菅首相が福島第一原子力発電所の事故後に溜り続けてきた処理水の放出を決断したことは、リーダーシップの発揮として評価されるに違いないと、元陸将補の森清勇氏。
原発事故直後から処理水の処分方法について検討されてきたが、結論が出ないまま先送りされ今日に至り、後2年で処理水タンクの保管場所がなくなることから、対処を迫られていたのです。
一方、昨年1月の経済産業省の「処理水小委員会」で「海洋放出がより確実」との結論に至っていました。
トリチウム水の海洋放出は、世界の常識で、実行されている事ですが、風評被害を恐れ反対する地元漁業関係者の反対や、未だに日本の産品の輸入規制を続ける、15の国や地域への説得が残された課題です。
特に、日本国内と、中国、韓国、台湾のクレームへの対処が求められます。
反日的行動を頻繁にとる中国と韓国は、今次の処理水の海洋放出に対してもクレームをつけるに違いないとの森氏の予言通り、中国、韓国とさらに台湾もクレームを発信してきていますね。
処理水放出で猛批判、原因は菅内閣の外交センス不足 東アジア「深層取材ノート」(第83回)(1/4) | JBpress(Japan Business Press)
中国は東シナ海の沿岸部などに多数の原発を設置した原発大国であり、2030年には米国を抜いて世界一になるとみられているが、トリチウムなどについての十分な情報を公開していないと森氏。
「戦狼外交官」(狼のように吠える外交官)の異名を取る趙立堅報道官が、日本に対して、以下の様に吠えまくったのだそうです。
「日本の近隣にあり権益を持つ国として、中国はこの件に厳しい目を向けている。福島原発事故は、これまで世界で発生した最も重大な原発事故の一つであり、大量の放射性物質が漏れた。それが海洋の環境、食品の安全、人類の健康に、深刻な影響を与えた。それを日本は、安全処理を尽くさないまま、国内外の疑義と反対をも顧みず、周辺国家と国際社会の十分な協議も経ずに、一方的に福島原発の核汚染水の海水排出を決定した。このやり方は責任を果たしておらず、国際的な公共の健康と安全、周辺国家の人々の切実な利益に、深刻な打撃を与えるものだ。アメリカも、環境問題を重視すると言っているのだから、それは相手によって変えるのでなく、事によって判断すべきだ・・・」
中国はこのところ、米ジョー・バイデン政権に、領土問題や人権問題などで責め立てられ、外交的に守勢に回っていた。日本についても、QUAD(日米豪印)首脳会議や日米「2+2」などで中国包囲網の「前線基地」と化していくことを、苦々しく思っていた。さらに今週末の日米首脳会談でも、中国に対して厳しい共同声明が出されることが見込まれ、焦燥感を募らせているのだ。そうした中、日本を国際的に非難する格好の材料ができたのだと近藤氏。
米国がジョー・バイデン政権になっても、対中圧力を弱めるどころか貿易問題ばかりでなく、「民主主義対専制主義」というイデオロギー問題に発展したために、覇権競争(一部では新冷戦とさえ呼ぶ)は長引きそうだと森氏。
中国は日本を米国から引き離すべく日本国内に海洋放出に反対の声があることや国際社会に対する責任問題などで対日圧力を勘案しながら日米連携に警鐘を鳴らすと。
韓国もまた、大騒ぎだと近藤氏。具潤哲(グ・ユンチョル)国務調整室長が関係部署次官会議を主宰。会議終了後に以下の非難コメントを発表したのだそうです。
「日本政府に反対と懸念を伝え、わが国民の安全と海洋環境の被害防止のための具体的な措置を強力に要求する。さらにIAEAなど国際社会に対し、韓国政府の懸念を伝え、今後、日本の措置に対する安全性検証情報の共有、国際社会の客観的検証などを要請していく・・・」
実際、韓国外交部は、相星孝一駐韓日本大使を呼びつけて、猛抗議したのだと。
先週7日のソウル・釜山市長選で、文在寅大統領率いる与党「共に民主党」が、歴史的大敗を喫したばかりだ。特に、文大統領のお膝元である釜山では、慰安婦像を通りに設置したり、日帝強制動員歴史館を建設したりと、「反日拠点」となってきた。それが先週の市長選大敗で、ようやく反日色が払拭されたばかりだった。
そうした中、今回のトリチウム問題で、再び反日感情に火がついてしまったと近藤氏。
ソウルと釜山、両市の市長選挙で惨敗した文在寅大統領は、レームダック化を食い止める最善の方法として、いつものことながら反日を強めるのではなかろうかと森氏。
今次の放出についてはIAEA(国際原子力機関)の協力が欠かせないと。
ラファエル・グロッシIAEA事務局長は昨年12月19日(現地時間)、ウィーン(オーストリア)のIAEA本部で、トリチウムが人体に及ぼす影響が少ないとされる点を根拠に、海洋放流をすることが「技術的には可能だ」と述べているのだそうです。
