柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

離乳食

2023年04月16日 17時27分00秒 | 日記
とにかく、固形のものはどんなに小さくても食べられないんです。

全く噛めないから。

固めのゼリーもダメですね。

舌で潰せるやわらかいもののみ。

自宅で食事する時は、なんでもブレンダーとマッシャーで潰して食べているし、面倒臭い時はレトルトの流動食で済ませています。
みんなで外食する時は、わたしだけ飲食可のテーブルがある公共施設で降ろしてもらって、ひとりで瓶詰めの離乳食を赤ちゃん用のシリコンスプーンでゆっくりゆっくり食べます。

量は少ないけど、カロリーは高いから、そんなに痩せてはいませんよ。

6月半ば頃には、離乳食から卒業できるかな……

あ、あと、口の中も麻痺しているので、熱いものが食べられない。

コーヒー、紅茶、緑茶もホットは危険だから、飲めない。

口の中の縫い傷がけっこう大きいので、怖いしね。






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退院

2023年04月08日 16時43分00秒 | 日記
退院しました。

病院から自宅へと向かう道すがら、
自分の閉所恐怖症、高所恐怖症、パニック障害が高じてしまっていることに気づきました。

エレベーター、怖い。特に、人が何人か乗っていると、狭くて、怖くて、窒息しそうになる。

下りエスカレーター、頭から下に真っ逆さまに落下しそうで、蹲って顔を両手で覆うか、手すりベルトを両手で握りしめ額を手すりベルトに押し付けないと、恐怖に耐えることができない。

タクシー、車、息が苦しくなり、ドアハンドルに手をかけている自分に気付き、走行中の車から飛び降りたら死んでしまう、と窓を全開にしてもらう。

マスク、アイマスク、イヤホンをすると、過呼吸になりそうになる。

という精神状態なので、当分、映画館、劇場、ライブ会場、展覧会場には行けないし、車、エレベーター、エスカレーターには乗れないな。

まず、体から緊張感(危機感)を抜いて、深呼吸をして、自分を落ち着かせないといけない、ということはわかっていても、今やどこにパニック発作につながるヤバいスイッチがあるかわからないから、常に緊張状態にある。

流動食(離乳食でも可)は6月半ばぐらいまでは続くわけだし、うまく発語できない状態も続く。

長い目で見て、焦らないことが肝心だ。

入院中にずっと気になっていた小高川沿の桜並木を歩いた。

すっかり葉桜になってしまっていた。

手術と入院で、満開の桜は見逃してしまったけれど、道には花びらが敷き詰められていた。

小高川のあちこちに花筏ができていた。

ああ、きれいだな、と思った。

きれいなものに触れること、小説を書くことで、精神と心の方から少しずつ治癒に導いていこうと思う。

入院中にいただいた、みなさまの温かいお心遣いと励ましのお言葉に心より感謝いたします。

ありがとうございました。










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うつらうつら

2023年04月04日 17時41分02秒 | 日記
写真は、病室の壁に貼ってある注意書きです。
基本、ベッドの上にいます。
電動ベッドなので、頭を立てたり下げたり、高さを上げたり下げたりして、ベッドの上で暮らしています。

ときどき、うつらうつらすると、夢をみます。

ーー夕暮れの埠頭の海水の中に息子(14、5歳)と二人で首まで浸かっている。
日没の太陽は見えず、海面は重油のように黒くてらてら光っている。

「あッ! いま、足んとこに魚がいたッ! 手づかみで獲っていい?」わたしは息子に訊ねるが、息子からの返事は無い。

と、わたしたちの隣に大きなマグロみたいな魚が浮かび上がる。
泳いではいない。
尾鰭を動かしてるから、生きてはいる。

「これ、二人で陸にあげて、漁師さんに買ってもらおうよ」
とわたしが言い、わたしは頭の方を、息子は尾っぽの方を持って、二人で魚を埠頭の上まで引き摺りあげる。

コンクリートの上の魚をよく見ると、体には熊みたいな焦げ茶の毛が生えていて、顔は人間の男ーー、両目を閉じて苦しそうに口を開けている。

漁師がやってきて、その顔にかがみ込む。
「この魚には金は出せないな。水を飲ませた方がいい。元気になれば、切り身に出来っから。切り身にすりゃあ元の形は誰にもわからない。買ってやるよ。水、水を飲ませてやってな」と、漁師は元来た道を去っていく。

