29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

トリオ演奏だと軽く、カルテット演奏だと重く感じられる

2014-10-13 21:06:57 | 音盤ノート
Marcin Wasilewski Trio with Joakim Milder "Spark of Life" ECM, 2014.

  ジャズ。Wasilewski Trio名義の新作としては3年振り(参考)だが、今年はJacob Young作の客演(参考)としてすでにCDを出していた。本作にはいつものトリオにテナーサックスとしてJoakim Milderなるスウェーデン人奏者が加わっている。ECMには「ピアノトリオで数枚出したら編成に管楽器を加える」という規則でもあるのか。Tord GustavsenやJulia Hülsmannがこのパターンである。

  ただしサックスが参加しているのは全11曲中5曲だけ。予想される通りJan Garbarek系の、ロングトーンでトリオ演奏に味付けする程度の添え方で、激しいソロを期待するようなものではない。とはいえサックスの導入によって、このトリオに無かったヘヴィネスを付け加えることができており、奥行が増したように思う。テンポの速い曲におけるヴァシレフスキのソロはやや問題で、予想の範囲内というか、いまひとつスリリングに展開してくれない。これは前作でも薄々感じていたことだ。しかしながら、スローな曲におけるソロのリリカルさは相変わらずで、粉雪が舞うような弱いタッチは実に素晴らしい。

  オリジナル曲ほかKomeda, Sting, Hancockらの曲を採りあげているが、今回は自作曲の方が良いと思う。映画『ローズマリーの赤ちゃん』からの'Sleep Safe and Warm’はなかなかで、これはカルテット演奏。トリオによる'Message in a Bottle’はサビメロを再現しない編曲でちょっと懲り過ぎ。原曲がファンクである'Actual Proof'は、ピアノトリオでよく頑張ったという水準の演奏ではあるが、やはり原曲のほうが面白い。一方で自作の最初と最後の曲は琴線に触れる演奏で、とても叙情的である。トリオ演奏だと軽く、カルテット演奏だと重く感じられるのだが、後者に比べて前者の演奏にやや出来不出来が感じられる。とはいえ、全体的には優れたヨーロッパジャズであると評価できよう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 字数制限のある文芸時評限定... | トップ | グリッチ音が背後で聴こえる... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音盤ノート」カテゴリの最新記事