第20回中国共産党大会が10月22日に閉幕し、23日には一中全会(第一回中央委員会全体会議)が行われ、新たな習近平政権体制がスタートしました。
習近平の定年をあらかじめ排除し、毛沢東時代の専制政治に戻そうとする習近平の狙いは明白だったのですが、結果は誰もが予測した事態を、はるかに超える、独裁体制が構築されることとなりました。
これまでも触れさせていただいてきましたが、元産経新聞中国駐在記者で、中国出入り禁止となったジャーリストの、福島香織さんが、文革時代のような混沌の国になっていくかもしれないと、解説していただいています。
最初のサプライズは、閉会式で、報道陣が入場を許可されたときの壇上で、習近平が、胡錦涛を強制退場させた寸劇。
これまでも触れさせていただきましたが、その様子はフランスAFPやロイターなどの配信する映像や写真で、世界中が目撃することになりました。
中央委員会の名簿や報告が党大会で採決される直前、胡錦涛が目の前におかれた冊子(おそらく第20期中央委員会名簿)を開こうとして、隣に座る栗戦書から制止されたのです。
二人の様子を、胡錦涛の隣で観ていた習近平が、胡錦涛を退席させる様指示し、多少のもみ合いを経て、胡錦涛は強制退席させられたのですね。
成り行きは、世界中の多くの人々が、報道動画で観ることが出来ましたね。
そして様々な憶測がながれましたが、その憶測とは、胡錦涛は中央委員名簿に李克強、汪洋が残らず、政治局名簿に胡春華が残らず、共青団派が徹底的にパージされたことを知らされておらず、閉幕式中に図らずも名簿を目にして、抗議の声を上げそうになった。中央委員名簿の採決の際に、反対に挙手する可能性があった。栗戦書が説得を試みているのを横目で見ていた習近平が、自分のボディガードに命じて胡錦涛を強制退席させたのではないか、というものを福島さんは取り上げておられます。
これまでの中央委員の名簿作成のプロセスを考えると、普通はあり得ないストーリーではあるが、客観的にあり得なさそうな共青団派徹底排除の中央委員名簿が現実にあり、党中央の幹部たちが本当にこの名簿に納得できたのか疑問が湧くのも無理はないだろうと。
国内外メディアの目前で、現総書記が前総書記を党大会の採決前に退席させるという光景を繰り広げたことに、政治的に意味がないわけはないと、福島さん。
中国共産党は、これまで、対外的には党の一致団結の建前を崩さず、また長老に対する敬意を崩さずにきた。だが、習近平はあからさまに共青団派をパージし、共青団派長老を邪険に扱ってみせた。これは習近平新時代が、鄧小平以来の共産党政治の伝統と決別し、また共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示したということだろうと!
そしてその名簿の新体制の中身。
新しい中央委員会名簿に李克強、汪洋の名前がなく、2人とも「裸退」、つまり完全引退。
共産党中央は68歳定年が慣例で、69歳の習近平が慣例を破って総書記を続投するのであれば、李克強や汪洋も政治局常務委員に残れるであろう、というのが8月ごろの大方の予想だったと、福島さん。
常務委員には残らないが、完全引退まで予想する声は稀でしたね。
李克強と汪洋はともに習近平より若く能力も高い。この2人の引退は、明らかに習近平指導体制からパージされた、ということになると、福島さん。
さらなる驚きは、政治局から副首相の胡春華が排除されたこと。つまり降格人事だと。
胡春華は共産主義青年団派のホープで、胡錦涛からは将来の後継者、総書記になるとの期待を寄せられた時期もあった。
ということは、逆に主席の座を、4期目も狙う習近平にとっては、最も敬遠しなければならない人物。これまでも、なにかにつけ敬遠してきていたことは、諸兄もご承知のこと。
今回の党大会で、胡春華が政治局常務委員会入りするのか、首相になるのか、それとも政治局委員止まりか、という予測はあったが、政治局から降格するとは、ほとんど誰も思っていなかったと、福島さん。
彼が政治局から排除された最大の理由は、若く優秀である共青団派のホープであったからだろうと。
