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打楽器が無いことでよくわかるその重要性

2012-02-15 11:47:59 | 音盤ノート
Kenny Wheeler "Long Time Ago" ECM, 1999.

  ジャズ。今のところウィーラーの最後のECM録音で、その後はイタリアのレーベルCAMから多くアルバムを出している。彼は"Angel Song"(ECM, 1997)の頃から、打楽器無しのさまざまな編成でアルバムを録音しているが、この作品もその系統。打楽器無しの英国式ブラスバンド風ジャズとでも表現すべき内容になっている。

  編成は、ウィーラーがフリューゲルホーンを吹くほか、ギターとピアノ、トランペット4人、トロンボーン2人、バストロンボーン2人というもの。コントラバスほかリズムを刻む楽器がまったく無い。その演奏は、この管楽器編成から想像されるようなパワフルでノリの良いものとまったく正反対である。曲は流麗かつ端正で、響きは柔らかく美しい。打楽器の無いこの音世界においては、時間感覚が曖昧になり、聴き手は融解した時間の中に埋没する。冒頭の‘A Long Time Ago Suite’は32分弱の長尺曲であるものの、アレンジもソロも良くてダレずに聴ける。

  しかしながら、その後もゆっくりとした似たような演奏が続き、アルバム全体が一本調子に聴こえ、退屈してくるのも確かである。この印象は打楽器があれば変わったかもしれない。曲に規律をもたらし、かつアクセントを付けるのに、いかに打楽器が重要であるかを再認識させられる作品である。
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