いい感じに暮らす

　テレビを見ていたら、お金についての質問をしていた。「高額所得者ですか」とか「どのくらいもらっていますか」という失礼な質問で、答える方も「微々たるものだ」とか、逆に「物凄く稼いでいる」とホラを吹く者もあった。そんな中で、「いい感じに暮らせるほどもらっている」と答える人がいて、「ああ、いい答え方だなあ」と感心した。

　たくさん稼ぐためにヒーヒーしている人もいるし、金がないから何もできないと嘆いてばかりいる人もいる。お金、お金、経済、経済とまるで新興宗教のように大騒ぎする中にあって、「いい感じに暮らす」ことをモットーにしているというのは、なんとも楽しいのだ。

　有名な言葉に、「お金は稼ぐより使う方が難しい」というのがある。朧げな記憶では、ビル・ゲイツが言っていたんじゃないかと思うが、その言葉だけは印象強く覚えている。大概の人はこうは言わない。「お金を使うのは簡単だが、稼ぐのは大変だ」というのが普通である。

　ゴミ収集を仕事にしているお笑い芸人がいるが、その人がお金持ちとそうでない人の違いをこう言っていた。お金持ちは自分にお金をかけ、そうでない人は他人にお金をかける。簡単に言えば自分に投資できるかどうかということだろうが、もっと踏み込んで考えるなら、こういうふうにも言えるだろう。それは、僕らが便利で楽な生活をしようと思うなら、自分以外の人に働いてもらうのが手っ取り早い。飯を作るのが面倒なら、誰かが作った料理を食べに行けばいい。他人にお金を渡せば、何もしなくても良くなるのだ。

　が、本当に美味しいものが食べたいと、料理の勉強から始めるとすれば手間ひまかかるだろう。が、そのためのお金は他人のために使うのではない。自分への投資である。世の中はすべてそういうことを基本にできている。「お金は稼ぐより使う方が難しい」という言葉を肝に銘じるには、自分自身でいろいろ努力をしなければならない、ということでもある。

「いい感じに暮らす」。お金があろうとなかろうと、実践するにはよほど意識して毎日を暮らさなければならないに違いない。