遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

グレーゾーン対処は、自衛隊と警察の縄張り争いで法整備見送り

2014-07-09 01:31:02 | 日本を護ろう
 集団的自衛権行使の憲法解釈変更は閣議決定されましたが、グレーゾーンへの対処の法整備は、野党の抵抗も少なく、日々危機にさらされている現状もあり、こちらを先行して着手する勢いだったと認識していました。
 読売で、集団的自衛権行使の憲法解釈変更をうけて、安保法整備が進む今後に向けて連載をしていますが、その4回目にあたる今日の「グレーゾーン 危機頻発」で、不覚にも、先送りされていたとは思いもよらむことで驚いています。しかも、自衛隊と警察の縄張り争いが理由とは、重ねての驚きというか落胆です。

 韓国のセマウル号沈没事故での救出活動で、警察と軍の縄張り争いが指摘されていましたが、まさか日本でも似た状況があろうとは...!
 国民と国を護る為に、日々の激務の活動と研鑽を重ねていただいている当事者の自衛隊と警察が縄張り争いで、結果としてその活動に支障を招く事態を産んでいるとは...!
 絶句です。
 

憲法考 転換 安保法制 [4] グレーゾーン 危機頻発 (7/8 読売朝刊)

 政府が1日に閣議決定した政府見解は、いわゆる「グレーゾーン事態」に対処する能力の向上も打ち出したが、法整備は見送られた。自衛隊が防衛出動する有事には当たらないが、警察や海上保安庁では対処が難しい「隙間」にあり、現実に最も起きやすいとされるケース
だ。
 1997年2月、鹿児島県・薩摩半島の西約40キロにある下甑(しもこしき)島に、中国広東省からの密航者20人が漂着した。さらに20人が山中を逃走中との情報があり、住民約4000人の島は緊張に包まれた。
 島駐在の警察官とともに、島内にある航空自衛隊レーダーサイトの隊員30人も捜索に加わった。当時を知る役場幹部は、「
警察官が3人しかおらず、自衛隊に頼むしかなかった
」と振り返る。
 だが自衛隊法では、密航者は、防衛出動や治安出動、災害派遣のいずれの対象でもない。このため隊員は「調査・研究」名目で出動した。これに対し「
自衛隊法違反だったのではないか
」などの指摘が出て政治問題化し、久間章生防衛長官(当時)は釈明に追われた。
 
グレーゾーン事態は、最近も起きている。

 2012年7月には、「台風からの避難」を理由に、東シナ海に面する長崎県・五島列島の荒川漁港が一時、106隻もの中国漁船で埋め尽くされた。「
中国による沖縄県・尖閣諸島攻略の予行演習」という見方が出ている。
 自国漁船をまず送り込み、その保護を口実に漁業監視船や海軍艦艇で取り囲み実効支配を確立していく手法は、中国の常とう手段とされる。
 
防衛省などは、自衛隊法を改正し、自衛隊がグレーゾーンにも対応できるよう法律上の根拠と、十分な武器使用権限を認められることを期待
していたが、政府見解では見送られ、警察と自衛隊の連携強化や「手続きの迅速化」といった運用改善策を検討することにとどまった。
 5月27日の与党協議で、こんな場面があった。
 「下甑島のケースでは(法的根拠があいまいなまま)自衛隊員が捜索活動にかかわった」と防衛省が現行の制度の不備を指摘すると、警察庁は「自分たちだけでも対応できた」と主張。
公明党が「今のままで十分。どこに(法整備の)隙間があるんだ」
と加勢した。
 出席した自民党メンバーの一人は、警察庁をこの日の会合に呼んだのは公明党の意向だったと指摘する。「防衛省と警察庁を同席させたら法整備の必要性について足並みの乱れが露呈するのは分かっていたから嫌だった」と振り返る。
 グレーゾーン事態への対処として
自衛隊の権限を強化することは、治安維持を担当する警察には権限縮小につながり、容易に受け入れられない
というわけだ。

自衛隊と警察 調整困難
 7月3日、自民党大島派の勉強会で、法整備が見送られたことが話題となった。
 与党協議の座長を務めた高村正彦自民党副総裁は、「これは、
軍と警察の100年戦争だ。今回の整理で50年ぐらいに縮まったが、これ以上突っ込んだら大変なことになる
」と語り、両者の調整が困難であることを率直に認めた。
 自民党幹部は、「
役所の縄張り意識で法整備が後手に回るなら、『役所栄えて国滅びる』だ
」と憤った。
 安全保障政策が専門の福田潤一・世界平和研究所研究員は、こう指摘する。
 「与党協議では集団的自衛権が主で、グレーゾーンは前座になったことに違和感を感じた。集団的自衛権への取り組みは評価できるが、
いま喫緊の課題は、グレーゾーン事態にどう対処するか
のはずだ」

