遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

玄葉外相 何のための訪露だったのか

2012-07-30 22:39:04 | EEZ 全般
 メキシコで 6月に野田首相とプーチン大統領の初の首脳会談が行われたわずか半月後に、メドベージェフ首相が国後島の再訪問を強行しました。日本を侮辱していると言ってもよいあてつけの行動です。
 それに対し、民主党政権は、前回の様な大使の召還もなく、さしたる講義や行動もなく、玄葉外相を予定通り訪露させました。そこまで侮辱された上での訪露ですから、起死回生の外交戦略カードを持参したのかとおもいきや、通り一遍の抗議だけ。その上、あろうことか今後も要人訪問を実施すると公言されてしまい、露の政府要人の北方四島への訪問を既得権化するマイナスの交渉結果を招いてしまっています。
 メドベージェフ首相の国後訪問に抗議して、訪露を控えるのが国際外交なのに(中国が良く使う手)、玄葉氏は、何のために訪露したのでしょう。露政府要人の北方四島訪問をオーソライズしに行った結果を産んでしまっています。
 

玄葉外相訪露 「無策」ではつけ込まれる (7/30 産経・主張)

 
玄葉光一郎外相はロシアでラブロフ外相、プーチン大統領と会談したが、北方領土問題で具体的進展はなかった。
 
メドベージェフ首相の国後島再訪強行への抗議も、ラブロフ外相に一蹴され、今後も要人訪問を「控えることはない」とはねつけられた。何のための訪露か、分からない結果
となった。極めて遺憾だ。
 国後島再訪を思いとどまらせる
対抗策を見いだせなかったことが問題
なのだ。野田佳彦政権はプーチン氏の大統領復帰により領土問題が進展するという幻想を排した上で、対露戦略の根本的練り直しと外交カードの再構築に全力を投じるべきだ。

 国後再訪は、6月にメキシコで行われた野田首相とプーチン大統領の初の首脳会談のわずか半月後だった。このことも踏まえ、「外相訪露を見合わせるべきだ」という意見は野党からもあった。
 にもかかわらず、野田政権は2010年のメドベージェフ氏の国後初訪問時のような駐露大使の呼び戻しもしなかった。
無力さをさらけ出しただけ
ではないか。
 さらに見逃せないのは、ラブロフ氏が会談後の会見で、第二次世界大戦時の自国の犠牲や国連憲章などを引き合いに
ロシア流の「法と正義」を唱え、北方領土支配の正当化を図ったことだ。
<中略>


 日露外相は首脳、外相、次官級の3レベルで領土問題を継続的に協議していくことで一致した。だが、これもロシアに真摯(しんし)な姿勢が欠け、日本に具体的戦略がなければ進展は望めない。
 プーチン氏は9月に極東ウラジオストクで開く
アジア太平洋経済協力会議(APEC)で野田首相との再会談に期待を示したが、会談イコール成果と考えがちな日本外交を正す意味でも、首相出席見合わせを真剣に検討すべきだ。

 露側が、ここまで日本政府を愚弄し高圧的に出てくる原因は、民主党の国家の主権を護る意識の薄弱さと、行動の無さ=弱腰外交が大きいのですが、もうひとつは、政権交代前から生じた、政権基盤の弱さ=ころころ変わる政権と、日本国内の北方四島に対する意識の薄さが挙げられます。
 だから、交渉をすると言いつつ放置し、その間に実効支配強化のための実績造りを着々と、安心して進めているのです。
 

露、実効支配へ着々 首相すぐ交代「交渉ムダ」 (7/29 読売朝刊)

 ロシアのプーチン大統領は28日、玄葉外相をソチの別邸に迎える、異例の厚遇で日本重視を演出
した。今月3日のメドベージェフ首相による北方領土・国後島訪問が日本の反発を招いたことに配慮した形だ。ただ現時点で、プーチン政権には領土問題で対日譲歩に応じる考えはない。
 プーチン大統領は玄葉外相との会談の冒頭、「日本企業がロシアでの活動で失望することがないよう、留意する」と
経済関係の拡大への期待を繰り返した
。領土問題では交渉の継続を表明しただけで、突っ込んだ言及はなかった。交渉は行うが歩み寄りは拒否するプーチン政権の方針は明白だ。ロシアが現状維持を決め込む口実が、首相交代を繰り返す日本の政治状況だ。
 露外交筋は「
日本の、不安定な政権を相手に交渉しても意味がない」と突き放す。対日問題の専門家で極東研究所のビクトル・クジミンコフ上級研究員は「民主党は分裂し野田政権もいつまで続くか分からない。日本の方に、領土問題に真剣に取り組む条件が整っていない
」と説明した。
 