2月の来日の際も同内容の発言をし、「処分が決まった場合、要請があれば国際監視チームをすぐに派遣する用意がある」と強調。海洋放出には肯定姿勢。
米国は、ブリンケン国務長官もツイッターで「透明性ある取り組みに感謝する」と表明するなど、肯定姿勢。
処理水放出「世界基準に合致」 米政府が評価:時事ドットコム
日本の宣伝下手がいまだに続く輸入制限につながっていることからも、政府は全力を挙げて、国民を納得させ、また世界、中でも中韓のクレームを撃退する情報発信とプロパガンダをやってもらいたいと森氏。
国内の風評被害は、メディアが煽っている傾向があります。そして、日本国内の風評被害論が、海外の15か国と地域の輸入規制に影響を及ぼしている。
国際機関からの肯定を得ている今回。元々、世界の常識のトリチウム水の海洋放出。国内外へのオープンな情報発信と、万一の事故などに備えた体制造りとをまい進させていただけることを願います。
# 冒頭の画像は、東京電力福島第一の処理水タンク群
この花の名前は、クレマチス・アーマンディ
↓よろしかったら、お願いします。
原発事故直後から処理水の処分方法について検討されてきたが、結論が出ないまま先送りされ今日に至り、後2年で処理水タンクの保管場所がなくなることから、対処を迫られていたのです。
一方、昨年1月の経済産業省の「処理水小委員会」で「海洋放出がより確実」との結論に至っていました。
トリチウム水の海洋放出は、世界の常識で、実行されている事ですが、風評被害を恐れ反対する地元漁業関係者の反対や、未だに日本の産品の輸入規制を続ける、15の国や地域への説得が残された課題です。
特に、日本国内と、中国、韓国、台湾のクレームへの対処が求められます。
原発処理水放出で韓国、中国にどう対応すべきか 世界に訴えるプロパガンダで理不尽なクレームに反撃せよ | JBpress(Japan Business Press) 2021.4.14(水) 森 清勇 ; 元陸将補
菅義偉首相が福島第一原子力発電所の事故後に溜り続けてきた処理水の放出を決断したことは、リーダーシップの発揮として評価されるに違いない。
不退転の決断に至る最後の詰めが、3月6日の福島県訪問と東日本大震災10年後の状況視察で「いつまでも待てない」と語ったことである。
そして、翌7日の官邸で岸宏・全国漁業協同組合連合会(全漁連)会長と会談して専門家が示した「現実的な選択肢」に言及して「政府の方針を決定したい」と述べ、その後記者団に「近日中に判断したい」と語ったことであった。
原発事故直後から処理水の処分方法について検討されてきたが、結論が出ないままであった。近年でも毎日140トンの処理水が発生し、福島原発の敷地には処理水を貯蔵した1061基のタンクがあり、後2年で処理水タンクの保管場所がなくなるとされる。
処理水の処分方法には地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、地下埋設の5つの選択肢があるとされてきたが、大勢は大気中への放出と海洋放出に絞られてきた。
大気中への放出は放射線物質の拡散が天候などに影響されるが、海流は大きく変わらない点で拡散の予測がしやすいなどから、昨(2020)年1月の経済産業省の「処理水小委員会」で「海洋放出がより確実」との結論に至っていた。
あとは風評被害などに対する万全の策を講じて全漁連の理解を得た上での決断だけであった。いよいよ、その時が来たということである。
問題視されているトリチウム
トリチウムは水素(記号Hであらわされ、原子核の陽子と外殻の電子各1個からなる)の同位体である。
水素の原子核に中性子1個が加わったものは質量数が2となり重水素(D)と呼ばれ、安定しており自然界にも豊富に存在する。
水素の原子核にさらに中性子1個が加わり、質量数が3となるのがトリチウム(T)で三重水素とも呼ばれる。
地球環境においては一定量が酸素と結びついて水中や大気中に存在している。例えば体重60キロの人の場合50ベクレル程度のトリチウムを保有している。
いまから半世紀前、筆者は大学院で核融合研究に携わった。
プラズマの閉じ込めに四苦八苦する初期段階であったが、核融合に最も有用な素材が重水素とトリチウムで、超高温で反応(D+T=He+n(14MeV))してヘリウムと中性子になり、14メガエレクトロンボルトの発熱があるというものである。
核融合発電は「地上の太陽」といわれ、太陽を地上に再現しエネルギー問題に最終的な解決を与えるものとされる。
実現の暁にはトリチウムは日常茶飯事に親しまれる元素の一つとなろうが、現段階ではそこまで至っておらず廃棄せざるを得ない。
中韓の原発はトリチウムの垂れ流し?
