遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

ロシアのグルジア侵攻は本気...!

2008-08-12 07:48:43 | EEZ 全般

 ロシアのグルジア侵攻は、米・仏などの抗議や調停にかかわらず止む気配がありません。
 遊爺などは、親自由主義国に攻め込むロシアは悪者(過去の史実がある)と決め込んでニュースを観ていますが、この戦争の発端は、南オセチアの親露独立運動をサアカシビリ政権が弾圧しようと、ロシアとの協定(?)に反し、軍事行動を起こしたことで、ロシア軍の侵攻が始まったとの報道が多数です。
 喧嘩両成敗とは昔からの理ですが、日本が開戦の口火を切るよう仕組まれたと言う説があるように、グルジアが軍事行動を起こすようにロシアが仕組み、周到な準備の上でグルジアへの本格的侵攻を開始したもので、グルジアを制圧するまで侵攻は止めないとの見方があります。
 ロシア軍、グルジア領内に侵攻…要衝ゴリ制圧の情報も : 露・グルジア交戦 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 南オセチア、緊迫の最前線…「山の向こうに敵が」とグルジア兵 : 露・グルジア交戦 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 情勢が刻々と変化する中での限られた情報ですが、前述の様な遊爺は、後者のロシアの仕掛け説に納得してしまいます。
 遊爺には耳の痛い『ロシアが「悪」で、親欧米で民主的なグルジアが「善」というのは過ちだ。』と言う記事が以下。
 

グルジア情勢 佐藤優氏が見る 分離独立「コソボ化」狙う露 (8/11 産経)

 グルジア共和国の南オセチアの分離独立問題をめぐる対立が、本格的な武力衝突に発展した。国際社会がロシア、グルジア両国に厳しく働きかけ、一刻も早く軍事力行使のエスカレートを阻止させないと、本格的なカフカス(英語名コーカサス)戦争に発展する危険性がある。さらにこの状況にアルカーイダとつながるイスラム原理主義過激派が連動し、ロシア、カフカス、中東を巻き込んだ混乱に発展する危険性もある
<中略>

 本来友好的だったグルジア人とオセチア人の関係が悪化したのは1989年のことだ。この年、南オセチア自治州の州都ツヒンバリにある教育大学を総合大学に昇格させようとするオセチア人の要求をグルジア政府が認めなかった。当時、グルジアでは、アブハジアの教育問題をめぐって、グルジア人とアブハジア人の関係が緊張し、アブハジアがグルジアから分離しようとする動きがでていた。オセチア人の要求を認めることが、アブハジア人の民族意識を刺激することをグルジア政府は恐れたのである。オセチア人の抗議行動をグルジアが力で封じ込めたために内乱が起き、現在に至っている。

 ≪援助目当ての親欧米≫
 ソ連崩壊後、グルジア情勢についての日本における報道は極端に少なくなった。そのため、ロシアが「悪」、グルジアが親欧米で民主的で「善」という二分法が通用しているが、これは過ちだ。ロシアが悪いのと同じくらいグルジアも悪い。グルジアのシェワルナゼ前政権、サーカシビリ現政権は、確かに親欧米であるが、それは欧米からの支援が必要だからにすぎない。いずれも、地縁、血縁によって結びついたエリート層が恣意(しい)的に国家運営を行っている。そもそもトビリシ(グルジアの首都)政権は、南オセチアやアブハジアはもとより、イスラム系のグルジア人が住むアジャール共和国や、グルジア西部のメグレリア地方を実効支配できていない弱い政権なのである。欧米の援助によって、かろうじてトビリシ周辺を支配することができているというのが実態だ。

 ≪合法的な駐留を強調≫
 ちなみに南オセチアやアブハジアの地方政権が、ロシアからの援助によって存続していることも公然の秘密だ。筆者は、ロシアの狙いは南オセチアとアブハジアをコソボのような「独立国」にすることとみている。ただし、コソボの背後には米国が控えているのに対して、南オセチアとアブハジアの背後にはロシアが控えている。ロシアは本気で南オセチアに介入している。8月9日、露国防省機関紙「赤い星」(電子版)が「侵略者を懲罰しなくてはならない」と題する記事を掲載し、明確なシグナルを出している。この記事で、ロシアはグルジア領に合法的に駐留していることを強調し、サーカシビリ大統領が、戦端を開かないという約束を破ったことが、今般の武装衝突の原因であるとグルジア政府を厳しく非難する。さらに、メドベージェフ露大統領が9日に「ロシア国家は、カフカスにおけるロシア国民の死が懲罰されないような事態を看過しない」と述べたことを強調し、軍としてもこの方針を断固支持する姿勢を示している。「赤い星」の論調からは、開戦前夜の緊張が伝わってくる。

ロシア仕掛け説は以下
 
宮崎正弘の国際ニュース・早読み - メルマ!

