遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国のA2/ADをはねのける米国の対中戦略・作戦がほぼ完結

2019-06-28 01:23:45 | EEZ 全般
 中国共産党が国共内戦で、日本と闘っていた国民党政権を台湾に追いだして大陸で ソ連軍の支援の下、共産党が支配する中華人民共和国を設立しました。
 しかし、逃した国民党のいる台湾(今は国民党ではなく民進党政権)を併合することは、毛沢東以来の中国共産党の悲願です。
 「三戦戦略」で武力を使わず併合しようとしてきましたが、このところ、習近平は武力行使をちらつかせながら併合圧力を高めていることは、諸兄がご承知の通りです。

 国共内戦は、米ソの共産主義拡張の攻防の代理戦争。その流れで、米国は台湾を台湾関係法(TRA)で擁護しています。
 中国共産党の台湾併合で大きな障害となっているのが米太平洋艦隊ですが、中共のその防止対策がA2/AD(接近阻止・領域拒否)。
 中共は、第1列島線、第2列島線といった防戦ラインを設定していましたが、最近では第3列島線(≒太平洋分割統治)の主張を始めていますね。

 【国際情勢分析】中国が覇権むき出し、防衛ラインに「第3列島線」浮上 - 産経ニュース

 「空母キラー(carrier-killer)」の「DF-21(東風-21)」「JL-1(潜水艦発射弾道ミサイル・巨浪-1)」を南シナ海等に配備し、米空母の接近阻止で優勢にあった中共軍でしたが、その第1列島線を逆手にとって、米軍の反攻戦略が構築されたのですね。
 
対中国、「長篠の戦い」で勝つことを決めた米国 日米必勝の対中戦略・作戦はいよいよ完結する(上)| JBpress(Japan Business Press) 2019.6.26(水)用田 和仁

■1 米国は決心した!
 ここに来て、
米国は、中国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略遂行の初動である第1列島線への短期高烈度の戦いを跳ね除け、中国軍に勝つことを決心し、その対中戦略・作戦をほぼ完結させた模様である。
 というのも、
米国の戦略予算評価局(CSBA)が、2019年5月に海洋圧迫戦略(Maritime Pressure Strategy、MPS)を発表したからだ。

 MPSは、Air Sea Battle(エアシーバトル、ASB)では曖昧であった部分を補強し、対中国戦略を事実上完結させたものであり、その意味は極めて大きい。
 これまでの経緯を見れば、ASBをはじめとするCSBAの考え方は国防省の戦略そのものになっていることから、間違いなく米国の戦略の主要部分となり、
これで米国が2010年から検討を進めていたASBが10年がかりで、ついに完成したことになる。

 ただ、米国では、開発途上の作戦構想やアイデアごとに「戦略」の名を付すので、全体像が分かりにくい。
 正確には、この10年にわたる論争を経た、その全体の変化を捉え、組み合わせないと作戦・戦略の全容は見えてこないのだ。
 要は、従来のASBの海空軍を主体とした「動的戦力」と今回のMPSの陸軍・海兵隊を主体とした地上発射かつ機動型の、いわゆる「静的戦力」を組み合わせ、そのうえでそれぞれの領域を大胆に跨ぎながら、統合作戦で戦うというものである。
 これは、防勢的ではあるものの、自衛隊が2009年以来、具体化してきた南西諸島防衛の作戦・戦略そのものである。

<中略>

■2 日米は、逆の道を辿って一体となる!?

<中略>

 
米海軍は、中国のA2/AD戦略に翻弄されるのではなく、中国が保有する対艦ミサイルの射程以上の長射程対艦ミサイルを多数装備化し、積極的に中国艦隊の撃滅、すなわち「船を沈める(潜水艦を含む)」ことを目標とした「Distributed Lethality(分散した態勢からの打撃)」に戦略を変えたが、その意味は大きかった。

 それを
主導したのが太平洋軍司令官であったハリー・ハリス海軍大将である。
 彼は2017年5月、中国の侵攻を抑止するため陸軍が陸上自衛隊のように第1列島線に前方展開して縦深防御態勢を構築し、その態勢をもって米海軍作戦を強力に支援するため、「電磁波領域で優越を獲得するとともに中国海軍を撃滅すること」、すなわち「船を沈める」ことを強く要求した。
 そして、海軍演習である
リムパックで米陸軍が「船を沈める」ことを義務づけて、米陸軍の意識改革を強く迫ったのである。