原発の通常運転でも放射線の微弱なトリチウムが発生する。基準値以下に薄めて海に放出するのが世界一般のやり方である。
反日的行動を頻繁にとる中国と韓国は、今次の処理水の海洋放出に対してもクレームをつけるに違いない。
その中国は東シナ海の沿岸部などに多数の原発を設置した原発大国であり、2030年には米国を抜いて世界一になるとみられている。
しかし、トリチウムなどについての十分な情報を公開していない。
一方、韓国は総電力の40%前後を原発で賄っているが、2013年には部品の性能証明書の偽造が発覚するなど安全性が問題視された。
古里原発(釜山中心部から約30キロ)では2016年にトリチウム約36兆ベクレルを海洋放出したが、みんな釜山でとれた魚の刺身を食べており、風評被害も起きていない。
フランスの再処理施設でも福島のタンクにある860兆ベクレルの15倍の量のトリチウムを1年間に放出しているが問題は生じていないという(数値は「産経新聞」令和3年3月14日付より)。
こうした状況に鑑み、処理水の海への放出は科学的見地からは問題ないとされる。
しかし、全漁連会長は風評被害を心配して「反対という考えはいささかも変わるものではない」と述べている。
国内では理解が得られても、外国、なかでも中韓対処がメインとなるのではないだろうか。
中国は日本が海洋放出の方針を固めたという報道に対して、外務省報道官が「周辺国との十分な協議を基礎とし、慎重に決定すべきだ」と述べ、「自国民や周辺国、国際社会に対して高度の責任を負った態度を堅持し、処理計画がもたらす影響を深く評価」するように求めた。
韓国は日本が「処理水」と称しているにもかかわらず「汚染水」と称してきたし、韓国メディアは「韓国の同意を得なければならない」と述べ、「全世界が注目していることを肝に銘じ、国際社会が認める解決方法を示すべきだ」との意見も出ているという(中韓の反応は「産経新聞」令和3年4月10日付)。
中韓の考えられるクレーム
米国がジョー・バイデン政権になっても、対中圧力を弱めるどころか貿易問題ばかりでなく、「民主主義対専制主義」というイデオロギー問題に発展したために、覇権競争(一部では新冷戦とさえ呼ぶ)は長引きそうである。
日本が米国と一体化すれば、中国の敗勢につながりかねない。そこで、中国は日本を米国から引き離すべく日本国内に海洋放出に反対の声があることや国際社会に対する責任問題などで対日圧力を勘案しながら日米連携に警鐘を鳴らすものと思われる。
韓国の文在寅大統領は、長期化する経済低迷や2020東京オリンピック・パラリンピックを利用して北朝鮮との対話推進を目論んでか、1月の記者会見でも、慰安婦に関する日韓合意を「公式合意と認める」と述べた。
元徴用工訴訟でも原告らが差し押さえた日本企業の資産売却を「望ましくない」と明言し、日韓は「あらゆる分野で互いに重要な隣国」であり、「過去数十年間、両国は分業構造を土台に競争力を高め、韓国の成長は日本の、日本の成長は韓国の発展への助けとなった。今後もそうだろう」と強調した。
また、3月1日の「三・一独立運動」式典演説では「過去と未来の問題を分離できないこと」を「我々が乗り越えねばならない」と訴え、国民に〝過去離れ″を訴え、同時に日本に対話を呼びかけた。
しかし、具体的な提案も行動もとらず、また、北朝鮮はオリ・パラへの不参加を決めた。さらに、来年3月の大統領選の前哨戦と位置づけられたソウルと釜山、両市の市長選挙で惨敗した。
そこで、根本的な戦略の練り直しが迫られ、レームダック化を食い止める最善の方法は、いつものことながら反日を強めるのではなかろうか。
WTO(世界貿易機関)は日本産食品の安全性を否定していないが、韓国は独自の規制を続け、日本外務省の「科学的根拠に基づかない措置は風評被害だ」という反論もどこ吹く風である。
おわりに
NHKによると、震災後の2011年度に行われた最初の検査では、対象食品の中で基準値を超えたのは全体の3.4%。コメや野菜、果物、水産物など幅広い品目に及んだ。
しかし、2020年12月現在で基準値を超えたのは、一部のきのこや山菜類などで全体の0.025%まで減少している。
日本の基準値は国際的なルールと比べて10倍厳しい。それでも、15の国・地域で「輸入停止」が続いている。