胡春華を降格させたことにより、2007年以来25人の政治局メンバーが24人になった。これは単に人数が減ったというだけでなく、政治局の意見が分かれれば多数決で決定するという集団指導体制が事実上終わったことを示唆するのではないかとも。
新政治局常務委員は習近平の言いなりである。
李克強と汪洋は、経済政策において改革開放路線であり、多極外交路線であり、ゼロコロナ堅持ではなく経済状況に合わせて調整すべきという立場だったから排除されたと見るべきだろう。改革開放路線と決別した新指導部のメンツに、低迷する中国経済社会の立て直しの処方箋を書けるとは思えまいと、福島さん。
新政治局常務委員は習近平の言いなりで、共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示した新体制。福島さんのご指摘は、多くの人々も共有しているのですね。
中国の独裁者になった習近平、米国専門家はこう見る 巨大な権力と背中合わせの脆弱性とリスク(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)
毛沢東を目指す習近平。
その末路の同じ道を歩み始めた様ですね。
# 冒頭の画像は、新チャイナセブン
この花の名前は、ヒメヒガンバナ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
習近平の定年をあらかじめ排除し、毛沢東時代の専制政治に戻そうとする習近平の狙いは明白だったのですが、結果は誰もが予測した事態を、はるかに超える、独裁体制が構築されることとなりました。
これまでも触れさせていただいてきましたが、元産経新聞中国駐在記者で、中国出入り禁止となったジャーリストの、福島香織さんが、文革時代のような混沌の国になっていくかもしれないと、解説していただいています。
世界が目撃した衝撃の光景、胡錦涛「強制退場」が示唆する中国の“逆戻り” 共青団派の徹底パージで中国は再び混沌の国になる | JBpress (ジェイビープレス) 2022.10.27(木) 福島 香織:ジャーナリスト
第20回中国共産党大会が10月22日に閉幕した。23日には一中全会(第一回中央委員会全体会議)が行われ、習近平が総書記に再選され、さらに5年の権力トップの座を維持することになった。
このこと自体は、党大会開催前からある程度予想されていたが、政治局人事については、おそらく誰もが予想だにしていなかった結果といえるだろう。まさか、ここまで習近平イエスマンで固め、共青団派、改革開放派を徹底的にパージすると想像していた報道は国内外通してなかったと記憶する。
習近平指導体制からパージされた李克強と汪洋
共青団派とは、鄧小平と胡耀邦が作り出した共産主義青年団を通じた官僚育成システムによって選ばれたエリート官僚たちの派閥を指す。メンバーの共通点は重点大学卒業の優秀なエリートで、血統(革命家の血筋)は重視されず、大学での成績を重視して選抜され、路線的には改革開放重視、イデオロギー的には胡耀邦的な開明派が多いとされている。胡耀邦なきあと胡錦涛、温家宝らが共青団派の長老であり、第19期政治局メンバーにおいては李克強、汪洋、胡春華、孫春蘭らが共青団派エリートとして知られていた。
地方の実務経験と中央の官僚経験をバランスよく積み、プラグマティックで常識的な官僚政治家が多く、よくも悪くも優等生体質で、党内権力闘争は苦手といわれている。
だが新しい中央委員会名簿に李克強、汪洋の名前がなく、2人とも「裸退」、つまり完全引退となった。
共産党中央は68歳定年が慣例で、69歳の習近平が慣例を破って総書記を続投するのであれば、李克強や汪洋も政治局常務委員に残れるであろう、というのが8月ごろの大方の予想だった。
9月下旬に中央委員の名簿がほぼ確定したころ、サウスチャイナ・モーニング・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルが李克強の完全引退説を報じていたが、汪洋は残留すると思われていた。サウスチャイナ・モーニング・ポストは、政治局常務委員7人のうち4人が引退すると予測し、そのうちの3人を栗戦書、韓正、李克強と予測したが、4人目は不明とした。多くの人は王滬寧か趙楽際が引退するのではないか、と予想していた。
