS ]
https://www.afpbb.com/articles/-/3403622?pid=24479045

写真:ウクライナ・マリウポリで黒焦げになった集合住宅(2022年4月29日撮影)。(c)Andrey BORODULIN / AFP

【5月7日 AFP】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は6日、南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)は完全に破壊され、包囲されているアゾフスターリ(Azovstal)製鉄所くらいしか残っていないと述べた。

 ゼレンスキー氏は英ロンドンのシンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス、Chatham House)とのビデオ通話で、要衝マリウポリの陥落がウクライナ紛争の行方にどう影響するかとの質問に対し、「マリウポリは陥落しようがない。何も残っていない。すでに壊滅状態で建物もない。完全に破壊されている」と答えた。

 さらに、残っているのは「わずかばかりの芝生と構造物、アゾフスターリ製鉄所かその残骸だ」と付け加えた。
 マリウポリのウクライナ側「最後のとりで」となっているアゾフスターリ製鉄所にはトンネルや地下壕(ごう)があり、ウクライナ部隊の他、民間人約200人がいるとみられている。

 ゼレンスキー氏は、ロシア軍はマリウポリの市民を「拷問して殺害した」とし、ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)のプロパガンダ部隊がそう仕向けるよう憎悪をあおっていると非難した。
 さらに、ナチス・ドイツ(Nazi)の国民啓蒙・宣伝相だったヨーゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)に言及し、「ゲッベルスの手法も、クレムリンと比べれば子どもだましのようなものだ。これこそが、この紛争の最も恐ろしい教訓だ」と語った。(c)AFP

しかし、ウクライナに侵攻したロシア軍も、順調ではないという報道が多い。
5月9日ロシアの対独戦勝記念日に、勝利宣言が出来なかった。
ロシア国民の疑問が深まりつつあるようだ。
「勝利」どころか「戦争」も宣言しなかったプーチン...戦勝記念日に暴かれたロシア軍の実態 2022年05月10日(火)10時57分
木村正人 欧州インサイドReport
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2022/05/post-154.php

写真:対独戦勝記念日のプーチン
対独戦勝記念日のイベントに登場したプーチン(モスクワ、5月9日) 
[ロシア兵の遺体を焼くため移動式火葬場が戦場を駆け巡っている──「プーチンの戦争」の実像と、プーチン演説の真意を専門家たちが解き明かす]

[ロンドン発]「大祖国戦争(第二次大戦)」の記憶は国内ではクレムリン支配を、国外では自らの行動を正当化するロシアのカルト的アイデンティティーとして位置付けられている。ウクライナに侵攻したものの、予想外の大苦戦を強いられるウラジーミル・プーチン露大統領は対独戦勝記念日の9日、何を語ったのか。

ウクライナの首都キーウに大軍を進めればウクライナ国民に大歓声で迎えられると信じて疑わなかったプーチン氏は9日に「勝利宣言」を予定していた。しかしキーウを包囲すらできず東・南部戦線に兵力を集中させたものの、「アゾフ大隊」が地下に籠城する南東部マリウポリの製鉄所アゾフスターリも制圧できないまま、この日を迎えた。

消耗した部隊を補強する徴兵や徴集兵との兵役契約、予備役の招集など大量動員をかけるため「特別軍事作戦を戦争に引き上げる」(ベン・ウォレス英国防相)との見方も出ていた。プーチン氏は赤の広場で行われた大祖国戦争勝利77周年記念軍事パレードで「英雄的な軍隊に栄光あれ! ロシアのために! 勝利のために! 万歳!」と声を張り上げた。

その一方で「わが国の軍隊とドンバス民兵は祖国とその未来のために戦っている。将校と兵士を失ったことは、われわれにとって痛恨の極み、遺族と友人にとって取り返しのつかない損失だ。政府、地方公共団体、企業、公的機関は遺族を支援するため全力を尽くす。死傷した兵士の子供たちには特別な支援が与えられる」と犠牲者に報いることを約束した。
「空挺旅団のパレードがなかった。戦闘機はどこに行ったと国民は疑問に思っている」

「祖国への忠誠は彼ら(大祖国戦争を戦った祖先)の後継者である私たちにとってもロシアの独立のための主要な価値であり、信頼できる基盤だ。大祖国戦争でナチズムを粉砕した人々はあらゆる時代の英雄主義の模範を示してくれた」「アメリカとその手先が支援するネオナチやバンデライト(ウクライナ民族主義者)との衝突は避けられない」

「ロシアは侵略に対して先制攻撃を開始した。時宜を得た唯一の正しい決断だった」とウクライナ侵攻を改めて正当化したプーチン氏の演説をロシア専門家はどう受け止めたのか。「ロシアの第二次大戦の記憶はウクライナ侵攻をどう形成したか」と題した英シンクタンク「ヘンリー・ジャクソン・ソサエティー(HJS)」のオンライン報告会がこの日開かれた。