わたしと息子は、もうほとんど陽が残っていない埠頭を見渡し、水道を探すが、無いーー。

ここで、目覚めました。

他にもいくつか、千切れ雲みたいに流れてきては消える映像の断片を見たけど、もはや、思い出せない。


































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今日は、ダメでした。

2023年04月04日 04時03分00秒 | 日記
昨日は眠れたんですが、
今日は眠れませんでした。

午前1時に眠って、2時間後の3時に目覚めて、それっきり……

とにかく唾液と痰が気になって、上半身を起こしては、痰を吐いたり、唾液をのみ込むためにストローで水を吸い上げたりーー。

まぁ、大きな手術でしたからね。

2ヶ月は顔が麻痺したままだし、普通食は食べられません。

不眠は、10代半ばからずっとだし……

仕方ない仕方ない。






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鮮やかな夢

2023年04月03日 07時00分00秒 | 日記
28日に手術を受けてから、痛みと苦しみを耐えることに全ての力(精神・肉体・心)を使い果たし、
「わたし」は極度の緊張状態でした。
睡眠薬をいつもの倍量飲んでも眠りに至ることは出来ませんでした。

ところが、昨夜は、零時から(午前3時に一度だけ目覚め、トイレに行きましたが)6時まで眠ることが出来ました。

1週間ぶりに夢をみました。
とても鮮やかだったので、ご紹介します。

久しぶりに小高の家に帰ると、薄暗い部屋に黒い塊が20ぐらい蹲っている。
家の中なのに、波打ち際に打ち上げられた魚みたいな感じで転がっている。
足元に動物の糞尿が散らばっていることから、あぁ、野良猫が入り込んでしまったのだな、と思う。
その塊は、寝ているのか、死んでいるのか、全く動かない。
足元の塊に手を伸ばした瞬間、噛まれた。
アシカのようにも見えたし、カワウソのようにも、イタチのようにも見えた。
わたしはその動物の生死を確認してから袋に入れていき、糞尿を片付けていった。

すっかりきれいになった部屋のことを、フルハウスの村上副店長に報告し、「あそこの部屋は、フルハウスの倉庫にしてもいいよ。棚を作れば、日販さんの段ボールとか本のカバーとか包装紙なんかの資材も並べられる」と提案すると、余計なことを言われたという感じで、「そりゃそうでしょ」とそっぽを向かれる。

場面が飛んで、釜山のような坂の多い町。
小さな飲食店がひしめき合う曲がりくねった路地を下ると、突き当たりに昔の八百屋のようなつくりの店があり、そこがわたしの家のようだ。
近所で、何人かのお年寄りが亡くなったということで、どの家の前にも弔問客への振る舞いの準備のための白菜(キムチ用か?)が届いている。
家(八百屋)に入ると、上り框にクリーニング屋の収集袋のような大きな青い袋が2つ置いてあって、
中には洗濯済の濡れた服がぎっしり詰め込まれている。
母が、溜まった洗濯物を持っていって、洗ってきてくれたのだな、葬儀の邪魔にならないようにどこかに干さなきゃ、と思う。

場面が飛ぶ。
いいお天気。
わたしはフルハウスのテーブルに座って、外の通りを眺めている。
車道の向こう側を、カフェスタッフのさっちゃんの親友のなっちゃんが、
よちよち歩きの男の子の手を引いて歩いている。
なっちゃんは、もう一つの手にジョウロを持っていて、沿道に設置された植木鉢のお花に水をあげている。
美しい声で歌うようにフルハウスのメニューを口ずさんでいる。
その声は、ガラス越しのはずなのに、耳もとではっきりと聴こえる。
とても心地良い。