李克強と汪洋はともに習近平より若く能力も高い。この2人の引退は、明らかに習近平指導体制からパージされた、ということになる。習近平独裁に邪魔な存在とみなされたのだ。
共青団派のホープ、胡春華を降格
さらなる驚きは、政治局から副首相の胡春華が排除されたことだった。つまり降格人事だ。
胡春華は共産主義青年団派のホープで、貧農出身ながら16歳で北京大学に合格したという神童。大学入学のために北京に行くときに、初めて靴を履いた、というエピソードも残るくらいの貧困から、政治局まで実績を積み上げて出世し、胡錦涛からは将来の後継者、総書記になるとの期待を寄せられた時期もあった。
今回の党大会で、胡春華が政治局常務委員会入りするのか、首相になるのか、それとも政治局委員止まりか、という予測はあったが、政治局から降格するとは、ほとんど誰も思っていなかった。なぜなら彼には降格されるような失策はなかったからだ。
彼が政治局から排除された最大の理由は、若く優秀である共青団派のホープであったからだろう。59歳の胡春華が政治局にいる限り、習近平は自分の権力が脅かされることを心配せねばならない。
胡春華を降格させたことにより、2007年以来25人の政治局メンバーが24人になった。これは単に人数が減ったというだけでなく、政治局の意見が分かれれば多数決で決定するという集団指導体制が事実上終わったことを示唆するのではないか。
新政治局常務委員は習近平の言いなり
そして最高指導部たる新政治局常務委員7人は以下の顔ぶれとなった。
・習近平(続投3期目)
・李強(上海市書記、政治局委員から昇格)
・趙楽際(続投2期目)
・王滬寧(続投2期目)
・蔡奇(北京市書記、政治局委員から昇格)
・丁薛祥(中央弁公庁主任、政治局委員から昇格)
・李希(広東省書記、政治局委員から中央規律検査委員会書記に昇格)
60歳未満の若手はおらず、習近平の後継に目される人物は見当たらない。新たに政治局常務委員入りした李強、蔡奇、丁薛祥、李希はいずれも習近平の忠実な子分、「習家軍」と称される一派だ。習近平の終身独裁の意図を反映した人事だろう。
上海市の書記から政治局常務委員入りし、序列ナンバー2の地位についた李強は今年(2022年)の上海の第2四半期のGDP成長率をマイナス13%に突き落とし、ゼロコロナ政策の実施に伴う市民生活の大混乱を来したという明らかな失策があった。この上海市の混乱については8月の北戴河会議で、その責任を問うべきではないかという声が長老から上がったと聞く。だが、出世できた。なぜか。それは、習近平の指示通りに「ゼロコロナ政策」を貫徹したからだ。
経済、民生より、習近平の命令に忠実であることを優先したのが李強である。彼は15歳から浙江省の労働者から叩き上げで地元の党幹部になり、党の幹部候補養成によって浙江大学や中央党校、香港大学で工商管理や経済を学んだ。習近平が浙江省の書記時代に忠実な秘書長として仕え、気に入られた。苦労人ではあるが、副首相経験も中央の決策にも直接かかわったことのない李強がいきなり首相を務めて、何ができるのか。
北京市の書記から政治局常務委員ナンバー5位に出世した蔡奇も2020年までに北京市人口2300万人以下に抑制するという目標を掲げ、2017年11月以降、老朽化建物の整理などを理由に、出稼ぎ者の住む建物を一方的に取り壊すなどして、およそ300万人の出稼ぎ者、低所得者を路頭に迷わすような強引な政策を実施、非人道的と世論の批判を浴びた。当時、北京大学、清華大学では「蔡奇辞職」を求める学生抗議デモが起きたほどだった。だが出世した。なぜか。それは習近平の指示どおりの政策、たとえば脱炭素エネルギー政策やゼロコロナ政策を堅持し、北京冬季五輪も「成功」させたからだ。習近平の指示を守るためなら、いかなる非人道的な政策でも平気でやってのける習近平三大酷吏(三人のひどい官吏)の一人だ。
