日々の覚書

MFCオーナーのブログ

フリーとバドカン

2006年10月21日 15時21分30秒 | 音楽ネタ

Fireandwater Desolationangels

今月のレコードコレクターズの特集はフリーである。1969年のデビューから1973年の解散まで、実働4年ちょっとという短命なバンドだったが、この間に6枚のスタジオアルバムと1枚のライブ盤を発表するという精力的な活動を行い、ブルースに根ざした独特のサウンドとライブパフォーマンスは高い評価を受け、メンバーのポール・コゾフが解散後の1976年に若くして亡くなる、という悲劇もあり、早くから伝説のバンドとなった。もちろん、現在でも人気は高く、つい最近も1970年前後の音源をまとめた『ライブ・アット・BBC』やヒストリーDVD『フォーエバー』が発売されたばかり。今回の特集は、そこいらにタイミングを合わせての事だろう。

前述したように、フリーの解散は1973年で、僕が洋楽(ロック)に目覚めた頃(1976年あたり)には、既に存在していなかった。ただ、FMではちょいちょいかかっていたし、雑誌に取り上げられる事も多く、元メンバーのポール・ロジャースとサイモン・カークがバッド・カンパニーで活動していたこともあり、フリーの名前はその頃から知っていた。ただ、どうもフリーの音楽は好きになれなかった。彼らの曲はゆったりしたテンポのものが多く、重いとか暗いとかいう印象があったし、隙間の多い音作りにも馴染めなかった。そう、当時僕はフリーよりもバッド・カンパニーが好きなガキだったのである。

フリーとは対照的に、バッド・カンパニーはFMで聴いてすぐ気に入った。その時点での最新作は『ラン・ウィズ・ザ・パック』で、タイトル曲や「ハニー・チャイルド」といった曲がよくかかっていた。キャッチーで分かりやすく、またポール・ロジャースのボーカルも素晴らしかった。その後『バーニング・スカイ』が発表され、これもよくFMで聴いてた。しかし、バッド・カンパニーのアルバムで最も思い出深いのは、『デソレーション・エンジェル』だろう。このアルバムが出た時、僕は高校2年で、友人にLPを貸して貰ってカセットに録音して毎日のように聴いていた。ちなみに、この時同時に借りたのがカーズの『キャンディ・オー』で、90分カセットのA面がバッド・カンパニー、B面がカーズ、となっていた(笑) 高二の夏は、この2枚に明け暮れたと言ってもいい。

よく言われるように、バッド・カンパニーはデビュー時から、アメリカでの成功を狙っており、アルバムを重ねるごとにアメリカナイズされ、それが頂点に達したのが『デソレーション・エンジェル』という事になっており、フリーから引き続いてのファンには評判が良くないそうだ。確かに、ブルース色はかなり後退してはいるが、サザンロックっぽい雰囲気の曲もあったりする、アーシーな感触のアルバムで、彼らが目指した音楽の到達点として素晴らしい出来である、僕は思う。こういうちょっと南部っぽい感じのロックを彼らはやりたかったんじゃないか、と思うのだ。そういった志向はデビューアルバムで既に感じ取れるし、フリーが解散した時点で、ポール・ロジャースが違う物を目指したのは明白だ。彼の節回しやノリは、ストイックなブルースより、南部系のややいなたい感じの音楽の方が似合いそうな気もするし。シンドラを多用するなど、(当時としては)新しい感覚も取り入れて、バッド・カンパニーは『デソレーション・エンジェル』で自分たちの音楽を完成させたのだ。

残念ながら、『デソレーション・エンジェル』の大ヒット以降彼らは失速し、80年代に入って解散→メンバーを変えての再編、という道を歩んでいく。再編後のバッド・カンパニーは全く聴いてないけど、皮肉な事にフリーをちゃんと聴き始めたのは、この頃からである。僕は大学で軽音楽サークルに所属してバンド活動をしていたのだが、その頃のバンド仲間にフリーやらクラプトンやら、いわゆるホワイトブルース系バンド好きが多く、そいつらの影響で僕もコピーを兼ねてブルース系を聴くようになった。フリーもそういった経緯で聴き出したのだが、10代の頃は馴染めなかったのに、結構気に入ってしまったのだ。彼らの音楽を重いとか暗いとか感じていたのに、そこがいいのだ、なんて思うようになってしまったのだね(笑) 本当に不思議なものだ。最初にハマったのは『フリー・ライブ!』で、個性的な音を出すメンバーたちの圧倒的な存在感に、完全にノックアウトされた。特に、サイモン・カークのドラムが素晴らしく、バッド・カンパニーとはまた違うタメのあるプレイにすっかり影響されて、ひたすらマネしようと試みたりしていた。スタジオアルバムでは、『ファイア・アンド・ウォーター』が一番好きかな。こうして聴いてみて、フリーは重い・暗いという側面もあるが、幅広い音楽性を持ったバンドであった事がよく分かった。ブルースの精神を体現しつつ、違う要素も取り込んで個性的な音楽を作っていたのが、フリーというバンドだったのだ。こんな事を、当時10代だった若者がやっていたなんて、ほんと信じられない。彼らが凄いのか、はたまたそういう時代だったのか。

今回のレコードコレクターズの特集には、フリーの結成からデビューに至るまでの記述もあり、その背後にはアレクシス・コーナー、クリス・ブラックウェル、マイク・ヴァーノンといった、当時の音楽界の大物たちのバックアップがあった事も書かれている。フリーは才能溢れるバンドだったけど、ポッと出てきた訳ではないのだ。いくら才能があっても、それを認めバックアップしてくれる存在がなければ、ショービジネスの世界で成功する事は難しい。これは今も昔も変わらないようだ。

という訳で、レコードコレクターズを読んでて、色々な事を思い出してしまったので、書いてみた(笑) もちろん、今ではフリーもバッド・カンパニーも好きである。

コメント (5)
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