河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1182- ジュリアン・ラクリン N響 ミュン・フン・チュン 2011.2.5

2011-02-07 23:29:00 | インポート


2010-2011シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから。
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2011年2月5日(土)6:00pm
NHKホール
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ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
 ヴァイオリン、ジュリアン・ラクリン
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ベルリオーズ 幻想交響曲
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ミュン・フン・チュン指揮
NHK交響楽団
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プログラム前半、今日もまた、人間とも思えないようなフライングブラボー屋が性懲りもなく、全てを無視してぶち壊しに来たとしか思えない発狂絶叫を発したわけだが、なぜだか知らぬが最初の一叫びだけでやめってしまった。周りの連中にたしなめられたのか、それともどこぞからいただいた盛り上げ費の分だけ絶叫したからお仕事終わりで帰ってしまったのか、真相はいつも闇の中で、後味の悪さだけが消えずにある、という事実だけがむなしく漂うだけだ。尾行でもして真相追及できたらいいのだろうが、どの日に、どこの座席に座っているのやら、わからないし、現実には難しいところもあるよ。
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演奏の方は、あの絶叫の音量が感動の深度と比例するとするならば、このブラボー屋は聴く耳をあまりもっていなかったようだ。
ラクリンは昔の若い頃の切れ味鋭い峻烈な印象とは様変わりで、柔らかくなったわけではないものの味わいはそれなりに深まったような気はするが、それよりも線の細さの方が勝っていたような感じだ。
演奏は伴奏の方にこそ味わいが深く、チュンのコントロールが素晴らしい。徹頭徹尾弱音系に抑え、特に第1,2楽章ではリズムという鼓動をまるで意識して排除したような具合で素朴でシンプルな解釈。でもプレイヤーにとっては非常に神経を集中させる、強いる解釈であると思う。チュンはそのような指揮者であったのかというのは久しぶりにみて驚いたことでもあった。
この協奏曲はオーケストラ・プレイヤーの音が裸で出てくるところが多く、それだけで集中度を高めて奏さなければいけないが、この日のN響のトップの響きはよかったと思います。
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ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、奇妙にも音の美しさを主にねらったものであると思います。気持ちの動きを表すような中音域から低音域でヴァイオリン・ソロが奏される箇所はあまりありません。ほとんど高音域での配列になっており、それもあって動きのないソロ楽器の響きの美しさを強調した曲と言えると思います。
ラクリンがそのようなものにジャストマッチだったのかどうかということもありますけれど、昔のように切れ味鋭くやればできると思うのだが、今、力がどちらの方向に向いて動いているのか、昔のような方向ではない方に向いてきていると思った方がよさそうだ。
ベートーヴェンの協奏曲は素朴な表現が多いけれど、結果的には大きな縁取りの構造を出現させており、そのなかで高音域中心に推移し続けるソロは主張の種類も多くなくむしろ美しさがラクリンの手により、少し小さなスケールになってしまったような気がした。
第1楽章:25分
第2楽章:12分
第3楽章:9分
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後半の幻想。一番感心したのは、ようやく第4楽章になって鳴りはじめるトロンボーン、チューバの爆音の中、隙間を這うようにでてくるウィンドの素晴らしいアンサンブル。細かいところまで決してはずさない、このような姿勢が音楽の演奏の質を高めているのであり、日本ではN響以外では簡単ではないところなんだね。
チュンはコントラバスを10艇並べた。そのわりには全般にコンパクトになっているというか、この曲が十八番の一つだと思わせるような慣れたものが、コンパクトさを感じさせたのだろうか。
チュンの両腕が大きく弧を描くときオーケストラはきっちりそろえる。まさにオペラ振りそのもので、こんがらかったら合わせるポイントにもっていくスタイル。この日のオーケストラは変になるような箇所は全くないので、このような大振りの箇所はむしろ指揮者の解釈が表面化するところととらえてもいいと思う。振りなれている曲なのでこのように要所を締めるようなやり方で済んでいるというところもある。もちろん、オーケストラの技術的経験的ベースがなければ話が始まりませんけど。
全体としてはウェットな感じ。埃っぽさを感じさせないむしろ端正で響きを敷きつめた折り目のついた演奏。
第1,2楽章。第3楽章。第4,5楽章。このまとまりでアタッカとチューニングをはさむ。まさに構造通りのリセット。演奏に新鮮味は今一つだが手慣れた解釈で安心してベルリオーズの爆発を楽しめた。
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プログラムの説明を補てんしますと、チュンのメトロポリタン・オペラのデビューは1986年3月で、なにを振ったかというと、
シモン・ボッカネグラ
です。現場で観ましたので間違いありません。ピアノからオペラへ。バレンボイムなんかと似てなくもないような。
メトのお隣のニューヨーク・フィル・デビューは、シモンに先立つこと2年。1984年です。ドヴォルザークの3番とか振ってました。
四半世紀前から一流な棒振りだったわけですけれど、そろそろテーマを定めて欲しいような気もします。
おわり

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