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日本の伝統的な絵画図法は現代日本人の嗜好にも影響しているという

2013-11-18 10:33:44 | 読書ノート
増田貴彦『ボスだけを見る欧米人みんなの顔まで見る日本人』講談社プラスアルファ新書, 講談社, 2010.

  文化心理学のかなり平易な入門書。東洋人と西洋人の間にある認知や思考パターンの違いを記したもので、部分的にはニスベット著(参考)とトピックが重なる。著者はカナダ在住の心理学者であり、最後の章で多文化主義のメリットを強調している。

  芸術と情報量の違いについて比較した箇所は面白い。

  西洋と東洋の伝統絵画の違いとして遠近法と鳥瞰図が挙げられるのだが、著者はこの違いは現代にまで影響していると述べる。遠近法に対して、鳥瞰図は描かれる内容が多く、空の部分が狭くなるために絵の中の地平線の位置が高くなる。はたして、それぞれの文化圏の学生にわずか五分で風景画を描かせたところ、東洋文化圏の学生の描く水平線の位置は西洋圏の学生のそれに比べて高く、また多くの事柄を描きこんでいたことがわかった。こうした違いが、遠近法的なシューティングゲームを好むか、鳥瞰的なロールプレイングゲームを好むかの違いを生み出していると指摘している。

  また、東洋文化は厳密なルールに基づいたカテゴリ分けが得意でないので、表現の際にあれもこれもとトピックを挙げて聴き手の判断に委ねようとしてしまい、結果として情報過多となるという。これについて東西の主要企業・大学・官公庁のWebページの最初のページを比較したところ、やはり東洋文化圏のそれは文字量の多いごちゃごちゃしたものになっているとのことである。なるほど。
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