丁薛祥は大した「失敗」こそしていないが、さして功績もない。あえて功績と言えば、習近平の上海書記時代の秘書役を務め、今も優秀な秘書役であるという点だろう。習近平の演説稿を執筆することもあり、スピーチライターとして優秀と言われているが、政策通でもなければ地方の省長や書記の経験があり行政に通じているわけでもない。
李希は広東省書記で、今回、中央規律検査委員会書記という汚職摘発職務の最高責任者になり政治局常務委員入りした。彼の前に広東省の書記を務めたのは胡春華、その前が汪洋。広東はもともと汚職、腐敗、マフィア事件の多い地域であり、そこから中央規律検査委員会書記に出世したということは、次の汚職摘発ターゲットはひょっとすると胡春華や汪洋ではないか、という声もささやかれている。
王滬寧は行政実務経験は全くない。共産党史に詳しく習近平のためにそれっぽいスローガンや演説稿、理論構築をするのは得意だが、中国の経済や民生に対する智慧の蓄積はない。
趙楽際はそれなりに優秀であるが、実は汚職の証拠を習近平に握られているとも見られており、習近平の意見には逆らえない。
つまり、新政治局常務委員は習近平の言いなりである。
李克強と汪洋は、経済政策において改革開放路線であり、多極外交路線であり、ゼロコロナ堅持ではなく経済状況に合わせて調整すべきという立場だったから排除されたと見るべきだろう。改革開放路線と決別した新指導部のメンツに、低迷する中国経済社会の立て直しの処方箋を書けるとは思えまい。
胡錦涛の強制退席が意味すること
そして、もう1つ、誰もが予想しなかった事件が党大会閉幕式で起きた。共青団派の長老、胡錦涛の強制退席が国内外メディアもみている中で行われたのだ。この様子はフランスAFPやロイターなどの配信する映像や写真で、世界中が目撃することになった。
閉幕式の最中、中央委員会の名簿や報告が党大会で採決される直前、胡錦涛が目の前におかれた冊子(おそらく第20期中央委員会名簿)を開こうとして、隣に座る栗戦書から制止された。胡錦涛と栗戦書のやり取りを反対側の隣から冷淡な表情で見ていた習近平が指示を出して、胡錦涛を退席させようとした様子が映像から見て取れた。
胡錦涛は退席するのに抵抗するそぶりだったが、習近平のボディガードと中央弁公庁副主任の孔紹遜が強引に手を取って立ち上がらせて「連行」していくようにも見えた。
この連行に、慌てた表情の栗戦書が立ち上がりかけたのを、栗戦書の隣に座る王滬寧が制止しているようにも見える。胡錦涛はしぶしぶ席を離れるが、その時、習近平に何かを話し、去り際に李克強の肩を叩いていた。
新華社はツイッターの英文公式アカウントを通じて、胡錦涛の退席は健康上の問題で、別室で休息をとっていると報じた。だが、この一連の動きに世界が異様なものを感じたからこそ、世界各メディアがいろいろと憶測を報じているのだ。
その憶測とは、胡錦涛は中央委員名簿に李克強、汪洋が残らず、政治局名簿に胡春華が残らず、共青団派が徹底的にパージされたことを知らされておらず、閉幕式中に図らずも名簿を目にして、抗議の声を上げそうになった。中央委員名簿の採決の際に、反対に挙手する可能性があった。栗戦書が説得を試みているのを横目で見ていた習近平が、自分のボディガードに命じて胡錦涛を強制退席させたのではないか、というストーリーだ。
これまでの中央委員の名簿作成のプロセスを考えると、普通はあり得ないストーリーではあるが、客観的にあり得なさそうな共青団派徹底排除の中央委員名簿が現実にあり、党中央の幹部たちが本当にこの名簿に納得できたのか疑問が湧くのも無理はないだろう。
真実がどうであれ、国内外メディアの目前で、現総書記が前総書記を党大会の採決前に退席させるという光景を繰り広げたことに、政治的に意味がないわけはない。中国共産党は激しい権力闘争をずっと続けてきたが、対外的には党の一致団結の建前を崩さず、また長老に対する敬意を崩さずにきた。だが、習近平はあからさまに共青団派をパージし、共青団派長老を邪険に扱ってみせた。これは習近平新時代が、鄧小平以来の共産党政治の伝統と決別し、また共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示したということだろう。
