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デザインにおいても機能においても優れた工業製品のようなジャズ

2012-10-17 09:51:50 | 音盤ノート
Paul Desmond "Summertime" CTI, 1968.

  ジャズ。イージーリスニング系またはラウンジ系のソフィスティケートされたジャズで、Don Sebeskyによるビッグバンド編成の流麗なオーケストラの上を、デズモンドの穏やかなアルトサックスがのるというもの。その心地良さは、羽毛で優しく肌をなでられているかのよう。ビートルズ作の‘Ob-La-Di, Ob-La-Da’だけは小学校の運動会で使われそうな能天気なアレンジで辟易だが、全体としては良くコントロールされた演奏で、完成度は高い。

  同時に、このアルバムを聴いてみて、デズモンドの評価が低い理由もわかる。大半のリスナーは、ジャズ初心者の時期にデイブ・ブルーベックによる"Take Five"で彼を知るが、その後は彼を素通りしてもっと「濃い」黒人ミュージシャンに関心を移すというのが王道パターンだろう。演奏は巧くて暖かみもあるのだが、聴き手の魂を掴みにかかってくるようなところがない。破綻の無い表現に終始していて、内面の振幅を見せない。こうした点が彼の信奉者の数を少なくさせているように思える。

  とはいえ、BGMとしての機能性は高い。この場合、スタイリッシュにまとまった演奏で、かつ聴き手の琴線に触れる部分が無いことは、長所である。こういう音楽もあるということだろう。ちなみに、僕が本アルバムを手にした理由は、静岡の中古盤店で100円のLPがたたき売られていたからである。そうでもなければ、関心を持たなかった。
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