 ロシア、グルジアへの軍事攻勢はアブハジア独立支援だけか?
  隠れた意図はジェイハン・ルートを頓挫させ、原油高騰の維持ではないのか

********************************

 ロシアはグルジア攻撃をぬかりなく準備してきた。
 そもそもコソボ独立に反対し、されどオセチア独立に賛成し、チェチェン独立は武力で弾圧し、ユーゴスラビア解体のときに何も出来なかった恨みを晴らすかのように、グルジアをぺしゃんこになるまで軍事攻勢をかけようとしている。

 親米派のサアカシビリ政権があぶない。
 英米はこぞって即時停戦を呼びかけ、グルジアは五輪からの選手撤退を検討し、欧州のメディアは五輪そっちのけ、一面トップ・ニュースはグルジアである。

 ロシアは資源戦略の一環として複雑な思惑を秘めた軍事作戦を採っている。

 第一に北京五輪の虚をついた。
 プーチンは何事もないかのような笑顔をつくって北京五輪の開会式へ出席し、胡錦濤やブッシュと握手し、その笑顔を変えないで、グルジア攻撃を命じていた。鉄面皮。

 第二は米国が手も足も出せない窮状をしっていて、その隙に乗じた。米国はイラクで泥沼に陥ってしまい、台湾問題でも北京に譲歩するほどの外向的ていたらく、グルジアを救援するために米軍を派遣することはあり得ない。
 イランの核武装が着々と進んでいても英米の制裁にモスクワはまったく乗らない。この点では北京と黙契があるかのようだ。

 第三にグルジアへの積年の恨みを晴らす絶好の機会なのである。
一昨年、グルジアは二百年ぶりに真の独立を恢復し、ロシア軍は撤退を余儀なくされ、その屈辱の裏返しが年初のオセチア、アブハジア両傀儡政権の事実上の承認だった。外向的に国家承認ではなく、国内国のまま既成事実をみとめ、ロシアの傀儡大統領を「元首」扱いしだした。
 戦争準備は出来ていた。

 基本的なプーチンの資源戦略は石油高騰を維持し、ガスのカルテルを策定し、さらにウランのカルテルを組織化し、そのためには中央アジアの資源を、ロシアを経由しないルートの建設を徹底的に妨害することにある。

 西側が建設を始めたブロッコ・パイプラインに対抗してブルーストリームを並列させて同時に建設し(満鉄に平行した東清鉄道をみよ)、その拠点をベルギー、ウィーンに競わせてむしろEU内部の結束ががたがたに揺らし、ドイツへの資源供給に脅しをかけ、そしてジャイハンルートへの妨害である。
 ブロッコ・ルートはルーマニア、ブルガリアを巻き込み、EUの団結を削減し、バルト三国は供給を絶たれて悲鳴を挙げている。

 ジェイハンルートとは、中央アジアからアゼルバイジャンのバクー → グルジアを経由し、トルコを西から東へ横断してトルコ南岸のジェイハン港へと至る長大なパイプライン。すでに一日80万バーレルを運ぶが、トルコ内ゲリラの襲撃で五日間ほどストップしたばかりの脆弱性を秘めている。

 このパイプラインがグルジア領内を通過している。
 ロシアの副次的な狙いは、これであろう。


 両方の説で共通しているのが、ロシアのこの侵攻は本腰を入れた戦略のもとに行われていて、欧米各国が口で停戦・撤退を求めても易々とは止めないと言うことです。

 先の戦争での日本の敗戦が確定的になったとき、条約も恥も外聞も無く侵攻を続け南進の領土を拡大し、北方4島を未だに占有してるのと同じです。この機に一気にグルジア制圧をいけるところまで行ってしまおうとの戦術でしょう。
 仏・サルコジ大統領は、モスクワと、グルジアの首都トビリシ(60Km先の要衝・ゴリが陥落した戦闘状態で行けるのか?)を訪問して停戦調停をするとの事ですが、米国は抗議声明を発したり、プーチン、ブッシュ面談時に停戦を訴えたりするだけで、身動きは何も出来ていません。中東、北朝鮮問題を抱え、寿命が残り少ないレームダック化した政権では動けないのが現実で、ロシアに足元を見透かされています。
 サブプライム問題での景気悪化を加え、この米国の低迷が中露の台頭をますます助長しているのは、このロシア侵攻だけではありません。