このことは中国経済が今後も低迷を続けるであろうということを意味するだけでなく、経済や外交や民間の文化交流などを通じて多少なりとも分かり合える部分もあると思われていた中国が完全に変わってしまうかもしれない、ということだ。
パンツを履けないほど貧しくなっても核兵器をつくるのだ、と対外的に威嚇し、周辺国と戦争・紛争を起こしていた時代、党内ではひっきりなしに粛清を続けていた文革時代のような混沌の国になっていくかもしれない。
第20回中国共産党大会が10月22日に閉幕した。23日には一中全会(第一回中央委員会全体会議)が行われ、習近平が総書記に再選され、さらに5年の権力トップの座を維持することになった。
このこと自体は、党大会開催前からある程度予想されていたが、政治局人事については、おそらく誰もが予想だにしていなかった結果といえるだろう。まさか、ここまで習近平イエスマンで固め、共青団派、改革開放派を徹底的にパージすると想像していた報道は国内外通してなかったと記憶する。
習近平指導体制からパージされた李克強と汪洋
共青団派とは、鄧小平と胡耀邦が作り出した共産主義青年団を通じた官僚育成システムによって選ばれたエリート官僚たちの派閥を指す。メンバーの共通点は重点大学卒業の優秀なエリートで、血統(革命家の血筋)は重視されず、大学での成績を重視して選抜され、路線的には改革開放重視、イデオロギー的には胡耀邦的な開明派が多いとされている。胡耀邦なきあと胡錦涛、温家宝らが共青団派の長老であり、第19期政治局メンバーにおいては李克強、汪洋、胡春華、孫春蘭らが共青団派エリートとして知られていた。
地方の実務経験と中央の官僚経験をバランスよく積み、プラグマティックで常識的な官僚政治家が多く、よくも悪くも優等生体質で、党内権力闘争は苦手といわれている。
だが新しい中央委員会名簿に李克強、汪洋の名前がなく、2人とも「裸退」、つまり完全引退となった。
共産党中央は68歳定年が慣例で、69歳の習近平が慣例を破って総書記を続投するのであれば、李克強や汪洋も政治局常務委員に残れるであろう、というのが8月ごろの大方の予想だった。
9月下旬に中央委員の名簿がほぼ確定したころ、サウスチャイナ・モーニング・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルが李克強の完全引退説を報じていたが、汪洋は残留すると思われていた。サウスチャイナ・モーニング・ポストは、政治局常務委員7人のうち4人が引退すると予測し、そのうちの3人を栗戦書、韓正、李克強と予測したが、4人目は不明とした。多くの人は王滬寧か趙楽際が引退するのではないか、と予想していた。
李克強と汪洋はともに習近平より若く能力も高い。この2人の引退は、明らかに習近平指導体制からパージされた、ということになる。習近平独裁に邪魔な存在とみなされたのだ。
共青団派のホープ、胡春華を降格
さらなる驚きは、政治局から副首相の胡春華が排除されたことだった。つまり降格人事だ。
胡春華は共産主義青年団派のホープで、貧農出身ながら16歳で北京大学に合格したという神童。大学入学のために北京に行くときに、初めて靴を履いた、というエピソードも残るくらいの貧困から、政治局まで実績を積み上げて出世し、胡錦涛からは将来の後継者、総書記になるとの期待を寄せられた時期もあった。
今回の党大会で、胡春華が政治局常務委員会入りするのか、首相になるのか、それとも政治局委員止まりか、という予測はあったが、政治局から降格するとは、ほとんど誰も思っていなかった。なぜなら彼には降格されるような失策はなかったからだ。
彼が政治局から排除された最大の理由は、若く優秀である共青団派のホープであったからだろう。59歳の胡春華が政治局にいる限り、習近平は自分の権力が脅かされることを心配せねばならない。
