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流浪のベーシストによる孤独かつ虚無的な四重奏

2012-04-27 11:41:20 | 音盤ノート
Gary Peacock "Voices" CBS/Sony, 1971.

  ジャズ。ピーコックが日本に滞在していた頃の録音で、菊地雅章・富樫雅彦・村上寛がサイドメンである。ベースとピアノに打楽器二台という編成だが、打楽器隊は控え目で基本ピアノトリオである。「ところどころ激しくなるけれども熱くはならないクールな新主流派ジャズ」というのが適切な表現となるだろう。

  全曲ピーコックのオリジナルで、直前までやっていたはずのフリージャズの面影の少ない、割とまとまった曲ばかりである。最初の‘Ishi’は、ベースによる印象的なフレーズから始まるドラマチックな作品。次の‘Bonsho’は重いベースラインが特徴的なスローバラード。‘Hollows’はエレクトリックピアノを配したテンポの速い4ビート曲。続く"Voices from the Past"は後のリーダー作"Voices from the Past: Paradigm"(ECM, 1981)でも再演されている曲で、黄昏たメロディを持ったスローな曲。‘Requiem’は菊地雅章によるソロの旋律が美しいバラード。最後の‘Ae. Ay.’も高速の4ビート曲でエレピによる演奏で、この曲だけフリー的混沌を見せる。

  ベース中心の重量感のある演奏であり、サイドメンの音数も少なめ。暗くて重たく、虚空に対して音を出しているかのような寒々しさがある。四人による演奏とはいえ、ピーコックのモノローグにしか聴こえないくらい強烈にカラーが統一されている。
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