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繊細かつ思索的かつ夢幻かつ耽美なタペストリ

2011-07-19 06:17:32 | 音盤ノート
John Abercrombie Quartet "Arcade" ECM, 1979.

  ジャズ。アバクロンビー=バイラーク四重奏団による、"Abercrombie Quartet"(参考)、"M"(参考)と続く三部作の最初の録音である。他の二作はLPの発売以来廃盤が続いているが、このアルバムは2001年に日本だけでCD化された。しかし、そのCDも再プレスさないまま現在に至り、入手困難であるのは他の二作と同じである。

  収録曲はアバクロ作二曲とバイラーク作三曲という構成。一曲目のタイトル曲でだけ激しめのインタープレイが聴けるものの、後の二作と比べると楽曲重視のアルバムといえるだろう。アバクロ、バイラークそれぞれのアドリブ部分もメロディアスで美しく、内に熱を込めながらも静かに聴かせる。特に、CDの4曲目、LPだとB面1曲目にあたる"Neptune"は特筆すべきクオリティである。シンバルを添えるだけでリズムを付けないこの曲では、誘い込むようなピアノのアルペジオに始まり、ベースのアルコ弾きによる流麗なメロディに導かれて、ソロにおいてアバクロがこれでもかというくらい叙情的なプレイを聴かせる。次の最後の曲となる"Alchemy"も夢中を彷徨うような美しい楽曲で、これら最後の二曲だけでも何度も聴き返したくなる出来である。

  全体として後の二作と比べるとスリル感は劣るが、楽曲が手堅くまとまっており聴き易いと言えるだろう。重ねて、このカルテットの三作全て廃盤状態であるのはもったいないと訴えたい。
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