胡春華を降格させたことにより、2007年以来25人の政治局メンバーが24人になった。これは単に人数が減ったというだけでなく、政治局の意見が分かれれば多数決で決定するという集団指導体制が事実上終わったことを示唆するのではないか。
新政治局常務委員は習近平の言いなり
そして最高指導部たる新政治局常務委員7人は以下の顔ぶれとなった。
・習近平(続投3期目)
・李強(上海市書記、政治局委員から昇格)
・趙楽際(続投2期目)
・王滬寧(続投2期目)
・蔡奇(北京市書記、政治局委員から昇格)
・丁薛祥(中央弁公庁主任、政治局委員から昇格)
・李希(広東省書記、政治局委員から中央規律検査委員会書記に昇格)
60歳未満の若手はおらず、習近平の後継に目される人物は見当たらない。新たに政治局常務委員入りした李強、蔡奇、丁薛祥、李希はいずれも習近平の忠実な子分、「習家軍」と称される一派だ。習近平の終身独裁の意図を反映した人事だろう。
上海市の書記から政治局常務委員入りし、序列ナンバー2の地位についた李強は今年(2022年)の上海の第2四半期のGDP成長率をマイナス13%に突き落とし、ゼロコロナ政策の実施に伴う市民生活の大混乱を来したという明らかな失策があった。この上海市の混乱については8月の北戴河会議で、その責任を問うべきではないかという声が長老から上がったと聞く。だが、出世できた。なぜか。それは、習近平の指示通りに「ゼロコロナ政策」を貫徹したからだ。
経済、民生より、習近平の命令に忠実であることを優先したのが李強である。彼は15歳から浙江省の労働者から叩き上げで地元の党幹部になり、党の幹部候補養成によって浙江大学や中央党校、香港大学で工商管理や経済を学んだ。習近平が浙江省の書記時代に忠実な秘書長として仕え、気に入られた。苦労人ではあるが、副首相経験も中央の決策にも直接かかわったことのない李強がいきなり首相を務めて、何ができるのか。
北京市の書記から政治局常務委員ナンバー5位に出世した蔡奇も2020年までに北京市人口2300万人以下に抑制するという目標を掲げ、2017年11月以降、老朽化建物の整理などを理由に、出稼ぎ者の住む建物を一方的に取り壊すなどして、およそ300万人の出稼ぎ者、低所得者を路頭に迷わすような強引な政策を実施、非人道的と世論の批判を浴びた。当時、北京大学、清華大学では「蔡奇辞職」を求める学生抗議デモが起きたほどだった。だが出世した。なぜか。それは習近平の指示どおりの政策、たとえば脱炭素エネルギー政策やゼロコロナ政策を堅持し、北京冬季五輪も「成功」させたからだ。習近平の指示を守るためなら、いかなる非人道的な政策でも平気でやってのける習近平三大酷吏(三人のひどい官吏)の一人だ。
丁薛祥は大した「失敗」こそしていないが、さして功績もない。あえて功績と言えば、習近平の上海書記時代の秘書役を務め、今も優秀な秘書役であるという点だろう。習近平の演説稿を執筆することもあり、スピーチライターとして優秀と言われているが、政策通でもなければ地方の省長や書記の経験があり行政に通じているわけでもない。
李希は広東省書記で、今回、中央規律検査委員会書記という汚職摘発職務の最高責任者になり政治局常務委員入りした。彼の前に広東省の書記を務めたのは胡春華、その前が汪洋。広東はもともと汚職、腐敗、マフィア事件の多い地域であり、そこから中央規律検査委員会書記に出世したということは、次の汚職摘発ターゲットはひょっとすると胡春華や汪洋ではないか、という声もささやかれている。
王滬寧は行政実務経験は全くない。共産党史に詳しく習近平のためにそれっぽいスローガンや演説稿、理論構築をするのは得意だが、中国の経済や民生に対する智慧の蓄積はない。
趙楽際はそれなりに優秀であるが、実は汚職の証拠を習近平に握られているとも見られており、習近平の意見には逆らえない。
つまり、新政治局常務委員は習近平の言いなりである。
李克強と汪洋は、経済政策において改革開放路線であり、多極外交路線であり、ゼロコロナ堅持ではなく経済状況に合わせて調整すべきという立場だったから排除されたと見るべきだろう。改革開放路線と決別した新指導部のメンツに、低迷する中国経済社会の立て直しの処方箋を書けるとは思えまい。
