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楽曲重視の演奏で、スタジオ仙人への道の第一歩となる

2014-03-03 18:28:34 | 音盤ノート
Miroslav Vitous "Journey's End " ECM, 1983.

  ジャズ。ヴィトス・カルテットの三作目で最後の録音。前作(参考)・前々作(参考)からピアノがJohn Taylorに代わっている。ヴィトス自身もアルコ弾きを止めてしまい、ピチカートのみでサポート重視の演奏をしている。

  全体としては、前二作にあった互いを丁々発止してソロぶつけ合うような緊張感は無くなり、楽曲のまとまりを重視した演奏である。この点で面白みは減ったのだが、それ以上に曲のクオリティは向上している。特に三曲目の"Carry On, No. 1"は、クレジットを見ると四人のフリーインプロかと勘違いするが、よく編曲された名曲である。小さな音で跳ねるクリステンセンのドラム、明朗快活なサーマンのソプラノサックス、テイラーのミニマル音楽的なピアノ、細かめの音でサポートに徹するヴィトスのベース、それぞれの演奏が曲全体に貢献している。その他、スローからミディアムなテンポの爽快で叙情的な曲が多い。

  三作の中ではもっとも聴きやすい作品である。その後ヴィトスは、奏者のエゴをぶつけ合うような音楽から完全に離れて、コントロールされた環境下での「曲の部分としてのソロ」を目指すのだが、その最初の作品と言えるかもしれない。スタジオ仙人への最初のステップだったと言えよう。
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