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学生相手にYMOを聴かせてみたら…

2014-12-05 11:27:48 | 音盤ノート
Yellow Magic Orchestra ‎"BGM" Alfa, 1981.

  エレポップ。本人たちはテクノポップと言い、一方で英米ではsynth popと表記するようだ。本作はYMOの、もっとも音楽的に完成度の高い中期の二枚うちの一つである。特に打楽器系の音が太くなってリズムパターンが複雑になり、分厚くて繊細な、どこか重たくて神経質なサウンドを聴かせる。これ以前の、スタスタと流れるあまり芸の無いリズムの上に薄っぺらいシンセ音で東洋風メロディーを聴かせるというスタイル(それはそれで面白いのだけれども)は一掃されている。

  先日、大学でオムニバス講義の一コマとして簡単な洋楽史をレクチャーする機会があったのだが、その際このアルバムからもっともポップな曲'Cue'を紹介した。そうしたら一部の学生が、自分が誕生する以前のはるか昔にこんなに格好良い日本人ミュージシャンがいて、海外でそれなりに活躍したのを知ってひどく感激しましたとコメントしてきた。講義では1980年代エレポップ代表として「みんな知ってるだろうけど外せないから一応言及しておきます」という意図で紹介したので、これには僕の方が面喰ってしまった。知らんのか。さすがにホテルニュー越谷ネタは越谷校舎の学生でもわからなくてよいと思うが、YMOは日本人のスタンダードであって感動するようなものではないだろう。

  とはいえ、こういう過去の大衆文化は、学校教育に取り入れられていないともはや接触することが難しいものになっているのかもしれない。正確には、探し出して見つけるのは簡単なのだけれど、現在のメディア環境から自然に入ってくるものではなくなり、強い意志のもとで選び出すというものになっている感がある。結果として学生の選択の幅は狭くなっている。大衆文化という領域は「子どもの主体性に任せる」という方針が陥りやすい弊を露骨に表している気がする。今回は"BGM"からという天邪鬼な選択をしてまったが、初めて聴かせるならばやっぱり初期の曲'Behind The Mask'か'Rydeen'だったかな。
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