胡錦涛の強制退席が意味すること
そして、もう1つ、誰もが予想しなかった事件が党大会閉幕式で起きた。共青団派の長老、胡錦涛の強制退席が国内外メディアもみている中で行われたのだ。この様子はフランスAFPやロイターなどの配信する映像や写真で、世界中が目撃することになった。
閉幕式の最中、中央委員会の名簿や報告が党大会で採決される直前、胡錦涛が目の前におかれた冊子(おそらく第20期中央委員会名簿)を開こうとして、隣に座る栗戦書から制止された。胡錦涛と栗戦書のやり取りを反対側の隣から冷淡な表情で見ていた習近平が指示を出して、胡錦涛を退席させようとした様子が映像から見て取れた。
胡錦涛は退席するのに抵抗するそぶりだったが、習近平のボディガードと中央弁公庁副主任の孔紹遜が強引に手を取って立ち上がらせて「連行」していくようにも見えた。
この連行に、慌てた表情の栗戦書が立ち上がりかけたのを、栗戦書の隣に座る王滬寧が制止しているようにも見える。胡錦涛はしぶしぶ席を離れるが、その時、習近平に何かを話し、去り際に李克強の肩を叩いていた。
新華社はツイッターの英文公式アカウントを通じて、胡錦涛の退席は健康上の問題で、別室で休息をとっていると報じた。だが、この一連の動きに世界が異様なものを感じたからこそ、世界各メディアがいろいろと憶測を報じているのだ。
その憶測とは、胡錦涛は中央委員名簿に李克強、汪洋が残らず、政治局名簿に胡春華が残らず、共青団派が徹底的にパージされたことを知らされておらず、閉幕式中に図らずも名簿を目にして、抗議の声を上げそうになった。中央委員名簿の採決の際に、反対に挙手する可能性があった。栗戦書が説得を試みているのを横目で見ていた習近平が、自分のボディガードに命じて胡錦涛を強制退席させたのではないか、というストーリーだ。
これまでの中央委員の名簿作成のプロセスを考えると、普通はあり得ないストーリーではあるが、客観的にあり得なさそうな共青団派徹底排除の中央委員名簿が現実にあり、党中央の幹部たちが本当にこの名簿に納得できたのか疑問が湧くのも無理はないだろう。
真実がどうであれ、国内外メディアの目前で、現総書記が前総書記を党大会の採決前に退席させるという光景を繰り広げたことに、政治的に意味がないわけはない。中国共産党は激しい権力闘争をずっと続けてきたが、対外的には党の一致団結の建前を崩さず、また長老に対する敬意を崩さずにきた。だが、習近平はあからさまに共青団派をパージし、共青団派長老を邪険に扱ってみせた。これは習近平新時代が、鄧小平以来の共産党政治の伝統と決別し、また共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示したということだろう。
このことは中国経済が今後も低迷を続けるであろうということを意味するだけでなく、経済や外交や民間の文化交流などを通じて多少なりとも分かり合える部分もあると思われていた中国が完全に変わってしまうかもしれない、ということだ。
パンツを履けないほど貧しくなっても核兵器をつくるのだ、と対外的に威嚇し、周辺国と戦争・紛争を起こしていた時代、党内ではひっきりなしに粛清を続けていた文革時代のような混沌の国になっていくかもしれない。
最初のサプライズは、閉会式で、報道陣が入場を許可されたときの壇上で、習近平が、胡錦涛を強制退場させた寸劇。
これまでも触れさせていただきましたが、その様子はフランスAFPやロイターなどの配信する映像や写真で、世界中が目撃することになりました。
中央委員会の名簿や報告が党大会で採決される直前、胡錦涛が目の前におかれた冊子(おそらく第20期中央委員会名簿)を開こうとして、隣に座る栗戦書から制止されたのです。
二人の様子を、胡錦涛の隣で観ていた習近平が、胡錦涛を退席させる様指示し、多少のもみ合いを経て、胡錦涛は強制退席させられたのですね。
成り行きは、世界中の多くの人々が、報道動画で観ることが出来ましたね。