 台湾への米国による安全保障はもとより、日米安保条約を守ろうとしない日本(例=米軍再編の普天間移転への抵抗/普天間基地移設 負担軽減の大局を見失うな : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞))も、中露の覇権拡大による尖閣諸島や沖縄、北海道への侵攻時に、米国が行動してくれるかは、安心しきっていてはいられない対岸の火事です。
 # 竹島へのブッシュの対応も忘れてはいけません。

 自国を護る力(侵攻を抑止する軍事力)の増強と、それでも足りない抑止力を補う日米、日豪の安全保障条約などはもとより、国際協力の絆の強化(至近の課題例=インド洋の海自派遣)が必要です。
 侵攻する戦略を練り、虎視眈々と機会を狙っている国が、今の世の中でもあるという現実を教えてくれているロシアのグルジア侵攻ですね。

 冒頭の図は、宮崎正弘の国際ニュース・早読み - メルマ!/ロシアvsグルジア戦争の正確な戦闘地図の転載です。



 

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5 コメント

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正確な認識です (中川輝光)
2008-08-12 12:42:22
わたしはソ連崩壊後のロシアに行ったことがあります。その頃の状況は、経済も含めて不安定で、青少年に不良行為が多く見られました。プーチンさんの回顧的な意識(国民の意識にもみられる)もわかりますが、あまりに作為的(露骨)過ぎるのが気になります。こういうタイプの政治家共通の「危険な臭い」がするせいか、欧米の対応もかなり慎重です。
返信する
Re: 正確な認識です (遊爺)
2008-08-13 10:14:52
中川輝光さん、コメントをいただきありがとうございました。

> わたしはソ連崩壊後のロシアに行ったことがあります。

 絵の関係で行かれたのでしょうか。
 そのころは、テレビの数々の特集番組でもこの国は崩壊するのではと、核爆弾をはじめとする維持管理が困難となりつつあった各種軍事施設や兵器のテロへの流出が懸念されました。
 それが、各種資源の高騰で一気に勢いを盛り返し、ロシア帝国(世界最強のバルチック艦隊も擁していた)時代の栄華を想う、「帝国シンドローム」に国中が陥っていて、国や国民生活を豊かにしてくれたのは、プーチン帝王のおかげと国内で沸いています。
 企業や産業構造の改革がなされていないままの現状(難癖をつけて、進出国外企業を買いたたいて国営化していますが)は、ソ連の崩壊と同じ道を辿ると、ロシア国内でも警鐘を鳴らす人はいるのですが、迫害を受けている様子です。

 さすがのプーチンさんも、国際世論の中で孤立したことが判ったのか、侵略の最低限の目標を達成したからか、サルコジ大統領の調停に応じる様ですね。
 http://mainichi.jp/select/world/news/20080813ddm007030101000c.html

 ただ、まだまだそう簡単には収まりそうにもない...。
 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080809-3758656/news/20080812-OYT1T00558.htm

> こういうタイプの政治家共通の「危険な臭い」がするせいか、欧米の対応もかなり慎重です。

 第三次世界大戦への危機は避けられそうですね。
  常任理事国が当事者となった(米、露、中)ときの国連の無力さは、今後に課題を残しました。

返信する
こんにちは (ねたねこ)
2008-08-13 13:02:25
遊爺様
こんにちは。ねたねこで御座います。

ロシア軍が軍事行動を停止したようですね。
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2505352/3211395

ロシアが平和維持軍とは名ばかりの軍部隊を南オセチアや
アブハジアに駐留させていたと同時に、戦闘拡大以前より、
グルジアでは無人偵察機が撃墜されるなどのきな臭い情勢が
続いていました。
あとは停戦交渉なのでしょうが、グルジアの首都トビリシまで
60kmという至近距離にあるゴリの防衛を放棄したグルジアが、
ロシアの猛攻によって押し込まれたということなのでしょう。