-------------------------------
【自衛隊法】 自衛隊の「任務、組織および編成、行動および権限」(1条)を定めた法律で、自衛隊は同法に明記された活動以外行うことができない。
 具体的な活動は、〈1〉日本への武力攻撃が発生した時の防衛出動(76条)〈2〉間接侵略など警察では対応出来ない際に首相が命じる治安出動(78条)〈3〉海上で治安維持にあたる海上警備行動(82条)〈4〉飛来する弾道ミサイルへの対応である破壊措置(82条の3)〈5〉災害救助にあたる災害派遣(83条)――など。
 防衛出動では他国からの武力攻撃に戦車や戦闘機で応戦する「武力の行使」が可能だが、それ以外の活動での武器使用は原則として正当防衛に限られるなど厳しい制限がある。



 [憲法考]「一国平和主義」から脱却…佐藤正久 自民党国防部会長代理 : 読売プレミアム
 [憲法考]転換 安保法制<2>日米協力 自由度増す : 読売プレミアム
 [憲法考]転換 安保法制<3>国際貢献の「常識」へ一歩 : 読売プレミアム

 余談ですが、「一国平和主義」からの脱却の佐藤氏の説明は、今の時代に日本が一国で平和維持をすることの現状の国際情勢からかけ離れていて、国際連携の必要性を説き、集団的自衛権行使の有効性を説こうとしている熱意が伝わり、シンプルな解りやすいものでした。

 下甑島のケースでは、警察庁は「自分たちだけでも対応できた」と主張していたのだそうですね。
 勿論、警察で対処できるに越したことはないのですが、20名とも40名とも見込まれた侵入者に対して3名の警官。侵入者の正体にかかわらず、対処は困難でしょう。離島へ鹿児島から機動隊が到着する仕組みはどこまで出来ていたのか、なにをもって警察庁が対処できたと言っているのかは、遊爺には情報不足で判りません。
 急患輸送等、自衛隊への依存度が高い離島の住民からは、「何故悪い」との声があったのも当然ですし、島に駐屯する航空自衛隊第9警戒群の隊員が、島民を護る為に捜索に加勢したのは法の不備の足枷と、国土と住民を護る大きな義務との葛藤の末の緊急行為だったと容易に推察されます。
 
東シナ海の小さな島の大きな事件 / 水島朝穂のホームページ 1997/11/03

 国境の島・与那国でも、警官の2丁の拳銃で国境警備が行われている実態は有名な話ですね。自衛隊のレーダー基地が建設され部隊が駐屯することになりますが、同様の足枷のグレーゾーンが存在します。
 前線の現場の警察官も自衛官も、緊急事態の突発時に苦悩することになるものを事前に調整し法整備をしようというのは、島民にとっても国民にとっても緊急を要する要望事項です。
 原発事故は、想定出来ていて対処出来ていた女川と、対処を先送りした東電・福島との差がでましたね。
 東シナ海の中国の侵略行為は、現実に始まっていて、離島が危機にさらされているのです。想定できるとかできないとかのレベルではありません。

 「役所の縄張り意識で法整備が後手に回るなら、『役所栄えて国滅びる』だ」との記事の声は当然の話です。
 警察も自衛隊も、前線の現場が苦悩する問題で、しかも国家の安全保障にかかわるグレーゾーンの問題を、縄張り争いで放置してよいはずがありません。
 警察権で護るのが優先であることは当然ですが、不備な警察権の盲点を突く離島への侵略行為を、警察権だけで護れない状況に環境が変化したのですから、その境目のグレーゾーンへの対処を構築するのは、警察にとっても、自衛隊にとっても優先課題であり、むしろ積極的に双方が討議すべき課題です。
 
 政府・与党は、縄張り争いが手におえないと法案整備を先送りするのではなく、国民に実態を広く喧伝して、世論を背景に縄張り争いを収集し、国と国民を護るもっとも重要な仕事を推進すべきです。
 日本は韓国の様な国であってはなりません!原発の想定外の言い訳も、国民は許しません。まして、グレーゾーンの課題は、想定ではなく現実に侵略が開始されている喫緊の課題なのですから。



 # 冒頭の画像は、五島列島福江島の玉之浦湾に台風から避難してきた中国漁船






  カイノキの紅葉


↓よろしかったら、お願いします。






Fotolia


日本は国境を守れるか (プレイブックス・インテリジェンス)




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 7月7日(月)のつぶやき | トップ | 日豪首脳会談 両国関係強化... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

日本を護ろう」カテゴリの最新記事