その原因の多くは国内にある風評被害がもたらしており、国内における風評被害を押さえる努力が欠かせない。
また、国際機関の影響も大きいところから、今次の放出についてはIAEA(国際原子力機関)の協力が欠かせない。
幸い、ラファエル・グロッシIAEA事務局長は昨年12月19日(現地時間)、ウィーン(オーストリア)のIAEA本部で、トリチウムが人体に及ぼす影響が少ないとされる点を根拠に、海洋放流をすることが「技術的には可能だ」と述べた(2020年12月21日の共同通信配信)。
今(2021)年2月の来日の際も同内容の発言をし、「処分が決まった場合、要請があれば国際監視チームをすぐに派遣する用意がある」と強調している。
日本の宣伝下手がいまだに続く輸入制限につながっていることからも、政府は全力を挙げて、国民を納得させ、また世界、中でも中韓のクレームを撃退する情報発信とプロパガンダをやってもらいたい。
-------------------------------------------------
森 清勇 (もり せいゆう)
防衛大学校卒(6期、陸上)、京都大学大学院修士課程修了(核融合専攻)、米陸軍武器学校上級課程留学、陸幕調査部調査3班長、方面武器隊長(東北方面隊)、北海道地区補給処副処長、平成6年陸将補で退官。
その後、(株)日本製鋼所顧問で10年間勤務、星槎大学非常勤講師(現在は退任)。
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菅義偉首相が福島第一原子力発電所の事故後に溜り続けてきた処理水の放出を決断したことは、リーダーシップの発揮として評価されるに違いない。
不退転の決断に至る最後の詰めが、3月6日の福島県訪問と東日本大震災10年後の状況視察で「いつまでも待てない」と語ったことである。
そして、翌7日の官邸で岸宏・全国漁業協同組合連合会(全漁連)会長と会談して専門家が示した「現実的な選択肢」に言及して「政府の方針を決定したい」と述べ、その後記者団に「近日中に判断したい」と語ったことであった。
原発事故直後から処理水の処分方法について検討されてきたが、結論が出ないままであった。近年でも毎日140トンの処理水が発生し、福島原発の敷地には処理水を貯蔵した1061基のタンクがあり、後2年で処理水タンクの保管場所がなくなるとされる。
処理水の処分方法には地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、地下埋設の5つの選択肢があるとされてきたが、大勢は大気中への放出と海洋放出に絞られてきた。
大気中への放出は放射線物質の拡散が天候などに影響されるが、海流は大きく変わらない点で拡散の予測がしやすいなどから、昨(2020)年1月の経済産業省の「処理水小委員会」で「海洋放出がより確実」との結論に至っていた。
あとは風評被害などに対する万全の策を講じて全漁連の理解を得た上での決断だけであった。いよいよ、その時が来たということである。
問題視されているトリチウム
トリチウムは水素(記号Hであらわされ、原子核の陽子と外殻の電子各1個からなる)の同位体である。
水素の原子核に中性子1個が加わったものは質量数が2となり重水素(D)と呼ばれ、安定しており自然界にも豊富に存在する。
水素の原子核にさらに中性子1個が加わり、質量数が3となるのがトリチウム(T)で三重水素とも呼ばれる。
地球環境においては一定量が酸素と結びついて水中や大気中に存在している。例えば体重60キロの人の場合50ベクレル程度のトリチウムを保有している。
いまから半世紀前、筆者は大学院で核融合研究に携わった。
プラズマの閉じ込めに四苦八苦する初期段階であったが、核融合に最も有用な素材が重水素とトリチウムで、超高温で反応(D+T=He+n(14MeV))してヘリウムと中性子になり、14メガエレクトロンボルトの発熱があるというものである。
核融合発電は「地上の太陽」といわれ、太陽を地上に再現しエネルギー問題に最終的な解決を与えるものとされる。
実現の暁にはトリチウムは日常茶飯事に親しまれる元素の一つとなろうが、現段階ではそこまで至っておらず廃棄せざるを得ない。
中韓の原発はトリチウムの垂れ流し?
