遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

北方領土問題解決 「三度目の正直」なのか、それとも「二度あることは三度ある」のか

2016-05-12 23:27:52 | ロシア全般
 北方四島の領土問題。6日、ソチを訪問した安倍首相とプーチン大統領との非公式会談では、北方領土問題には触れないし、会談内容は公表しないとの事前の触れ込みでした。
 流石に全くのダンマリは出来ないと言う事なのか、それなりに内容が伝えられてきています。その中で注目すべきは、「新たなアプローチ」というキーワードでしょう。
 「新たなアプローチ」とはどんなことなのか。両首脳がこれまでとは異なる進展をさせようと合意したとは推測されますが、内容は未明です。
 宮家邦彦氏が、解説しておられますが、経済支援が欲しいロシアの苦しい台所から、これまでにもあったロシア側の軟化姿勢が、ロシア国内での支持を配慮しながらどこまで変化できるかに係っているという見方をしておられ、遊爺も同意するところです。

 日露首脳会談、北方領土問題に「新たなアプローチ」で交渉へ - ライブドアニュース

 
日露交渉、三度目の正直か (5/12 産経 【宮家邦彦のWorld Watch】)

 
医学用語に「境界性(ボーダーライン)パーソナリティー障害(BPD)」なる疾患があるそうだ。特徴は見捨てられることへの恐怖、不安定で激しい怒り、慢性的空虚感など。これぞロシア人の性格だ、と先月ワシントンで旧知のロシア生まれ研究者が教えてくれた。保養地ソチで安倍・プーチン会談が行われたのは6日。もちろん、国家と人間は異なるだろうが、交渉の行方を考えていたら、ふとこのBPDを思い出した。
 今回安倍晋三首相は平和条約交渉について「今までの停滞を打破する突破口を開く手応えを得ることができた」と語った。慎重な言い回しではあるが、
日露関係は新たな次元に入ったようだ
。紆余(うよ)曲折はあろうが、ロシア側の対応次第では、今後本格交渉が始まる可能性もあるだろう。

 
経済制裁と油価低迷で危機感を深めるロシアの本音は日本からの経済支援
だ。対する日本は北方領土のこれ以上の既成事実化回避のため、まず「時効」を止め、露側に戦略的譲歩の用意があればさらに踏み込むつもりなのだろう。
 もちろん、
前のめりは禁物だ。そもそもロシアが北方領土を簡単に放棄するとは考えにくいプーチン政権の主張が大衆迎合的ナショナリズムに基づく「母なるロシア」の回復であるとすれば尚更だろう。対露関係に関する日本と欧米の温度差にも注意が必要だ。米国は日本の勇み足を警戒
するだろうし、欧州各国も独自の対露関係を抱えている。日本の立ち位置を考えれば、欧米諸国との連携を無視することはできない。

 今回日露首脳は交渉で「新たなアプローチ」を取ることで一致したという。しかし、戦略と戦術の順序を取り違えてはならない。今の日本の最重要戦略課題は中国が台頭する中での東アジアの安定だ。しかも、
ロシアが欧州大陸でやっていることと、中国がアジアの海でやっていることは「力による現状変更」という点で基本的に変わらない
。そうであれば、日本の基本戦略はあくまでG7メンバー国間の連携でなければならない。G7連携という戦略的枠組みの中で戦術的に日露対話を進めることは政策的に正しい。安倍首相の「新たなアプローチ」もこの枠内での戦術的な手法の変化であるはずだ。

 今回日本側が提案した8項目の経済協力プランは医療、都市、中小企業、エネルギー、産業、極東振興、技術、交流など、プーチン大統領も無視できない重要事項が網羅されている。これと領土問題をパッケージで絡める手法が従来と異なる点なのだろう。
最大の問題はロシアが領土問題で戦略的政策変更まで踏み込むか否かだ。具体的には、例えば中国がロシアにとって顕在的脅威となる場合、ロシアは対日関係改善に向け戦略を変えるかもしれない。かかる「外交革命」が現実の選択肢となることは当面ないだろう。だが、今般ロシアで制定された「極東移住推進法」の背景に同地域での中国の影響力拡大に対する警戒感
があるとすればロシアの戦略的政策変更が意外に近い将来起きる可能性も排除できない。

 
ロシア側に戦略変更の兆候があれば、日本が一歩踏み込み、トライする価値はあるだろう。逆に、それがなければ「時効」を止めるだけのことだ。今後、日露両国が本格交渉に移行するか否かはロシア側の出方次第
。ここで気になるのが冒頭のBPDだ。「不安定で激しい他者への怒り」を持つ相手との平和条約交渉は予測不能である。欧米に対する怒りを逆手に取るのも一計だが、プーチン大統領を過小評価してはならない。

 専門家によればソ連崩壊後日露間では北方領土問題の進展を可能とする機会が何度かあったという。今度こそ「三度目の正直」なのか、それとも「二度あることは三度ある」のか。いずれにせよ戦略的利益を犠牲にする領土問題の解決は禍根を残すだけだ。

 安倍晋三首相は平和条約交渉について「今までの停滞を打破する突破口を開く手応えを得ることができた」とも語ったことで、日露関係は新たな次元に入ったようだと指摘し、平和条約にに向け、ロシア側の対応次第では、今後本格交渉が始まる可能性もあるとの宮家氏の解説です。
 ロシアの台所の状況を察して、安倍首相は8つの経済支援のお土産を提示しました。勿論、プーチン大統領の望むところであり、進展の合意がなされ、安倍首相の再訪露も決まったのですね。プーチン大統領の訪日については、安倍・プーチン会談を制止する米国や、G7の協調を配慮して未明とされているのも納得です。

 宮家氏はまた、安倍首相の姿勢に「前のめりは禁物」とくぎを刺しておられます。台所が苦しくて、進展させたいのはロシアだからですね。ただし、ナショナリズムでロシア帝国の復活を標榜することで国内の支持を得ているプーチン政権(「中華の夢」を掲げる習近平と同類)では、北方領土を簡単に放棄するとは考えにくいとズバリ。。
 日本の安倍首相も、日本の国益はもとより、日米同盟やG7の結束といった枠の制限がある。
 ただ、日本はロシアに比べると、切羽詰って急ぐところまでは追い込まれていないところが異なります。(安倍首相の総裁の任期はありますが)
 一方、ロシアは、経済の問題に加えて、中国からの人口流入といった安全保障面でも課題を抱えている。宮家氏も指摘されている「極東移住推進法」を制定したのがその証拠ですね。

 当然両国ともにお家の事情を抱えていますが、ロシアの方が抱えている課題のお国の存亡にかかわる度合いは大きい。と、なると、日本が焦って動くのではなく、ロシアの動きを見極めながら対応するのが良策となりますね。
 なので、ロシア側の出方を見極めながら、ロシア側に戦略変更の兆候があれば、日本が一歩踏み込み、逆に、それがなければ「時効」を止める程度に留めるとの宮家氏の指摘。全く同意です。
 とは言え、中国は中国なりに、対露経済を復活させたいドイツはドイツなりに、夫々もロシアの台所事情を見透かしたアプローチは当然進めますから、油断するると、インドネシアの鉄道建設の様に、餌は横取りされます。

 「前のめり」は禁物だが、「油断大敵」!「天網恢恢疎にして漏らさず」(一寸違う?)。三流外交と言われ、しかも失政続きの外務大臣を擁する日本の外務省で、それが出来るのか不安ですが、しっかり情報を収集し、「風林火山」の兵法に則った外交戦術の展開を望みます。



 # 冒頭の画像は、ソチで会談した安倍首相とプーチン大統領




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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)




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