一方で、ロシアは北方4島の社会基盤整備を着々と進め、実効支配を固める
。原油や天然ガスの価格高騰を追い風に経済が回復し、北方4島をロシアが自力開発する余裕ができた。ラブロフ外相は28日の共同記者会見で「ロシア領内の社会経済状況の向上は政府の責任であり積極的に続ける」と断言した。
 来年には択捉島で新空港を開港し、ロシア本土との往来を増やす。日ソ共同宣言で「平和条約締結後に日本に引き渡す」と定めた2島の一つ、
色丹島にも病院などを建設
する計画だ。
 交渉の打開には、日露が戦略的利益を共有することが必要だ。将来的に日露接近を後押しする可能性があるのが中国への警戒感だ。
 ロシアは現在、「戦略的パートナー」と位置づける中国との連携を軸に欧米に対抗する。
 ただ、対日関係を担当した露外交筋は「
ロシアには強大化する中国への警戒感がある。これは日本と同じだ」と指摘する。


 ロシアが極東開発に力を入れる理由は、いつも言っていることの繰り返しで恐縮ですが、次の二つです。
 一つが、現在の主力ガス田の枯渇に変わる、新規のガス田開発を極東や北極圏で進めねばならなくなっていることです。ただそのためには、極寒の地での開発のリスクヘッジに、日本他の先進技術と投資が必要となっています。
 もうひとつが、米中が覇権を争う西太平洋への進出と、成長を世界が注目する東南アジアへの進出です。

 一つ目に関しては、日本は安売りせずに待っていればむこうから頭を下げてきます。その時に、北方四島を返せば助けてあげると言えばいいのです。待つのですから、経済協力の話もずるずる先伸ばしすべきなのです。シェールガスの登場と、欧州諸国のエネルギーロシア依存の削減で、軟化するトレンドの市場と販路の減少で、経済の先行き不安を抱えているのはロシアなのですから。
 
 二つ目は読売の記事が指摘する通りで、中露の関係はお互いに心底からの信頼関係はありません。中国は、ずうずうしくも北極海への進出を虎視眈々と狙っています。シベリアでの、中国からの人口流入が、脅威となってきています。なので、一つ目との関連で言うと、日本が経済協力を渋っても、露としては中国へ依存するには限界があります。韓国が隙間をチョロチョロしても、技術開発が要らない組み立て産業には強くても、基幹産業部門にはまだまだのところがあります。

 「対露戦略の根本的練り直しと外交カードの再構築に全力を投じるべき」との産経・主張に我が意を得たりと大賛成です。
 メドベージェフ氏が大統領の時に、初めて国後を訪問した時の、中露大使の情報の間違い。今回の、メキシコでの野田・プーチン会談での発表内容のドタバタ。遊爺は、外務省のロシア組上層部の総入れ替えを唱えています。

 メドベージェフ首相の二度目の国後訪問。それへの玄葉外相の抗議に対する、要人訪問の継続主張の回答。ここまでされたら、何か行動しないと、全てを容認したこととなり、ロシアの既得権となります。露側もますますエスカレートします。
 
 ワシントン郊外で行われた、G8にプーチン氏が欠席した報復に、オバマ氏はウラジオストクで開催されるAPECを欠席します。
 オリンピックを欠席した野田氏。APECも欠席すればいいのです。(TPPの進展がないので丁度いい?)
 日米の両トップが欠席のAPECでは、ロシアの威信もガタ落ちで、露のわがまま外交へのお灸になるでしょう。


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 # 冒頭の画像は、玄葉外相とラブロフ外相



  この花は、ビオラ


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交






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