ひと月ぶりに歯医者に行った。お盆休みということもあったのだが、前回前歯の根元が歯茎を突き破っていることが判明し、レントゲンを撮った結果、前歯二本を激しく損傷し、神経が死んでいるのがわかった。そのせいで一旦治療を延期し、どういうふうに治療をするか歯医者のほうで検討し直してくれたのだ。
この何年かの間に、前歯の色が異常にくすんできた。せっせと歯磨きしているのに、どうしてこんな変な色になってしまったのかと訝っていたが、神経が死んでいたということでやっと納得できた。
そもそもの発端は、ドリの散歩の途中、ドリは僕の力を試すつもりか、時折ダッシュで僕を引っ張り倒そうとした。土手から空を舞ったこともあったし、地面に平行に、まるでスーパーマンのように宙を飛んだこともあった。ある時、勢いよく梅の木に突進し、避けきれなかった僕は顔面から幹に衝突し、もんどり打ってその場に倒れた。それでもリードは決して離さなかったので、ついにはドリも僕の実力を認めざるを得なくなり、その後は不意に引っ張るということもなくなったので、僕としては名誉の負傷ということになるだろう。
で、歯医者で前歯のことで心当たりはと聞かれ、「ああ、あの時の激突が僕の前歯を2本ダメにしてしまったんだな」と今更ながら気づいたわけである。
前歯のうち1本は根っこが手前にずれて歯茎から突き出している。唇をよほどめくらないと見えないので気づかなかったが、シーソーの要領で奥に倒れた反動で、根元は前に倒れてきたのである。で、これは役に立たないので、次回は根元から抜歯することになった。もう1本の前歯は削ってブリッジをして2本分の歯を支えるのに利用する。
今日、とりあえずということで前歯2本を削り、仮歯を入れた。それまで変色し傾いていた前歯が、一気に真っ白な麻雀牌の「白」みたいになった。うーん、綺麗だが、違和感も半端ないぞ。しばらくは気持ち悪いので、カチカチとカスタネットのように前歯を鳴らして遊んでいる。
