熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

都響定期C・・・アラン・ギルバートのスペイン・プロ

2018年12月18日 | クラシック音楽・オペラ
   今日の都響定期Cは、指揮/アラン・ギルバート、チェロ/ターニャ・テツラフ 、ヴィオラ/鈴木 学 で、次のスペイン・プロ

   R.シュトラウス:交響詩《ドン・キホーテ》op.35
   ビゼー:『カルメン』組曲より(アラン・ギルバート・セレクション)
    前奏曲(闘牛士)/第1幕への序奏/アラゴネーズ/ハバネラ/闘牛士の歌/間奏曲/密輸入者の行進/ジプシーの踊り
  リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34

  バリエーションに富んだ洒落たスパニッシュ・プログラムながら、オーストリア、フランス、ロシアの音楽家が作曲した異文化の遭遇で、面白い。

   スペインの作曲家の音楽では、ホアキン・ロドリーゴ の『アランフエス協奏曲』、フランシスコ・タレガ の『アルハンブラの思い出』、パブロ・デ・サラサーテ の『ツィゴイネルワイゼン』、イサーク・アルベニスのピアノ組曲「エスパーニャ」などのスペイン音楽、と言ったところしか聴いてはいないのだが、土の香がする一寸小粋で洒落た感じの音楽とは、少し、ニュアンスと雰囲気が違うが、「ドン・キホーテ」と「カルメン」には、物語があってスペインの風土を色濃く感じさせて視覚的な魅力がたまらないし、「スペイン奇想曲」には、強烈な民族音楽が綾織のように錯綜してスペインの空気さえ感じさせてくれる面白さがある。

   マドリードのホテルの前のスペイン広場に、ドン・キホーテとサンチョパンサの騎馬像があったのを覚えているので、チェロとヴィオラの掛け合いを面白く聞いていた。
   ただ、申し訳ないのだが、白鷗の「ラマンチャの男」は見たものの、ドン・キホーテの原文を読んでいないので、実際の話を知らないのである。

   ビゼーの『カルメン組曲』はアラン・ギルバート・セレクションで、「音楽で物語を語りたい」という、『カルメン』を歌なしでオケに歌わせるのである。
   尤も、私自身、あっちこっちのオペラ・ハウスで、何度も、オペラ「カルメン」を観ているので、殆どのシーンは目に焼き付いていて、この組曲のように重要な場面の音楽が流れ始めると、条件反射が作動して、走馬灯のように情景が駆け巡り、「カルメン」の舞台が彷彿としてくる。
   ハバネラから闘牛士の歌に移る時には、間髪を入れずに懐かしい高揚したサウンドを一気に紡ぎだして観客を魅了するなど、メリハリの利いた色彩豊かなドラマチックな音楽を都響に歌わせていた。

   「スペイン奇想曲」は、ロンドン響かコンセルトヘボウ管で、前奏のような感じできいたことはあるが、今回のようにコンサートのラストで、きわめてダイナミックに終幕を迎える曲だという気はなかったので、ギルバートの選曲とオーダーが新鮮であった。

   ヨーロッパに8年在勤していたので、殆どの国を回っているのだが、私の印象では、自然風景もそうだし、文化文明もそうだし、スペインが最もエキゾチックで、ほかの国とは違った魅力があった気がしている。
   マドリード以外に、サラマンカ、セゴビア、セビリア、グラナダ、コルドバ、バルセロナなどを訪れたが、セビリアからであったか記憶が薄れてしまったが、マドリードへの列車旅で車窓から見た不思議でダイナミックな台地の風景や、飛行機で飛んだり、グラナダからコルドバまでタクシーで走ったり、サラマンカへの車旅で遭遇した風景なども、忘れられない思い出である。

   スペインは、非常に懐かしい思い出に満ちているので、今日のギルバートのスペイン・プロは、私には映画を見ているようなひと時を楽しませてくれた。
   ギルバートは、演奏を終える直前の、高揚し感激した思いを一気に体全体で表し、その表情の豊かさが素晴らしい。
   それだけ、都響が、指揮者に応えて素晴らしい演奏をしたと言うことであろう。

(追記)口絵写真は、都響HPより借用。
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