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ミニマル・ミュージックを採り入れた構築度の高いジャズ

2012-07-21 08:42:14 | 音盤ノート
Pat Metheny Group "The Way Up" Nonesuch, 2005.

  フュージョン。メセニーにとってはワーナーから新興レーベル、ノンサッチへの移籍第一弾となる。メンバーは、メセニーとメイズ、Steve Rodby(b), Antonio Sanchez(dr), Cuong Vu(Tp,Vo,Per,Gt), Gregoire Maret(Harm,Vo,Per)。序章--第一楽章--第二楽章--第三楽章の4トラックに分かれているが、全体を通して一曲68分という内容である。

  序章でスティーブ・ライヒ風の音符の細いシーケンスをアンサンブルで聴かせる。こうしたユニゾン部分が各楽章の冒頭と最後に置かれており、それぞれかなり練り込まれた複雑なものとなっている。一方、アドリブ部分はジャズ的になったり、いつものPMG風になったり、直前のソロとリズムを変えて展開されたりと、多彩である。ユニゾン部分の印象が強いこともあり、バッキングのあまり厚くないアドリブ部分はやや冗長に感じられる(第一楽章の中盤など)。けれども、ユニゾン部分と連続性のある展開で繰り広げられるアドリブはスリリングで面白い(第二楽章前半)。終盤に向かうにつれて、メセニー特有の乾いた哀愁感がにじみ出てきてどんどん良くなってくる。

  個々の部分を切り取って聴くとキャッチーでそれなりの緊張感もあり楽しめる。一方で、全体を通して聴くとへヴィネスの方が感じられたりもする。そのため聴きやすいとは言えない。とはいえ、沈滞気味だった"We Live Here"(Geffen, 1995)以降のPMGの諸作の中ではもっともクオリティが高い。今のところ、このグループの最後を飾る大作となっている。
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