オセット人問題に関しては、ロシアも南オセチアのグルジアからの
独立を認めるというよりも、ロシア連邦に属する北オセチア自治
共和国への編入を考えているのでしょう。

結局は戦闘前の状態に戻るというのがオチではないかと思います。
返信する
Re: こんにちは (遊爺)
2008-08-14 00:50:09
ねたねこさん、こんにちは。

 サルコジ大統領とメドベージェフ大統領との和平案の共同記者会見では、〈1〉グルジア軍とロシア軍は戦闘開始前の地点に撤退する〈2〉国際的監視態勢が整うまでロシア平和維持部隊が南オセチアで治安維持の追加措置を取る権限を持つ〈3〉グルジアからの独立を主張する南オセチアとアブハジア自治共和国の地位について国際的な協議を始めるなどが公表されたそうですね。
 このうちの〈2〉は、暫定の表現ですが、ロシアとすれば現状よりも南オセチアの実効支配を広く公認させることとなり、今回の侵攻の成果となっていますね。
 〈3〉は、南オセチア、アブハジアの他に、沿ドニエストル共和国も含めた、独立宣言をしているが国際的に国家として承認されていない地域を、大国間でどう扱うかというはなしになるのでしょうね。

 仰るように、多種にわたる民族問題も絡みますね。ロシアは、民族を表に掲げて、旧ソ連に相当するCIS(独立国家共同体)の拡充(復活?)を進めるのが狙いですね。
 アブハジアもシュワルナゼ旧ソ連外相が大統領になっていましたが、近隣の諸共和国からやってきた義勇軍と独立派とにより政権を負われ、何故か最後はロシア海軍によって救出されていました。
 アブハジアでは、かつて50万人を越す人口があったのだそうですが、いまでは16~19万人程度に減り、更に減り続けているのだそうです。分離独立を唱える人たち(親ロシア)が残り、その他の人たち(グルジア人、アブハズ人)が国を去っていると言われています。
 グルジアもアブハジアや南オセチアには民族差別政策を行っているようで、分離独立(CISへの復帰)を望む人々の言い分にも理はあります。

 ただ、ご承知のようにロシアが戦略として考えていることが覇権の拡大であり、石油・ガスの販売ルート確保といった自己利益の都合であって、これを民族の平和を護ると(同時にロシア平和維持軍の安全も護ると正直に軍の進出・駐留も言っていますが。)の名目で軍事力を行使していることに、過去の史実があるだけに、国際社会から非難が集中しているのですね。

 まだまだ当分の間、目が離せませんね。


 
返信する
グルジア情勢 (ねたねこ)
2008-08-18 01:44:55
>>遊爺様

ロシア軍が幹線道路を封鎖し、警察権の移管をめぐって
争いが続いているようですね。

『〈3〉グルジアからの独立を主張する南オセチアと
アブハジア自治共和国の地位について国際的な協議を
始める』ことについては、チェチェン紛争を抱える関連から、
ロシアは南オセチアを国家承認していませんね。
これについては、南オセチア、アブハジア、(アジャリアは遠いでしょうか?)
などロシア本領土の拡大に繋がるのではと愚考しています。
沿ドニエストルの住民投票をめぐる米欧とロシアの利害衝突もありますね。
仰るとおり、旧ソ連に相当するロシアの復活を進めるのが狙いだと思います。

>>グルジアもアブハジアや南オセチアには民族差別
政策を行っているようで、分離独立(CISへの復帰)
を望む人々の言い分にも理はあります

これについては先にどちらが手を出したのか、差別と区別をどう捉えるか、そもそも行為主体によって問題の捉え方が異なるという解決不可能な問題に帰結してしまいますね。分離独立派をグルジアの主権を脅かすと捉えるのか、民族自決を求める集団と捉えるのか。これは行為主体によって正当性が代わってくるものなのだと思います。グルジアの安定化と欧米への接近を是としないロシアとしては、グルジアに一定のパワーを保持したいでしょうし、分離独立派は一定のロシアの後ろ盾で既成事実化を図りたい思惑もあるでしょう。

そもそも軍事行動の主体となったロシア軍が平和維持軍とは、笑わせますね。
プーチニズムの意図と行動原理は分かり易いですが、それを可能にしてしまうロシアの国情が恐ろしいです。
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