夢の中で、空爆で破壊された町を歩いていました。
建物という建物が崩れ、砂ぼこりで視界が真っ白です。
右側に黄色と黒のガードフェンスがありますが、金網から覗いても、瓦礫を除去する重機はひとつもないし、ひと気もありません。
シーンが飛んで、建物の中です。
わたしは、演出台に座って、芝居の稽古をはじめようとしています。
役者が20人くらいいます。
今日から立稽古の日だと伝えてあるようです。
わたしは、役者たちに言います。
「憶えてきた台詞を披露してもらっても意味がないから、そうだな、台詞をぶつぶつと唱えながら覚えようとしているような感じで、ただ歩いて通り過ぎてくれる? 四隅に5人ずつ立って。わたしが手を叩いたら、右奥のひとが歩き出す、次に手を叩いたら右手前のひと、次は左奥、左手前、一巡したら、また右奥、右手前の順で。じゃあ、行きましょうか」
役者たちが立ち上がって5人ずつ四隅に分かれた、と思ったら、
ひとりの男優がわたしの前にやってきて、「こんな稽古は意味がない。ちゃんと立ち稽古をやってくれよ!」とまくしたてる。
「意味がないかどうかは、わたしが見て判断するから、とりあえずやってみてくれますか?」と、わたしは言う。
男優は稽古場を出て行く。
と――、刃がギザギザとノコギリのようになっている大きなカマを手にして近付いてくる。
その鎌でメッタ打ちにされる。
肉が切れ、血が噴き出す。
あぁ、死んだな、と意識が遠くなったと思ったら、こちら側の世界で目覚めた、というわけです。
何故、こんなに、悪夢ばかりを見るのか――。
シリアやウクライナで起きている戦争は、朝鮮戦争の記憶と直結するんですね。
わたしは、まだ生まれていなかった――。
けれど、慶尚南道密陽で生まれ育った祖父母や母親は、家の前の南川橋の欄干に、パルチザンの青年たちの首が串刺しにされていたのを見ているのです。
祖父の弟は、釜山の慶南第一商業高校の校庭を走っている時に脚を狙撃されて連行され、生きて帰ってはこなかったのです。
朝鮮戦争で、米軍によって投下された爆弾は平壌だけで42万8900発、後期にはナパーム弾も使用され、もう標的にするものが何も残っていない、というほどの焼野原になりました。
戦場となっているシリアやウクライナの町は、わたしにとっては遠くありません。
戦火は、わたしの内に燻っているのです。
建物という建物が崩れ、砂ぼこりで視界が真っ白です。
右側に黄色と黒のガードフェンスがありますが、金網から覗いても、瓦礫を除去する重機はひとつもないし、ひと気もありません。
シーンが飛んで、建物の中です。
わたしは、演出台に座って、芝居の稽古をはじめようとしています。
役者が20人くらいいます。
今日から立稽古の日だと伝えてあるようです。
わたしは、役者たちに言います。
「憶えてきた台詞を披露してもらっても意味がないから、そうだな、台詞をぶつぶつと唱えながら覚えようとしているような感じで、ただ歩いて通り過ぎてくれる? 四隅に5人ずつ立って。わたしが手を叩いたら、右奥のひとが歩き出す、次に手を叩いたら右手前のひと、次は左奥、左手前、一巡したら、また右奥、右手前の順で。じゃあ、行きましょうか」
役者たちが立ち上がって5人ずつ四隅に分かれた、と思ったら、
ひとりの男優がわたしの前にやってきて、「こんな稽古は意味がない。ちゃんと立ち稽古をやってくれよ!」とまくしたてる。
「意味がないかどうかは、わたしが見て判断するから、とりあえずやってみてくれますか?」と、わたしは言う。
男優は稽古場を出て行く。
と――、刃がギザギザとノコギリのようになっている大きなカマを手にして近付いてくる。
その鎌でメッタ打ちにされる。
肉が切れ、血が噴き出す。
あぁ、死んだな、と意識が遠くなったと思ったら、こちら側の世界で目覚めた、というわけです。
何故、こんなに、悪夢ばかりを見るのか――。
シリアやウクライナで起きている戦争は、朝鮮戦争の記憶と直結するんですね。
わたしは、まだ生まれていなかった――。
けれど、慶尚南道密陽で生まれ育った祖父母や母親は、家の前の南川橋の欄干に、パルチザンの青年たちの首が串刺しにされていたのを見ているのです。
祖父の弟は、釜山の慶南第一商業高校の校庭を走っている時に脚を狙撃されて連行され、生きて帰ってはこなかったのです。
朝鮮戦争で、米軍によって投下された爆弾は平壌だけで42万8900発、後期にはナパーム弾も使用され、もう標的にするものが何も残っていない、というほどの焼野原になりました。
戦場となっているシリアやウクライナの町は、わたしにとっては遠くありません。
戦火は、わたしの内に燻っているのです。