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夭折の歌姫の代表作。とにかく明るく楽しい

2016-06-29 11:51:35 | 音盤ノート
Elis Regina "Elis Regina in London" Philips, 1969.

  MPB。エリス・レジーナは1960年代前半から1980年代初頭にかけて活動したブラジルの女性歌手で、1982年に薬物中毒のため36歳で亡くなっている。本作のタイトルはライブ盤のようだが、全曲スタジオで録音されている。ロンドンが強調されているのは、彼女の初の海外進出作品というニュアンスのようだ。ブラジルを出てわざわざ向かった先が米国ではなくヨーロッパなのは、レコード会社のPhilipsがオランダを本拠としているからという単純な理由だろうか。

  収録曲の作曲者はMenescal/Boscoliコンビ3曲、Jobim2曲、Edu Lobo2曲、このほかJorge Ben、Robert Carlos、Michel Legrand、バンドメンバーのAntonio Adolfoの曲をそれぞれ1曲ずつで、加えてジャズスタンダードの'A Time for Love'となっている。エリス・レジーナというと、パーカシッブでテンポの速い曲を朗らかに歌い上げるというイメージがあるが、本作はその典型である。絶叫気味のボーカルがオーバーダブされた'Zazueira'を筆頭に、'Corrida De Jangada', 'Se Você Pensa', 'Upa Neguinho'などのノリの良いアレンジの曲が目立つ。現地オーケストラも加わり、音はかなり厚くてパワフルである。

  完成度の高い作品だが、若さを前面に出すこの路線での以後の諸作はマンネリ気味である。ところが1972年の"Elis"以降バラードをじっくり聴かせるアダルト路線に変更、本作のテンションを期待すると肩透かしを食らう。だが、その時期に試みられた電子鍵盤を採り入れたサウンドをきっちり完成させてきた最晩年の諸作もなかなかのクオリティである。夭折によって伝説化したというのは知られているが、イメチェンを上手くやって時代を生延びたというのも重要な点だろう。
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