福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

目的を持たぬ国

2021-10-30 | 護国仏教

エマソンはすでに150年以上前に、現代の大衆社会を「目的を持たぬ社会」(注1)といいましたが今の日本を見てもそのままそっくり当てはまります。こういう状況をとうに見通して安岡は「日本国土は神」であるといい(注2)、鈴木大拙は「霊性日本の建設」(注3)と喝破しました。

(注1「大衆は金持ちになりたがっている人間だ。これがこの階級の愚かしいところだ。苦労し汗水たらしてみても結局どこにも行きつかず、いっさいを為し終えても無駄骨おりなのだ。・・目的を持たぬ社会、目的をもたぬ国民だとしか思えぬような兆候がいたるところで目に入る。(エマソン論文集)」)

(注2日本精神の研究「・・「日本と天皇」
我が建国の由来を尋ねて先ず敬虔の情を覚えるものは、わが大八州国成立の神話である。天地開闢して後、伊弉諾伊弉冉の男女二柱の神がおのころ島におりられて、まず生まれたのが大八州、即ち日本の国土である。それから水や木や火の神が生まれ、女神は遂に崩御されて夜見の国に行かれた。夜見の国は見てはならない掟であったが男神はその掟を破って穢れを見、馳せかえってその穢れをお洗ひになった時、眼鼻から出られたのが天照大神月読尊素戔嗚尊であった。天照大神がわが皇室のご先祖であることはいふまでもない。してみれば大八州と天照大神とは御兄弟である。同じ親神から先ず大八州が生まれ、のち天照大神が生まれられたといふこの神話に私は不尽の理趣を覚える。・・萬物は一霊源の限りなき支派であって物と心は決して二元的存在ではない。物心本来一であって二ではない。・・人間の生まれたてはまだ塊然たる肉体である。それから次第に複雑な精神作用が始まり崇高な理想も生ずる。佛教の十二因縁説に名色六入から触受愛取と即ち実在感覚から感覚感情意思へと発展してゆく過程を明らかにしている。それはまさに日本国土成立の神話に現れているではないか。
大八州は決して単なる物質ではない。・・天照大神を以て代表せられるわが炎々たる理想精神を無窮に発揚すべき必然的条件として先ずこの大八州が生まれたのであって、日本国土は理想実現の神聖なる使命を有する。仏法の語を仮に用ふるならばまさしく「大乗相応の地」である・・この建国の大義に依ってこの如き神州の尺土と雖も仇に奪わるるは是明らかに民心が死をもって贖うべき罪である。わたしはかの元寇のとき、亀山天皇が身を以て国難に代らむことを祈願されたその御心中に実に悲壮この上もない御覚悟を拝察する。」

注2、華厳経第七世間成就品「一切の国土所有の塵、一切の塵の中に仏皆入り、普く衆生のために神変をおこしたまう」(仏と国土は重々無尽であり一体不離である)。
注3、維摩経「仏、舍利弗に語りたまわく、『我が仏国土、常に浄きこと是の如し。この下劣人を度せんと欲するが故に、この衆悪、不浄の土を示すのみ。譬えば、諸天の如きは、宝器を共にして食すれども、その福徳に随って、飯色に異なりあり。かくの如く舍利弗、もし人の心浄くば、すなわち、この土の功徳荘厳を見ん。』」とあり、衆生が清ければ国土も清いと喝破されています。経典には成仏国土成就衆生とでてきます。ここにあります。)


(注3.鈴木大拙「霊性的日本の建設」には「・・日本には世界といふ高堂に出陣して他の国民をして景仰せしむべきものがなくてはならぬ。
・・事事無礙法界の曼荼羅にありては天皇も事であり、我等も事である。事事が無礙に交渉し得るには天皇も曼荼羅の外にあることは許されぬ。どうしてもその中に没入してこなくてはならぬ。曼荼羅中の事事は重々無尽に回互する、円融する。それで天皇の生活にも国民生活が割り込んでいく、また後者のなかに前者が浸りこむ。これが啐啄同時の消息である。・・世界全面が国家群の法界曼荼羅であるやうに、日本の国内も亦天皇と万民とを一つものにして事事無礙とならねばならぬ。霊性的日本はここにはじめて可能となる。・・法界曼荼羅の国家的実現は日本に課せられた世界的使命である。今後の我らはこのような国体を作り上げてその護持に努めなければならないのである。」)

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