 これら一連の流れに触発された米陸軍は、この2~3年の間に地上発射型の対艦・対地ミサイルを第1列島線へ展開することの大きな意義について再認識した。

 これにより、
今回のMPSでASBとの一体化に成功し、米海兵隊も「可及的速やかに長射程対艦ミサイルを要求する」として、「船を沈める」作戦に参画を表明した。
 ここに陸海空軍・海兵隊が一体化した
対中マルチドメインバトル(MDB)(日本のクロスドメインの戦い方と同じもの)がいよいよ本格化することになった。
<中略>

 ここで専門用語を並べても、なかなか理解しづらいであろうから、戦国時代の戦史と比べながら全体像を解説してみよう。

■3 長篠の戦いと現代の戦い
 歴史に似たことはあっても、同じことは起こらない。しかし、大きな歴史の流れの中で見ると、元寇の危機は終わっておらず、第2の元寇が繰り返されようとしている。

 すなわち、中国は、第1列島線バリアの克服のため、日本や台湾などへの懐柔政策と同時に軍事行動による威嚇を行っており、米国の出方によっては
第1列島線への軍事行動に発展する可能性が否定できない時代に入ってきた。
 
この軍事的危機に対応するのが日米の作戦・戦略であるが、現代の完結型ASBや陸・海空の戦いを歴史的に見ると、「戦理」において同じであることがよく分かる。

 作戦的に見ると、南西の防衛で自衛隊がやろうとしていることも、米陸軍・海兵隊がやろうとしていることも、
徳川・織田連合軍が長篠で武田の騎馬軍団を打ち破った戦い方と同じことを追求している

 徳川・織田連合軍は、長篠で「馬防柵」を作り、ここから鉄砲を連射することで襲来する武田騎馬軍団をほぼ壊滅させた。
 その
馬防柵が南西諸島であり、第1列島線である。
 
「鉄砲」は地上発射型のミサイルということになろう。そしてこの場合、「武田の騎馬隊」は中国海空軍である。

 一方、
米軍を中心とする海空軍は、飛び道具であり、「味方の騎馬隊」でもある。
 誤解を承知で言うならば、騎馬隊の戦い方を律するものが従来のASBで、馬防柵を使った鉄砲の運用がMPSである。

 戦いにおいては、馬防柵からの射撃で混乱した「敵騎馬隊」を「味方の騎馬隊」が殲滅する。
 さらに、馬防柵の中に「潜り込む攻撃」すなわち海上民兵に輸送される精強部隊の攻撃と、国防動員法で動員された民間人を装ったゲリラを壊滅するのは、馬防柵を守る日本など第1列島線の国々の自力対処に委ねられる。

 他の戦史を見ても同じことがいえる。

 騎馬隊を戦車に置き換えるなら、第3次中東戦争で無敵を誇ったイスラエル戦車隊が、エジプト軍の歩兵部隊が保有する「安上がりのサガー対戦車ミサイル」で、一挙に壊滅されたことに類似している。

 長篠の戦いと現在で異なるのは科学技術の進歩の差である。
 (1)
日米の地上部隊は、情報の優越と相まって、「長く賢い槍」(長距離のミサイル)を保有することにより、「敵騎馬隊」の発進地域あるいはその奥まで、一挙に攻撃が可能である。

 さらに、(2)
米海空軍、海空自も同じように「長く賢い槍」を保有することにより、馬防柵の前に出なくとも「敵騎馬隊」を壊滅することができる。

 すなわち、
第1列島線に守られた太平洋側から比較的安全に攻撃ができるということだ。

 過去になかったことと言えば、(3)
電磁波領域の支配により、戦いの道具が使えなくなったり、壊れたりする時代、すなわち、「ゲームチェンジャー」が戦場を支配する時代になったことだ。
(残念ながら今、この根幹となる技術と技術者が米中に取られそうになっている)

 また、(4)
地下から攻撃をするモグラ作戦、すなわち「潜水艦などによる水中の支配」は決定的な意味を持っている
 兵糧を考えると騎馬隊の「馬」を敵の槍から守り餌も与えなければならないだろう。

 
残念ながら日本は、民間の飛行場はあっても日米共同訓練でも使用できず、そこには航空機が分散し生き残り戦い続けるための弾薬も燃料も集積されていない。
 パイロットも十分な人数がいない。モンゴル騎馬隊は、1人が3~4頭の馬を引き乗り換えながら戦ったが、現代では1機につき3~4人のパイロットが必要である。
 
