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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

妄想人生

2017-12-23 18:09:48 | 読んだ本
島田雅彦 2005年 毎日新聞社
これ、背表紙の著者名みて手にとって、チラッと中みたら、小説ぢゃなくて、エッセイ集だった。
へー、エッセイも書くんだー、と興味をもったので買ってみた、11月の古本まつりでのことである。
なんか私の勝手なイメージなんだけど、島田雅彦ってエッセイとかあまり見ないような気がしたので、つい。
しかも帯に「夢見るオジサマになるために」なんてあって、そうか島田雅彦もオジサマなのか、と感慨があった。
私が若いころにリアルタイムで接した日本文学のなかでいちばん若手だったような記憶があるからねー。
初出は2003年から2004年にかけてのサンデー毎日の『気宇壮大のススメ』という連載だそうだが。
前の章とそのつぎが微妙につながってる感じなので、つぎもつぎもって小説読むときみたいにスルスルと読んでいけた。
どうでもいいけど、こないだ読んだ『カタストロフ・マニア』でサバイバルするさまが描かれてて、それがとてもリアルな感じして。
私にとってはイメージ意外なんだけど、著者はわかいころ多摩丘陵の自然のなかで遊ぶことが多かったって話が本書のなかにあったんで、なんかそのへん山や森のなかに詳しいって理由がわかったような気がした。
>普通、人は自分が生きている時代のことしか考えないが、じつは太古から受け継がれてきた経験を踏まえて暮らしている。二万年前の人と現代人は能力的に大差はない。いわば、私たち個々の人間はいまだに原始人なのである。(p.53「森の生活」)
なんてのは、最近読んでる中沢新一のものにつながるようなとこあって、ちょっと刺激的に興味深い。
日本の社会について、ときどき鋭くつっこんでるとこがあっておもしろい。
>農業史の専門家筑波常治氏によれば、日本人は一見農耕民族に見えるけれども、精神構造の深い部分では、農業離脱志向民族だったという。江戸時代も戦国時代もその前も、いつの時代でも、日本では農業をせずに済む境遇になることを立身出世と見做した。(p.56「米の不思議」)
とかね、そうだよな、やらなくていいなら農業ヤメたいって思いながらやってるのかもしんないなって、妙に同意してしまう。
>家出とは移動の自由の行使であり、将来の選択肢を増やすきっかけになる。家出少女が東京で沖縄の人と出会い、那覇に住み着いたり、イラン人と結婚し、イスラム教に改宗したり、パパを見つけて、自分の店を出してもらったりもできる場所のことを大都市と呼ぶ。(p.94「家出少女今昔」)
なんてとこもいい。
>目指すべきは毒舌に寛容な社会である。二枚舌よりは毒舌の方がまだましだ。前者は嘘をつくが、後者は本音をいうから。(p.104「サムライ・スピリッツ」)
とか、ときどき政治的なことにも触れてる、どうも親米派が嫌いらしい。
それはともかく、作家としてこれだけ売れてるのに、大学で文学を教える仕事もやってるそうで、自ら
>二十年前までの作家は大学の先生などよりはるかに偉かった。(略)三十年前は大学教員を辞めて、文筆に専念する人が続出したが、今は逆で、私を含め、大学に職を求める物書きが続出している。(p.174「罪と罰NOW」)
なんて言い方で時代が変わったとしてるけど、なんでも学生たちには全然読まれてないらしいと自嘲気味に語ってる、そうなのかなあ。

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