原発の通常運転でも放射線の微弱なトリチウムが発生する。基準値以下に薄めて海に放出するのが世界一般のやり方である。
反日的行動を頻繁にとる中国と韓国は、今次の処理水の海洋放出に対してもクレームをつけるに違いない。
その中国は東シナ海の沿岸部などに多数の原発を設置した原発大国であり、2030年には米国を抜いて世界一になるとみられている。
しかし、トリチウムなどについての十分な情報を公開していない。
一方、韓国は総電力の40%前後を原発で賄っているが、2013年には部品の性能証明書の偽造が発覚するなど安全性が問題視された。
古里原発(釜山中心部から約30キロ)では2016年にトリチウム約36兆ベクレルを海洋放出したが、みんな釜山でとれた魚の刺身を食べており、風評被害も起きていない。
フランスの再処理施設でも福島のタンクにある860兆ベクレルの15倍の量のトリチウムを1年間に放出しているが問題は生じていないという(数値は「産経新聞」令和3年3月14日付より)。
こうした状況に鑑み、処理水の海への放出は科学的見地からは問題ないとされる。
しかし、全漁連会長は風評被害を心配して「反対という考えはいささかも変わるものではない」と述べている。
国内では理解が得られても、外国、なかでも中韓対処がメインとなるのではないだろうか。
中国は日本が海洋放出の方針を固めたという報道に対して、外務省報道官が「周辺国との十分な協議を基礎とし、慎重に決定すべきだ」と述べ、「自国民や周辺国、国際社会に対して高度の責任を負った態度を堅持し、処理計画がもたらす影響を深く評価」するように求めた。
韓国は日本が「処理水」と称しているにもかかわらず「汚染水」と称してきたし、韓国メディアは「韓国の同意を得なければならない」と述べ、「全世界が注目していることを肝に銘じ、国際社会が認める解決方法を示すべきだ」との意見も出ているという(中韓の反応は「産経新聞」令和3年4月10日付)。
中韓の考えられるクレーム
米国がジョー・バイデン政権になっても、対中圧力を弱めるどころか貿易問題ばかりでなく、「民主主義対専制主義」というイデオロギー問題に発展したために、覇権競争(一部では新冷戦とさえ呼ぶ)は長引きそうである。
日本が米国と一体化すれば、中国の敗勢につながりかねない。そこで、中国は日本を米国から引き離すべく日本国内に海洋放出に反対の声があることや国際社会に対する責任問題などで対日圧力を勘案しながら日米連携に警鐘を鳴らすものと思われる。
韓国の文在寅大統領は、長期化する経済低迷や2020東京オリンピック・パラリンピックを利用して北朝鮮との対話推進を目論んでか、1月の記者会見でも、慰安婦に関する日韓合意を「公式合意と認める」と述べた。
元徴用工訴訟でも原告らが差し押さえた日本企業の資産売却を「望ましくない」と明言し、日韓は「あらゆる分野で互いに重要な隣国」であり、「過去数十年間、両国は分業構造を土台に競争力を高め、韓国の成長は日本の、日本の成長は韓国の発展への助けとなった。今後もそうだろう」と強調した。
また、3月1日の「三・一独立運動」式典演説では「過去と未来の問題を分離できないこと」を「我々が乗り越えねばならない」と訴え、国民に〝過去離れ″を訴え、同時に日本に対話を呼びかけた。
しかし、具体的な提案も行動もとらず、また、北朝鮮はオリ・パラへの不参加を決めた。さらに、来年3月の大統領選の前哨戦と位置づけられたソウルと釜山、両市の市長選挙で惨敗した。
そこで、根本的な戦略の練り直しが迫られ、レームダック化を食い止める最善の方法は、いつものことながら反日を強めるのではなかろうか。
WTO(世界貿易機関)は日本産食品の安全性を否定していないが、韓国は独自の規制を続け、日本外務省の「科学的根拠に基づかない措置は風評被害だ」という反論もどこ吹く風である。
おわりに
NHKによると、震災後の2011年度に行われた最初の検査では、対象食品の中で基準値を超えたのは全体の3.4%。コメや野菜、果物、水産物など幅広い品目に及んだ。
しかし、2020年12月現在で基準値を超えたのは、一部のきのこや山菜類などで全体の0.025%まで減少している。
