2017年5月13日(土) 2:00pm みなとみらいホール
ブルックナー 交響曲第8番ハ短調 第1稿 ノヴァーク版 18-15-28-26
児玉宏 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
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AB8
Ⅰ 6-5-4-3
Ⅱ 5-5-5
Ⅲ 5-4-3-5-9-2
Ⅳ 7-9-8-2
普段聴く耳慣れたブルックナーとは半分ぐらい違うのではないか。率直なところ。
初稿とは言え後日ノヴァークがお化粧直ししたものだがらオリジナル初稿とは同じではないと思いますが、そういったものは聴いたことが無いのでとにもかくにも雲をつかむような聴き具合で。
第一印象は骨組みが露骨に出た稿、ブルックナー初期の骨組み露出作品のように聴こえる。初期作品との違いはその骨組みが耐震構造でびくともしないといったあたり。
圧倒的なテンポではないけれどもそれでも90分、第1楽章のコーダは強奏部分があるので長くなる。のをはじめとして全体的に小節数が多いのだろう。反面、演奏としては第3楽章のコーダに見られるように2分程度のコクでさっと、というところもある。
第1楽章から、演奏はあまり揺らさないもの。主題の陳列的な具合で、また、第2主題と次の主題が等速に聴こえるのは倍速なのに振りが同じだからといったところもある。
色々とそういった感じで、几帳面な演奏でわかりやすい。指揮者がそのように聴衆に向けているのかもしれない。
コーダの強奏は今となってみれば、とってつけた感があり違和感ありまくりだが、ブルックナー終始としてはこのように華々しく終えたい気持ちもわかる。
スケルツォのフシが終楽章のコーダのところで出てくる印象が薄いのは、もとのここの楽章の彫りが必ずしも深くないから。トリオとのバランスはいいもので、ここらあたりは出来上がった作品と感じる。演奏にもっと立体感があればさらにいい。
アダージョの骨組みは明確なものでよくわかる。3回目の第1主題には感興的にクライマックスが含まれるのでロングになりスケール感がでますね。頂点調までの転調が後発稿と違うと思うので途中、一瞬、曲を追えなくなったところもあった。
ホルンを主体とした祈りのコーダは短いもの。ササっと。
終楽章はホルンの飾り的フレーズがちょっと安っぽい。コーダは突然の強奏ではなく徐々に力が加わっていき例の下降音のフレーズになるのが印象的。それと何といっても、このあと、トランペットのところがピアニシモで浅い川面のような進行になるところ。ここは新鮮。
この楽章は提示部展開部再現部と同じ幅軸のまま全体に広がったような具合で、いいバランスを保持したままスケールが大きい。
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演奏はエモーショナルなところは無くて、主題の次々出し、陳列のようになるところもある。それは時間軸を取り払うことになり、展覧会の絵見物状態かもしれない。次々主題の音が内在されたままで、進行することによる感興的積分状態にいまひとつなりきらないのは、初稿という作品への気遣い意識があるためではないのかと邪推する。消えていく前主題の印象。
オーケストラサウンドはやや硬めで輝かしいもの。明確な音で大作の縁取りをしていく。クリアなサウンドでビッグな作品のアウトラインを示していく。
コンマスと同じように皆さん猛弾きしてくれたならもっと立体感のある演奏になると思う。ブラスセクションは強烈だが抑える必要な無くて弦の猛弾きこそが求められる。
なにはともあれ、エポックメイキングなイヴェントで最後まで楽しみました。ありがとうございました。
おわり