陸海空自共に人、装備・部品そして弾薬が大きく不足しているが、その事実に政府は何時まで目や耳を塞いでいるのだろうか。

 
日本の海空優先論者はよく考えてほしい
 あなた方は、
長篠の戦で馬防柵も鉄砲もいらないと言い、優勢な武田の騎馬隊に劣勢な騎馬隊だけで勝てると言っていることに等しいのである。
 近代化と増勢に邁進している「武田の騎馬隊」すなわち「モンゴル騎馬隊(中国海空軍)」に、対称戦力である少数の騎馬隊(海空自)だけで立ち向かおうと言うのか?
 それは、
戦理という常識に欠け、無謀な防衛費の増大を招くだけだ。もちろん、騎馬隊は必要不可欠だが、それだけでは日本は守れないし、不確実だと言わざるを得ない。

 味方の騎馬隊が少ないがゆえ、馬防柵が必要だし鉄砲も必要だ。
 むしろ
馬防柵や鉄砲は、味方の騎馬隊が有利に戦う土俵を提供し、併せて国民も守っていることを忘れてはいけない。

 バランスの取れた防衛力を語るときには、ちゃんとした「戦理」に基づいた考え方が必要である。その意味で
現防衛大綱の考え方はアンバランスだ。
 このような戦理を頭に描きながら、日米の戦略の考え方を理解していただきたい。


 10年がかりで完成した「MPS」。
 要は、従来のASBの海空軍を主体とした「動的戦力」と、陸軍・海兵隊を主体とした地上発射かつ機動型の、いわゆる「静的戦力」を組み合わせ、そのうえでそれぞれの領域を大胆に跨ぎながら、統合作戦で戦うということ。
 これは、防勢的ではあるものの、自衛隊が2009年以来、具体化してきた南西諸島防衛の作戦・戦略そのものと用田元陸上自衛隊西部方面総監。

 主導したのが太平洋軍司令官であったハリー・ハリス海軍大将。
 そしてついには、陸自がリムパックに参加。中国が排除された為、直接威力を見せ付けることは出来なかったようでした。
 【防衛オフレコ放談】中国を排除した世界最大演習「リムパック」 米軍は「陸自から学びたい」 - 産経ニュース

 用田氏の「長篠の戦い」に例えた解説は、とても解りやすいですね。
 (1)日米の地上部隊は、「敵騎馬隊」の発進地域あるいはその奥まで、一挙に攻撃が可能
 (2)米海空軍、海空自も、馬防柵の前に出なくとも「敵騎馬隊」を壊滅することができる
 (3)電磁波領域の支配により、「ゲームチェンジャー」が戦場を支配する時代になった
 (4)地下から攻撃をするモグラ作戦、すなわち「潜水艦などによる水中の支配」は決定的な意味を持っている

 残念ながら日本は、陸海空自共に人、装備・部品そして弾薬が大きく不足している。
 味方の騎馬隊が少ないがゆえ、馬防柵が必要だし鉄砲も必要だ。
 むしろ馬防柵や鉄砲は、味方の騎馬隊が有利に戦う土俵を提供し、併せて国民も守っていることを忘れてはいけないと用田氏。

 諸兄がご承知のように、中共・海監は尖閣近海の接続水域や領海への連続侵入の新記録を先日達成。一旦途切れたものの直ぐ再開しています。
 台湾、香港への支配圧力を強めている中共・習近平。
 報道しない自由を駆使する偏向オールドメディアのせいで、国民に広く知らされていませんが、その台湾、香港への覇権拡大は日本に向けても進行中であることを忘れてはいけません。

 G20で来日する習近平と会談する安倍首相。
 覇権拡大を推進する習近平に、どこまでけん制議論出来るのでしょうか。
 貿易戦争を展開しているトランプ大統領でさえ、米中会談で貿易戦争の解決策が見込めるとの情報もあります。
 中国ETFの取引、米中首脳が「休戦」で合意した18年のG20を想起 - Bloomberg

 場を活用しての各国首脳間で行われる会談。なにか進展や成果かあるのでしょうか。



 # 冒頭の画像は、関空に到着した習近平




  この花の名前は、チングルマ


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写真素材のピクスタ


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暴かれた中国の極秘戦略―2012年台湾乗っ取り、そして日本は…?




 

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