日本の基準値は国際的なルールと比べて10倍厳しい。それでも、15の国・地域で「輸入停止」が続いている。
その原因の多くは国内にある風評被害がもたらしており、国内における風評被害を押さえる努力が欠かせない。
また、国際機関の影響も大きいところから、今次の放出についてはIAEA(国際原子力機関)の協力が欠かせない。
幸い、ラファエル・グロッシIAEA事務局長は昨年12月19日(現地時間)、ウィーン(オーストリア)のIAEA本部で、トリチウムが人体に及ぼす影響が少ないとされる点を根拠に、海洋放流をすることが「技術的には可能だ」と述べた(2020年12月21日の共同通信配信)。
今(2021)年2月の来日の際も同内容の発言をし、「処分が決まった場合、要請があれば国際監視チームをすぐに派遣する用意がある」と強調している。
日本の宣伝下手がいまだに続く輸入制限につながっていることからも、政府は全力を挙げて、国民を納得させ、また世界、中でも中韓のクレームを撃退する情報発信とプロパガンダをやってもらいたい。
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森 清勇 (もり せいゆう)
防衛大学校卒(6期、陸上)、京都大学大学院修士課程修了(核融合専攻)、米陸軍武器学校上級課程留学、陸幕調査部調査3班長、方面武器隊長(東北方面隊)、北海道地区補給処副処長、平成6年陸将補で退官。
その後、(株)日本製鋼所顧問で10年間勤務、星槎大学非常勤講師(現在は退任)。
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反日的行動を頻繁にとる中国と韓国は、今次の処理水の海洋放出に対してもクレームをつけるに違いないとの森氏の予言通り、中国、韓国とさらに台湾もクレームを発信してきていますね。
処理水放出で猛批判、原因は菅内閣の外交センス不足 東アジア「深層取材ノート」(第83回)(1/4) | JBpress(Japan Business Press)
中国は東シナ海の沿岸部などに多数の原発を設置した原発大国であり、2030年には米国を抜いて世界一になるとみられているが、トリチウムなどについての十分な情報を公開していないと森氏。
「戦狼外交官」(狼のように吠える外交官)の異名を取る趙立堅報道官が、日本に対して、以下の様に吠えまくったのだそうです。
「日本の近隣にあり権益を持つ国として、中国はこの件に厳しい目を向けている。福島原発事故は、これまで世界で発生した最も重大な原発事故の一つであり、大量の放射性物質が漏れた。それが海洋の環境、食品の安全、人類の健康に、深刻な影響を与えた。それを日本は、安全処理を尽くさないまま、国内外の疑義と反対をも顧みず、周辺国家と国際社会の十分な協議も経ずに、一方的に福島原発の核汚染水の海水排出を決定した。このやり方は責任を果たしておらず、国際的な公共の健康と安全、周辺国家の人々の切実な利益に、深刻な打撃を与えるものだ。アメリカも、環境問題を重視すると言っているのだから、それは相手によって変えるのでなく、事によって判断すべきだ・・・」
中国はこのところ、米ジョー・バイデン政権に、領土問題や人権問題などで責め立てられ、外交的に守勢に回っていた。日本についても、QUAD(日米豪印)首脳会議や日米「2+2」などで中国包囲網の「前線基地」と化していくことを、苦々しく思っていた。さらに今週末の日米首脳会談でも、中国に対して厳しい共同声明が出されることが見込まれ、焦燥感を募らせているのだ。そうした中、日本を国際的に非難する格好の材料ができたのだと近藤氏。
米国がジョー・バイデン政権になっても、対中圧力を弱めるどころか貿易問題ばかりでなく、「民主主義対専制主義」というイデオロギー問題に発展したために、覇権競争(一部では新冷戦とさえ呼ぶ)は長引きそうだと森氏。
中国は日本を米国から引き離すべく日本国内に海洋放出に反対の声があることや国際社会に対する責任問題などで対日圧力を勘案しながら日米連携に警鐘を鳴らすと。
