11月7日に予定されていた築地から豊洲への市場移転は、地下水のモニタリング調査の最終回調査が、11月18日に始まり、結果は来年1月ごろに出るという状況で実施されようとしていました。つまり、安全性の調査がなされている最中で、結論を無視して実施されようとしていたのです。
都民の台所とされる食品を扱う市場。何故安全確認の最中で結論が出ていないのに移転して操業を開始しようとしていたのでしょう。そして、そのことに、多くの人々が疑義を唱えなかったのでしょう。
安全確認の最中で、まだ結論が出ていないのに操業を開始するとは、聞かされていない(何処かで情報発進されていたかもしれませんが、その情報に接していない)から疑義も沸かないというのが、多くの方々が疑義を唱えなかった(知らないのだから唱えようがない)理由でしょう。知っていたけど唱えなかったという方は、何故疑義・異論を唱えなかったのか、理由をお聞きしたい。
安全が確認されていないのに、食品を扱う市場の操業を開始する。安全意識の希薄な、お隣の某国の話かと思ってしまいますが、G7の一角に座す、先進国の代表の国の首都で起きている話です。
安全基準をクリアした原発の稼働を反対する声が多い国の話です。安全確認をしていて結論が出る前に、食品を扱う市場の稼働開始に、ストップをかけることが、何故咎められるのでしょう。
都民の食の安全確認を無視して、計画を立案し、実行しようとしたのは、歴代の都知事、都の官僚、都議会議員です。
小池新都知事が、安全確認の結果が出るまで移転を延期すると、なによりも都民の安全を優先し決断したことは、当然のことでしょう。
これまで繰り返された確認検査で異常がなかったので、これから実施される最後の検査でも異常がない確率は限りなく高いとは予測されますが、最後の検査をしないと、安全との結論が出せないという根拠があるだろうのも事実です。
そこまでの話でも驚きですが、更に驚いたのは、主要各紙の報道。社説で取り上げているのは、読売、産経、毎日。日経と朝日は記事扱い。
その中で、安全確認が出来るまでの延期を支持しているのは、産経の1紙だけです。他は、多額の費用が生じるとして延期に疑義を投げかけています。つまり、安全を優先させるのは産経だけで、費用を安全より優先させるのが他紙で圧倒的意見。安全確認された原発の稼働には反対するのに、安全確認されていない豊洲市場の稼働を容認するどころか、費用を理由に非難さえしている社もあります。
11月に迫っていた築地市場(東京都中央区)の豊洲市場(江東区)への移転について、小池百合子都知事が当面、延期すると表明した。
豊洲市場には土壌汚染などの環境問題が指摘され、調査結果を待たずに開場するのはおかしい、などの理由からだ。
食品を扱う大規模な市場である以上、安全性を放置できないという判断は妥当である。
新市場の設備費用の膨張、使い勝手をめぐる情報公開の不足など、移転をめぐる不透明な点も多く指摘されてきた。
移転の是非に関する有識者のプロジェクトチームも置くという。年明けまでの期間に、まずは可能な限り「都民の持つ疑問」に答える材料を得て、その結果を公表してもらいたい。
築地市場の移転は、施設が老朽化し、手狭になったことから、都が平成13年に決めた話である。
その後、移転先の土壌や地下水が、ベンゼンなど有害物質で汚染されていることが発覚し、遅れの大きな要因になったが、調査が今に及んでいること自体、異様ではないか。
施設の耐震性に関する構造計算書と実際の構造が異なっていたことも分かっている。公共施設の耐震性がはなから疑われるようでは行政そのものの信頼を損なう。
豊洲の建物はすでに完成しており、移転を延期しても維持管理のため1日約700万円かかるとされる。移転準備を進めていた業者への補償も出てこよう。
一方、築地の「跡地」については2020(平成32)年東京五輪・パラリンピックに向け、臨海部と都心部を結ぶ環状2号線の整備が計画されている。
都の財政を預かり、五輪の成功にも責任を負う立場から、こうした状況に対しても小池氏は難しい判断を迫られよう。
開場時期について、小池氏は地下水のモニタリング調査の結果が出る来年1月以降に判断する考えのようだ。
安全性、構造上の要件をクリアすべきなのはもちろんだが、新市場の運用に向けて新たに重大な支障などがみつからないか。開場ありきでなく、今は問題の洗い直しを優先すべきだろう。
大詰めでの延期に伴う混乱の拡大を避けつつ、首都圏の台所の機能をどう維持していくか。さっそく強い指導力が求められる。
「開場ありきでなく、今は問題の洗い直しを優先すべきだろう」とは正論です。安全第一。それは、民間企業では鉄則ですが、東京都の官僚と出入り業者、歴代の関連都知事、都議会は、消費者都民より、業者、工期を優先してこの異常事態を発生させた犯人でありながら、費用を盾に小池新知事の判断を非難しているのです。
読売は、延期に伴う入場業者への補償、延期期間中に生じる維持費(700万円/日はフル稼働時のもので稼働していなければ異なる値との声もある)、オリンピック会場へ繋がる道路の工期の心配をあげて、「知事には、東京の台所が混乱しないよう努める責任がある」と冒頭で指摘こそすれ、食の安全が未確認である事には触れていません。
社説:読売新聞(YOMIURI ONLINE)
毎日は、「調査をしている以上、結果が出る前に移転をすることは、手続きとして疑問が残る。その意味で、いったん立ち止まると判断したことは理解できる。」としながらも、延期期間中の維持費と補償の費用を掲げ、都民に負担がかかるとし、「延期の必要性とその後のビジョンを丁寧に説明し、納得のできる手続きを進めてほしい。」だと。
「築地市場を通った水産物は全国に流通する。築地市場の移転の影響は、東京だけの問題にとどまらない」としていますが、だからこそ、安全第一が求められるのですが。。
日経、朝日の記事は以下。
築地市場移転 重い課題 :日本経済新聞
東京)築地移転延期 知事が正式表明:朝日新聞デジタル
橋本前大阪市長が、「移転してからの方が色々な声の正しいのはどれかが見えてくる。延期しても移転するのだから、事前調査労力は過大すぎる。それより。その労力は時期予算編成時の改革にそそぐべき」と、twitterでつぶやいておられます。現実的な意見だし、本命の都政改革の前に労力を消耗するなとの戦術アドバイスですが、都民の安全第一は、小池氏の一丁目一番地でしょうから、延期はやむをえないと推察します。議会承認が必要となる事項での対立があれば、安全確認をしないで稼働開始する異常事態を生じさせたのは誰かと逆襲できるでしょう。
難しい判断ですが、安全確認がされていない豊洲市場の食品を食べるか、安全確認がされるまで待つのか、都民の方々の支持がどうなるのかが答えですね。
# 冒頭の画像は、記者会見で延期を発表した小池知事
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