ひろかずのブログ

加古川市・高砂市・播磨町・稲美町地域の歴史探訪。
かつて、「加印地域」と呼ばれ、一つの文化圏・経済圏であった。

官兵衛がゆく(30):野口戦②・援軍は来らず

2012-12-20 14:18:57 | 黒田官兵衛

E7c7f7c7今回も、『播磨灘物語』から始めたい。

官兵衛は、秀吉に野口城の地理を説明している。

・・・・

「(城の周囲には)沼が多く」と、官兵衛はその地理を説明した。

付近に沼や湿田が多く、城はそれらを囲(めぐ)らし、わすかに乾いたところにあった。

このため寄せ手にとっては、一筋程の小径(こみち)を一列になって攻めねばならず、防ぎ手としては、一列の戦闘をいちいち鉄砲で潰しているだけで済む。(以上『播磨灘物語』より)

   野口の地形

話は、すこし、野口合戦をはなれる。

野口城の南に駅ヶ池(うまやがいけ)がある。

印南野台地は、一般的に水が得にくい土地柄で開拓が遅れたが、ここばかりは、地形が西に低く、北と東が高く、水が集まる場所にあった。雨が多い時は沼地になる。

古くから人々は、ここに池を造り、水をためた。そして、田畑を潤し、生活に利用してきたのである。

池を造るための堤は、南と西に堤を防築けば完成する。北と東は、土地が高く堤防の必要がない。

それに、南の堤は、古代山陽道としてつくられ、近くには駅(うまや)が置かれた。このあたりは、古代から開けた土地であった。

   野口城落ちる

秀吉は土木工事を得意とした。沼地のような湿田はたいした問題ではなかった。

彼にすれば「埋めればいい」のである。

城主・(長井)政重は櫓で指揮をとった。勇敢に戦ったが切れ目のない激戦に兵は、徐々に疲れ、多くの兵は倒れた。

最初から、野口軍600の兵だけでは、3000の秀吉軍と勝てるとは考えていない。

三木城からの援軍があり、中と外から秀吉軍を攻めようと考えていた。

しかし、三木方からの援軍はなかった。

三日目であった。「援軍が来たらしい」と城内には一瞬生気がよみがえった。

が、援軍と思われたのは、秀吉側に加わった加古川城の糟谷の兵であった。

政重は決断した。「これ以上の兵の死は無駄である・・・」と。

自分の死と引きかえに残る兵の命を願い出た。

あっけなく、「野口城の戦い」は、三日間でおわった。

秀吉は、城主をはじめ降伏した兵士らの命を助けた。

この戦いは、秀吉・官兵衛の戦(いくさ)であり、信長の判断はなかったと思われる。信長がこの戦いにかんでいれば、城主・政重の命はなかったであろう。

秀吉・官兵衛は、余分な血をみることを好まなかった。

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官兵衛がゆく(29):野口戦①・野口

2012-12-20 11:57:39 | 黒田官兵衛

書写山に陣を構えた秀吉軍は、続く戦に疲れていた。

休養が必要であった、しかし、・・・

ここでも、『播磨灘物語』から引用したい。

  野口

2d26e596・・・信長は、自分の武将たちが懈怠(けたい)していることをもっとも嫌う。

これとは逆に武将たちが少々やり方が間違っていても信長はそれを責めず、その将が時間の無駄なく働き、くるくると隙間なく旋回していることを喜ぶ。

このことは織田家を特徴づけているもっとも強い個性と言ってよい。

・・・(援軍が来る前に抜ける城は抜いておきたかった)・・・

されば、どの城がよいか、と秀吉が官兵衛に聞くと

「左様さ、野口城が手頃でござろうか」と官兵衛は答えた。

「野口か」

「秀吉も、その村が加古川の西(注:東の誤りか)二里、山陽道に沿っているために、村のあたりの地形も記憶にあった。

野口は印南野(いなみの)の西のはしにあって多少の丘陵が起伏し、西から来る旅人にとっていかにも野の入口といった地形をなすために、そういう地名ができたのであろう・・・(以上『播磨灘物語(風の行方)』より)

「野口合戦」を播磨灘物語から引用しているが、司馬氏は時々ハッとするような知識・考え方を提供している。

ここでも、野口の地名を「印南台地(いなみのだいち)の入り」からきていることを説明している。蛇足になるが、太字に注目してほしい。「野口」である。

地元の者もあまり知らない知識である。

司馬氏の博識ぶりに驚かされる。

   野口城

この野口に、小さな平城の野口城があった。

城主は、長井四郎左衛門政重である。

そこへ、秀吉軍が手持ちの兵3000人ばかりで攻めよせた。

対抗する野口方は、軍勢380人に近在の農民、教信寺の僧兵を加えた500人が城に立てこもった。

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