29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

冒頭の1トラック目だけとんでもないクオリティ

2011-09-23 09:36:53 | 音盤ノート
Steve Reich "WTC 9/11 / Mallet Quartet / Dance Patterns" Nonesuch, 2011.

  現代音楽。3曲7トラックで、収録時間は36分。これでは短いとレコード会社は考えたのか、"Mallet Quartet"の演奏風景をDVDにしては付録にしている。いつものライヒ節で新機軸は無く、曲の出来にはバラつきがある。でもハイライトになる曲は素晴らしく、聴く価値はある。

  "WTC 9/11"(2010)は、タイトル通り9.11をテーマとしたもので、"Three Tales"(2002)以来一時中断していた、音楽によるドキュメンタリーの久々の試み。弦楽四重奏団×2とサンプリング・ヴォイスという編成、三楽章構成、演奏はKronos Quartet。1988年の名曲"Different Trains"(1988)とまったく同じである。

  冒頭の1トラック目に、いきなりこのアルバムのハイライトがくる。まるでシンセサイザー音のようなストリングスによるパルス音が続く中、World Trade Centerに突入するジェット機について報告する航空管制官やNY消防署の緊迫した声が響き、ビルが崩壊する音で終わる。この第一楽章の緊張感と重さは尋常ではなく、有無を言わせぬ力がある。無線を通した不明瞭かつブツ切れの声が、やたら不安を呼び起こす。ロックファンにはMinistry meets This Heatと解説したい。ただ、この事件を後から振り返る形の第二楽章、ユダヤ教による鎮魂の三楽章は、ともに穏やかになってしまう。この点ではトータルな出来は十分とは言えないかもしれない。

  "Mallet Quartet"(2009)は、マリンバ2台、ヴィブラフォン2台による三楽章構成の曲。So Purcussionなるグループによる演奏で、DVDに映っているのも彼らである。"Dance Patterns"(2002)はシロフォン2台、ヴィブラフォン2台、ピアノ2台による編成で6分ほどの短い曲。演奏はライヒ組のメンバーで、この曲だけ2004年の録音で蔵出しトラック。二曲とも相変わらずのライヒらしい響きを聴かせる。

  とにかく1トラック目である。あの日の緊迫を音にした見事な作品である。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« テレビを中心とした視野の広... | トップ | 大学は「補習の府」になるべ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音盤ノート」カテゴリの最新記事