そして様々な憶測がながれましたが、その憶測とは、胡錦涛は中央委員名簿に李克強、汪洋が残らず、政治局名簿に胡春華が残らず、共青団派が徹底的にパージされたことを知らされておらず、閉幕式中に図らずも名簿を目にして、抗議の声を上げそうになった。中央委員名簿の採決の際に、反対に挙手する可能性があった。栗戦書が説得を試みているのを横目で見ていた習近平が、自分のボディガードに命じて胡錦涛を強制退席させたのではないか、というものを福島さんは取り上げておられます。
これまでの中央委員の名簿作成のプロセスを考えると、普通はあり得ないストーリーではあるが、客観的にあり得なさそうな共青団派徹底排除の中央委員名簿が現実にあり、党中央の幹部たちが本当にこの名簿に納得できたのか疑問が湧くのも無理はないだろうと。
国内外メディアの目前で、現総書記が前総書記を党大会の採決前に退席させるという光景を繰り広げたことに、政治的に意味がないわけはないと、福島さん。
中国共産党は、これまで、対外的には党の一致団結の建前を崩さず、また長老に対する敬意を崩さずにきた。だが、習近平はあからさまに共青団派をパージし、共青団派長老を邪険に扱ってみせた。これは習近平新時代が、鄧小平以来の共産党政治の伝統と決別し、また共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示したということだろうと!
そしてその名簿の新体制の中身。
新しい中央委員会名簿に李克強、汪洋の名前がなく、2人とも「裸退」、つまり完全引退。
共産党中央は68歳定年が慣例で、69歳の習近平が慣例を破って総書記を続投するのであれば、李克強や汪洋も政治局常務委員に残れるであろう、というのが8月ごろの大方の予想だったと、福島さん。
常務委員には残らないが、完全引退まで予想する声は稀でしたね。
李克強と汪洋はともに習近平より若く能力も高い。この2人の引退は、明らかに習近平指導体制からパージされた、ということになると、福島さん。
さらなる驚きは、政治局から副首相の胡春華が排除されたこと。つまり降格人事だと。
胡春華は共産主義青年団派のホープで、胡錦涛からは将来の後継者、総書記になるとの期待を寄せられた時期もあった。
ということは、逆に主席の座を、4期目も狙う習近平にとっては、最も敬遠しなければならない人物。これまでも、なにかにつけ敬遠してきていたことは、諸兄もご承知のこと。
今回の党大会で、胡春華が政治局常務委員会入りするのか、首相になるのか、それとも政治局委員止まりか、という予測はあったが、政治局から降格するとは、ほとんど誰も思っていなかったと、福島さん。
彼が政治局から排除された最大の理由は、若く優秀である共青団派のホープであったからだろうと。
胡春華を降格させたことにより、2007年以来25人の政治局メンバーが24人になった。これは単に人数が減ったというだけでなく、政治局の意見が分かれれば多数決で決定するという集団指導体制が事実上終わったことを示唆するのではないかとも。
新政治局常務委員は習近平の言いなりである。
李克強と汪洋は、経済政策において改革開放路線であり、多極外交路線であり、ゼロコロナ堅持ではなく経済状況に合わせて調整すべきという立場だったから排除されたと見るべきだろう。改革開放路線と決別した新指導部のメンツに、低迷する中国経済社会の立て直しの処方箋を書けるとは思えまいと、福島さん。
新政治局常務委員は習近平の言いなりで、共青団が象徴する鄧小平路線、改革開放路線との決別をはっきり示した新体制。福島さんのご指摘は、多くの人々も共有しているのですね。
中国の独裁者になった習近平、米国専門家はこう見る 巨大な権力と背中合わせの脆弱性とリスク(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)
毛沢東を目指す習近平。
その末路の同じ道を歩み始めた様ですね。
# 冒頭の画像は、新チャイナセブン
この花の名前は、ヒメヒガンバナ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA