コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

リンゴとブロッコリー

2008-10-06 | Weblog
アビジャンに着いてから、3週間が過ぎた。
新しい場所での生活の立ち上げは、予想したより順調に進んでいる。引っ越し荷物は事故もなく届いてくれた。身分証申請や銀行口座開設などの手続きを進め、買い物や散髪など最低限必要な生活のノウハウを学びつつある。台所が整うまでの間は、レストランに外食に出るしかない。どこにどういうレストランがあるのか、大使館の皆に教えてもらう。そのうち届いた鍋釜を出して、自炊をぼつぼつ始める。肉や野菜など、材料の調達を試みる。

アビジャンは大都会とはいいながら、日本や欧米の都市のように、街角に商店が並んで何でも手軽に手に入る、というわけではない。広い街のなかで、どこで何を売っているのか、どこならば行っても安全なのか、一つ一つ、誰かに教えてもらわなければならない。詳しい地図はなく、場所を住所で教わることが出来ない。とにかく、自分で行って、どの通りのどこを曲がって、ということを学ぶしかない。

それでも、欧米流のスーパーマーケットがいくつかあることが分かって、救われた。とりあえずそこに行けば、大概の品は手に入る。冷房の効いた広い売り場を、カートを押しながら回る。綺麗に並べられた大量の商品を見て、また、新鮮で清潔な野菜や果物を見て、正直言ってほっとする。これならば、ひとまずは、都会流の生活を営んでいけそうだ。

牛肉やチキンも、きちんと切り分けられて、パッケージに包まれて売られている。パスタや冷凍食品も、ちゃんと並んでいる。真っ赤なリンゴが山のように盛られている。このリンゴを一山買って帰ろう。そうだ、しばらく野菜が不足していたかもしれない。緑のブロッコリーが、一つづつ清潔なセロハン紙にくるまれて並んでいる。今夜はこれを一個、茹でて食べることとしよう。

さて、レジに行った。驚く。代金が予想外に大きい。リンゴが1キロ2500フラン(約600円)、ブロッコリーに至っては、1つだけなのに5000フラン(約1200円)というではないか。

よくよく考えて、はたと気づく。ここは亜熱帯のコートジボワールである。リンゴやブロッコリーが収穫できるわけはない。皆、ヨーロッパから運ばれてきていたのだ。もう一度、野菜と果物の売り場に行ってみる。リンゴはフランスから、ブロッコリーはオランダからの輸入品と書いてあった。他の新鮮野菜も、全部が全部、ヨーロッパや中東からの輸入品であった。ここで日本や欧米と同じものを食べようとすると、航空運賃を払わなければならないというわけだ。

これではいけないと、地元の市場に出かけてみる。広場に露天が無数に並んでいる。色とりどりの腰巻きを身につけたご婦人方、子供を後ろにくくりつけたお母さんたちが、籠を下げて買い物に来ている。オレンジの値段を聞いてみると、1キロ200フラン(50円)という。たしかスーパーマーケットでは、1キロ1000フラン(250円)と書いてあった。ただし、これはモロッコからの輸入品である。

やはり、地元の市場に比べてスーパーマーケットは相当高い。しかし同時に、スーパーマーケットから逃れられないことを知る。地元の市場でも、トマトやオクラやタマネギなどは売っていた。しかし、リンゴやブロッコリーはもちろんのこと、レタスやキャベツや人参などの、当たり前にあるはずの野菜や果物が、地元の市場では売られていない。菜っ葉はあるが、どうも見慣れたものと違うし、かなり汚れている。ジャガイモも見あたらず、山と積まれているのはヤムイモだけである。オレンジだって、市場の200フランものは、果実が青く貧弱で、鮮やかな黄色に光るモロッコ産にはどう見ても劣る。

途上国では物価が安い、というのはある意味では間違いである。途上国で、途上国流の生活をすれば、安いということかもしれない。でも、やはりバナナばかり食べているわけにはいかない。リンゴは食べたいし、ブロッコリーでなくとも、新鮮な緑黄色野菜は健康維持に必要だ。衛生面にも、気を付けなければならない。途上国で先進国と同水準の生活を維持するには、かなりの無理がかかることは仕方がないし、それだけ出費がかさむことを覚悟しなければならない。

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