じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

遠藤周作「海と毒薬」より

2024-03-16 22:04:12 | Weblog

★ 小説には時代を超えて読み継がれる作品がある。遠藤周作の「海と毒薬」もその1つであろう。

★ 遠藤周作さんの「海と毒薬」(角川文庫)から第1章を読んだ。時代は戦時中。街では空襲で人が死に、病院では肺を病んで死を待つ人が大勢いた。命が軽視されていた時代。

★ 物語は戦後、郊外に越してきた男性が、ある無口な医師と出会うことから始まる。この医師、腕は確かなのだが不愛想。そして男性は偶然、医師の過去を知る。

★ そのあと医師の物語が始まる。医師は九州の大学病院で外科に所属していた。彼はそこで人体実験に加担してしまい、戦後裁かれる。

★ 戦場で敵を殺せば英雄と呼ばれる時代。捕虜を人体実験に利用することに医者の倫理観は対抗できなかったのか。

★ 手術の生々しさは泉鏡花の「外科室」。外科部長の選挙をめぐる派閥争いは山崎豊子さんの「白い巨塔」を思い起こした。

★ 「海と毒薬」は1957年発表。大江健三郎さんの「飼育」の発表が1958年。この時代の純文学は面白い。面白作品は普遍性がある。

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