マイケル・J・フォックス
代表作は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
映画好きなら、知ってるよね?
そしてこの人が、若年性パーキンソン病に罹っていることも。
いつか読もう読もうと思いながら、避けていた本が、この人の自伝
「ラッキーマン」
闘病記は気が重くなるし、この「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は3部作とも大好きで何度見たかわからないくらいなので、あのマーティ・マクフライ(役名)が重度の神経障害に苦しんでいるところなんて、あまり詳しく読みたくない、と思ったりした。
でも。
読んでみてください、とにかく。
まず、彼は非常に文才があって、ユーモアにあふれていて、読みやすい。
彼のハリウッドでの成功にいたるまでの話も面白い。
けれど、なんと言っても、
経験者にしかわからない「生々しい」パーキンソン病の描写。
目が覚めるとぼくの左手にメッセージがあった。
朝目が覚めて、自分の左手が無意識に、自分のコントロールがきかないまま、ぶるぶると震えている、この恐怖。
告知を受け、30にして、仕事があと10年もできないだろうと、いう、残酷な現実。
仕事を失わないためにも、必死に隠し続け、人の目を欺き続ける苦しみやストレス。
そして、受容するまでの道のり。
「僕の個人的なつらい道のりが、あったこともないスイス人の女性のながったらしいリストに変えられてしまうのだ」、と彼は書いてあった。
そのリストとは、エリザベス・キューブラー・ロスの言う悲しみの5段階
(否定と孤立、怒り、取引、落ち込み、受容)
のことで、これは私も聞いたことがあった。
ぐさっときた。
患者さんの心理状態、進行の具合、精神的・身体的変化は、本に書いてある。
「本に書いてある」「本に書いてある」
けれど、患者さんの本音はそんなものじゃない。
もちろん、マイケル・J・フォックスも、この過程をたどった、結局は。
でも私もきっとそう思うだろう。
反抗心の強い私は。
「勝手に決めつけるな!」って。
それこそが「否定と孤立」の心理状態なのかもしれないけれど。
ほかにも、この本から学んだこと。
「赤ちゃん効果」
これは、自分がもし赤ちゃんを持つと、今まで街では見ても気にも留めなかった、子連れのお母さんの姿や、赤ちゃんを連れている人に目が行くようになる、って言う現象のこと。
マイケル・J・フォックスも、パーキンソンになってから、動きが緩慢な老人に目が行くようになった、って。
人は傲慢だ。
特に、健康な若者は。
自分が弱者にならないと、弱者のことは目に入らない。
痛切にそう思った。
自分が怪我をしてみて初めて、
自分の知り合いが病気になって初めて、
それを抱えて生きている人に目が行く。
気がつくまでは、気にも留めない。存在にすら気がつかない。
マイケル・J・フォックスは、病気になってよかったと言う。
「ぼくはほんとうにたいせつなものを、病気のおかげで手に入れた。」と。
彼は生まれ変わっても、パーキンソンにならない人生は選ばないだろう。
謙虚さと愛情にあふれた、人生の生き方に本当に感動した。
毎晩眠りに着く前に、彼はこうお祈りするそうだ。
「神様、自分では変えられないことを受け入れる平静さと、
自分に変えられることは変える勇気と、
そしてその違いをわかるだけの知恵をおあたえください。」
パーキンソンと言う、進行性の難病と、何十年もともに生きていかなければならないひとだからこそ、いえる言葉。
私には、変えられないものなど、今、抱えてない。
「変えられないかもしれない」と思っている、弱虫さ、だけ。
自分が変えたいと思うものを変える勇気、
それを忘れずに努力し続ける根気、
そして常に変えられないものを抱えている人への気配りと思いやり、謙虚さを持ち続けているようにすること。
これが足りない。
自分に出来ることは、怠けずにやる。
まずは、ただこれだけ。
リレーフォーライフでもおもったけど、健康に生かされている自分のありがたみと、そのために持っているはずの何らかの使命を、きちんと果たせる人間に、なってゆきたい。