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英国風ソウルをフランス人がボサノバと混交

2016-12-07 20:25:20 | 音盤ノート
Tom & Joyce "Tom & Joyce" Yellow Productions, 2002.

  ボサノバ要素のあるアシッドジャズ。アシッドジャズというのはもう死語かもしれないが、1980年代後半から90年代にかけての英国産のクラブ向けR&Bを指す。Jamiroquaiなんかが代表的であるが、ジャズ要素はあるがジャズではなく、あくまでソウルである。この男女デュオはフランス人であるが、なぜかポルトガル語で歌っている。

  収録中に普通のボサノバ曲もあるが、バチータ奏法のギターとサンバ風のリズム隊を従えたファンキーな曲が特に目立つ。デビュー曲'Vai Minha Tristeza'はそのような曲の代表である(なお曲のタイトルは'Chega de Saudade'の歌詞の冒頭の一節をタイトルにしたもの)。アルバム全体としては「爽やか」と「暑苦しい」の微妙なはざまにある音であり、このアルバムはぎりぎり「爽やか」の方だろう。ただし、ボーカルにおいても編曲においても器用すぎていろいろ出来てしまうのが問題である。シンプルなボサノバ好きの人間としては「トゥーマッチ」と感じるような瞬間が多々ある。まあ、それでも彼らのアルバムの中ではもっとも良いと言える。

  なおJoyce HozeとThomas Naimのデュオなのでユニット名に嘘偽りはないのだが、デビュー当時誰もがその名を見て、Joyce Morenoと当時すでに亡くなっていたAntonio Carlos Jobimによる秘蔵音源だと勘違いした。これを気にしたのか、次作では Tom & Joyce Hozeに改名し、次々作ではTom & Joyに改名、その後は忘れられて音沙汰を聞かなくなってしまった。名前なんか気にせずTom & Joyceで押し通すべきだっただろう。Bill Evansと名乗ってSaxを吹いている剛の者もいるのだから。
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