前号で「鶴林寺」の、聖観音いついて少しだけ紹介しましたが、『ふすさとの民話(加古川青年会議所)』で、「アイタタの観音さま」として知られているこの聖観音を紹介しされています。
転載させていただきます。
民話:アイタタの観音さま
鶴林寺の観音堂に金色さんぜんと輝く観音様がおまつりしてありました。
お身たけ1.1メートル、重量は105キロあって、そのお姿の神々しさと美しさは、お参りに来た人をひきつけずにおかないほどでした。
それにもまして、この観音さまは閻浮檀金(えんぶだごん:注)の光を放つ黄金仏(おおごんぶつ)と言われていました。
これを聞いたドロボウが、この仏さまを盗み出し、鋳つぶして売れば一辺に千万長者になれるだろうと悪い考えをおこし2、3人の仲間と共に、ひそかに観音堂に忍び込んで、まんまと盗み出しました。
そこで見つからないように船に乗せて淡路島まで運び出し、七日七夜「タタラ」にかけて鋳つぶそうとしましたが、とうとうダメでした。
そこでドロボウはたいへん腹をたてて、力まかせにハンマーで腰のあたりをなぐりつけると「アイタター !」と言われたのです。
驚いた泥棒は、もの言うような仏さまは、どんな罰をあてるかもしれないと、大いに恐れをなして、もとどおり観音堂へ返しにきたと言われています。
それから、誰云うとなく「アイタタの観音さま」と呼んで、一層親しまれるようになったということです。
*(注)閻浮檀金:仏語で、閻浮樹の下にあるという金塊。または、閻浮樹の林を流れる川の底に産する砂金。また、広く、良質の金をいう。(no5664)
*『ふるさとの民話』(加古川青年会議所文化研究委員会)
*写真:アイタタ観音(インターネットより)