韓国もまた、大騒ぎだと近藤氏。具潤哲(グ・ユンチョル)国務調整室長が関係部署次官会議を主宰。会議終了後に以下の非難コメントを発表したのだそうです。
「日本政府に反対と懸念を伝え、わが国民の安全と海洋環境の被害防止のための具体的な措置を強力に要求する。さらにIAEAなど国際社会に対し、韓国政府の懸念を伝え、今後、日本の措置に対する安全性検証情報の共有、国際社会の客観的検証などを要請していく・・・」
実際、韓国外交部は、相星孝一駐韓日本大使を呼びつけて、猛抗議したのだと。
先週7日のソウル・釜山市長選で、文在寅大統領率いる与党「共に民主党」が、歴史的大敗を喫したばかりだ。特に、文大統領のお膝元である釜山では、慰安婦像を通りに設置したり、日帝強制動員歴史館を建設したりと、「反日拠点」となってきた。それが先週の市長選大敗で、ようやく反日色が払拭されたばかりだった。
そうした中、今回のトリチウム問題で、再び反日感情に火がついてしまったと近藤氏。
ソウルと釜山、両市の市長選挙で惨敗した文在寅大統領は、レームダック化を食い止める最善の方法として、いつものことながら反日を強めるのではなかろうかと森氏。
今次の放出についてはIAEA(国際原子力機関)の協力が欠かせないと。
ラファエル・グロッシIAEA事務局長は昨年12月19日(現地時間)、ウィーン(オーストリア)のIAEA本部で、トリチウムが人体に及ぼす影響が少ないとされる点を根拠に、海洋放流をすることが「技術的には可能だ」と述べているのだそうです。
2月の来日の際も同内容の発言をし、「処分が決まった場合、要請があれば国際監視チームをすぐに派遣する用意がある」と強調。海洋放出には肯定姿勢。
米国は、ブリンケン国務長官もツイッターで「透明性ある取り組みに感謝する」と表明するなど、肯定姿勢。
処理水放出「世界基準に合致」 米政府が評価:時事ドットコム
日本の宣伝下手がいまだに続く輸入制限につながっていることからも、政府は全力を挙げて、国民を納得させ、また世界、中でも中韓のクレームを撃退する情報発信とプロパガンダをやってもらいたいと森氏。
国内の風評被害は、メディアが煽っている傾向があります。そして、日本国内の風評被害論が、海外の15か国と地域の輸入規制に影響を及ぼしている。
国際機関からの肯定を得ている今回。元々、世界の常識のトリチウム水の海洋放出。国内外へのオープンな情報発信と、万一の事故などに備えた体制造りとをまい進させていただけることを願います。
# 冒頭の画像は、東京電力福島第一の処理水タンク群
この花の名前は、クレマチス・アーマンディ
↓よろしかったら、お願いします。
人為的につくられるトリチウムについて
地球温暖化のように、人間活動は地球規模で環境に影響を及ぼしています。1960年代には、核実ました。下のグラフは、東京と千葉に降る雨にふくまれていたトリチウムの含量を示したものですが、核実験が盛んだった1960年代にはトリチウムが100ベクレル/Lにも達した年もありました。その後は核実験が禁止されたことから、徐々に減少し、現在は自然発生する量とほぼ近い水準まで下がっています。1960年代にもトリチウムによる害は観察されていませんので、現在のレベルのトリチウムが、環境や人間に深刻な影響を及ぼすとは考えられません。
子力発電所を稼働させると、トリチウムが発生します。すべての原発はトリチウムを、海か空に排出しています。それらの総量は経産省がまとめた資料にあります。現在、福島原発には1000兆ベクレルのトリチウムが存在すると考えられています。これらを毎年22兆ベクレル程度ずつ排出していく計画ですが、それとは桁外れの量のトリチウムが世界中で、環境中に排出されていることがわかります。これらの排出は、特に問題視されていないし、実際に問題が発生していません。また、近年の世界のトリチウム濃度が上がっていないことからも、環境中にどんどん蓄積していくような量ではないことがわかります。福島原発の事故によって、短期間の内に3400兆ベクレルのトリチウムが環境中に放出されましたが、すでに検出できない水準になっています。
トリチウムはなぜ除去できないのか?