HJSのアリオナ・ヒルフコ戦略関係マネジャーは「おそらくプーチンは追加動員やウクライナでの次の動きについて大きな発表をすると多くの人が考えていた。キーウが核兵器を保有することを宣言したと言及することでウクライナに改めて核の脅しを加えようとしたのかもしれない」と言う。

しかしヒルフコ氏が注目するのは「空挺旅団がパレードに加わっていなかった」ことだ。「上空に戦闘機が見られなかった。戦闘機はどこに行ったと国民は疑問に思っている。戦艦はどこに行ったのかと。戦争は計画通りには進んでいない、最高のパレードでもなかったと。反体制派はこれが最後のパレードになると言っている」と指摘した。

ウクライナ出身のヒルフコ氏は同国で政治コンサルタントや選挙運動責任者、同国最高議会議員の首席補佐官を務め、2015年には地元ウクライナ西部チェルニヴツィの地方議員に選出されている。「ウクライナが第二次大戦で赤軍に属したり、ナチスに協力したりしたのはさまざまな帝国やより強力な国家の交差点にあり、歴史が交差していたからだ」と言う。

「1941年に招集されたウクライナ兵で45年まで生き延びたのは3%」

「1932〜33年にソ連の独裁者ヨシフ・スターリンによる人工的な大飢饉(ホロドモール)を経験したウクライナにとってソ連もナチスドイツも邪悪で、どちらが良いか選ぶことはできなかった」。こう祖国の歴史を振り返るヒルフコ氏はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がこの日を「ナチズムに対する勝利」と位置づけるのは正しいと強調する。

「なぜなら第二次大戦で800万人のウクライナ人が犠牲になった。50人に1人だ。1941年に招集されたウクライナ兵で45年まで生き延びたのはわずか3%だ。ウクライナが失った人口は死亡、避難、強制退去、強制収容所の犠牲者を含めると1400万人にのぼる。そうした史実は今日のロシアのプロパガンダのどこにも書かれていない」とヒルフコ氏は語る。

米ウイルソンセンター・ケナン研究所のイザベラ・タバロフスキー上級プログラム・アソシエイトは「プーチン氏は典型的なプーチン氏だった。誰もが期待するようなことは口にしなかった。プーチン氏が戦争を宣言し、大量動員するという話があった。それ以前には勝利を宣言するという話もあったが、そのどちらも行わず、期待を見事に裏切った」と分析する。

「注目すべきなのは、西側への罪のなすりつけが非常に顕著になり、ウクライナへの侵攻は(西側との衝突を回避するための)先制攻撃だと対独戦勝記念日に改めて公言したことだ。この戦争が先制攻撃であり、ロシアは敵に取り囲まれているというビジョンを最大化するようナラティブ(物語)を確立しようとしていることが鮮明になった」

「スホイ34のダッシュボードにGPS受信機が貼り付けられていた」

ロシアの戦争プロパガンダに詳しい英歴史家イアン・ガーナー氏は「この日の演説でプーチンはしばらく収まっていたウクライナが核兵器保有を目指しているという話を蒸し返した。プーチンが核戦争を開始する恐れがあるかと言えば、そうではない。純粋にレトリックとして核を再び持ち出しただけだ」と指摘する。

「演説の半分以上が過去ではなく現在の話になっている。彼が強調したのは戦争で死んだ人たちの家族に提供されている、あるいは提供されているとされる支援だった。彼は第二次大戦の退役軍人や軍人、ロシア正教会の聖職者に囲まれていた。国家、世俗的な権力、宗教的な権威と過去、現在、未来の結びつきのすべてが国民に示された」と言う。

この日、ウォレス英国防相は「ロシア兵の遺体を焼くために移動式火葬場が戦場を駆け巡っている。精鋭中の精鋭と言われるVDV第331親衛空挺連隊は一貫した作戦計画もなく、軽航空機動装甲車のみで行動したため、特に重い代償を払わされた。記念碑の壁にある女性が『誰も何も知らないまま、第331連隊は消えていく』と書き込んだ」ことを明かした。

「ベラルーシではロシア軍が侵攻1週間前に車の燃料を売ってしまったとの報告もある。指揮官の失敗による茶番劇でVDVや海兵隊のある部隊は最大で80%の死傷者を出したと伝えられる。墜落したロシア空軍の戦闘爆撃機Su(スホイ)34のダッシュボードにGPS(全地球測位システム)の受信機が貼り付けられていた」
ウォレス氏は無謀なプーチン氏の戦争を白日の下にさらしてみせた。