福島原発の処理水をALPSという装置で放射性物質の除去を行っています。ALPSで処理をする前と後の核種の量を比較したのが下の図です(引用元)。縦軸の告示濃度比は、法律で決められた排水の濃度上限との比を示していて、赤線よりも下なら排水可能と言うことになります。ストロンチウムやセシウムなどの核種は、排出限界を大幅に下回り、処理後の青い棒グラフがほとんど見えないようなレベルまで除去できています。しかし、トリチウムだけは、殆ど減少していません。なぜ、トリチウムは除去できないのでしょうか。
セシウムやストロンチウムは、これらの物質が吸着しやすい素材を用いて、取り除くことができます。放射性のセシウムや放射性のストロンチウムを選択的に取り除くのではなく、放射性ではない普通のセシウムやストロンチウムも一緒に除去しています。水から不純物を取り除く処理をすることで、他の核種を取り除いているのです。
トリチウム水の場合、放射性ではないトリチウム水はすなわち水ですから、他の核種を分離した手法は適用できません。トリチウムを分離するには、放射性の水とそうでない水を分けることになり、物質そのものを除去すれば良かった他の核種と比較して、技術的なハードルが段違いに高いのです。
超高性能の遠心分離機を利用すれば、分子の重さの違いを利用して、水とトリチウム水を分離することは可能です。ただ、コストも時間もべらぼうにかかります。カナダは原発由来のトリチウムの純度を高めて販売しているのですが、1グラムあたり300万円と高価です。分離されたトリチウムは、水素爆弾の材料なので、核拡散禁止条約によって、日本はそのような設備を持つことが許可されていません。いろいろな意味で現実的とは言えません。
トリチウムは生物濃縮をしない。その理由は?
水とトリチウム水を分離するのが技術的に困難であるということは、生物濃縮が起こりづらいことを意味します。生物濃縮は、生物が特定の物質を捉えて放さないので起こります。トリチウム水の場合は、普通の水と性質の違いが殆どありませんから、トリチウム水だけを選択的に蓄積するような生物は見つかっていません。トリチウム水は、普通の水と一緒に吸収され、普通の水と同じように排出されるので、生物のトリチウム水の濃度は、環境の濃度とほぼ等しくなります。
トリチウムを濃縮する生物が見つかったら、世紀の大発見です。その生物がトリチウム水を集めるメカニズムを解明して、海水からトリチウムを集める方法が確立できれば、水の中からエネルギーを無尽蔵に取り出すことができるようになるかもしれません。
トリチウムの海洋放出は、他国から非難されるようなことなのか?
トリチウム水を海に流すのは、海に塩を撒くようなものだと筆者は考えます。そもそも環境に大量に存在するものを低濃度で流したところで、影響が出るとは思えません。他国も当たり前のようにやっていることですし、それによって国際的な非難をあびるような事で無いはずです。中国や韓国が日本を非難しているのは、純粋に政治的な理由によるものでしょう。本当にトリチウムの排出が問題だと考えているなら、まず、自国の原発を止めているはずですから。
他国の人は、日本で大騒動が起こっているので、何かとんでもないものを流そうとしていると勘違いしているのかもしれません。世界中で認められているトリチウムの排水で大騒ぎしているとは、普通は思わないでしょうから。科学を無視した日本国内の騒動が国際的な誤解を招いているのかもしれません。
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