ふと、天井を見ると、カフェスペースを増築する前の入り口だった場所にスズメの巣が斜めに垂れ下がっている。
孵化したばかりの雛が5羽……親鳥の姿は見当たらない……外に逃げてしまったのか? 中に入れないのか?
雛たちは落下してしまう危険が高いし、脚立で巣の位置をなおしたとしても、親鳥が餌を運ばなければ餓死してしまう。
なんとかしなければ……

その後、わたしは見晴らしのいい丘のくねくね道を下りていくんですが、
スズメの巣をどこに避難させたのかは、覚えていません。


でも、今朝目覚めて、夢の働きによって、「わたし」がリラックスし、息を吹き返したのを感じました。

夢って、すごい。


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不眠の続報

2023年04月02日 16時23分00秒 | 日記
昨夜は、零時過ぎまで粘って起きてて、睡眠薬を2錠服用しました(顔下半分が麻痺しているので、錠剤をのみこめない。結局、口内でとけてしまい、水で流し込みました)
1時間後に、唾液をのみこめず自分の唾液でゴボゴボと溺れそうになるから睡眠どころじゃないんだと気づき、ベッドの頭部を18度ぐらいまで立てて(水平にしないで寝る)もうですね、1時間おきに痰を吐いて、水を飲むという決まりにしました

そしたら、断続的にではあるけれど、5時くらいまで眠れました。

今日の朝ごはんの流動食メニュー

ぎせい豆腐
茶福豆
味噌汁
おかゆ(ミキサーでペースト状に)
ヨーグルト



温泉卵が付いてて、お、久しぶりの卵だ!と喜んだんですが、食べられないんですよ。
卵を、おかゆの上にちよっとずつ移してね、プラスティックのスプーンでおかゆと混ぜ潰して口の中に入れようとするんだけど、どうしても固まりになっちゃうんです。ごっくんできないんですよ、固まりだと……

なんだか、食べることに疲れてきました。

昼ごはんの流動食は、半分ぐらいしか食べられなかった。

晩ごはんは、どうなるんだろうか……

できたらパスしたいけど、錠剤を胃に入れなきゃいかんから、な……

食べるのが、こんなにも疲れるだなんて……
               


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たいへん、です、ね。

2023年04月01日 21時21分00秒 | 日記
今日の晩ごはんの流動食メニュー

真鯛の野菜あんかけ
切干大根の炒め煮
フルーツ盛り合わせ
お吸い物


おかゆは、今朝まで全粥だったんですが、傷口に米粒が入りそうで怖くて口に入れられなかったので、ミキサーにかけて液状にしていただきました。

まだ顔下半分が痺れて、感覚が戻らないんですよね。

しゃべるのが難しい。

歯ミガキもできない。
口の中の腫れと縫い目に触れないように、前歯をこしょこしょっとみがき、消毒液を口に含み、顔を左右に倒す程度ですね。

いやぁ、大変ですね。

これからも、たいへん。

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覚醒

2023年04月01日 03時50分00秒 | 日記
3時ぴったりに目覚め、目覚めた空気がピリピリし、顔全体も痛みでピリピリしているので、電気をつけてわたしが通っているカトリック原町教会の幸田和生司教のブログを読んだ。

 今日のラザロの物語で最も印象的なのは「イエスは涙を流された」というところではないでしょうか。イエスはこの後、ラザロをよみがえらされるのですから、泣く必要はないとも言えるでしょう。でもイエスは涙を流したと伝えられています、それは悲しんでいるマルタやマリア、周囲の人々の悲しみに対する共感の涙でしょう。「もらい泣き」と言ってもいいかもしれません。「心に憤りを覚え」という言葉が2回出てきますが、それも激しい心の動きを表す言葉です。とても人間的なイエスの姿です。
 先々週の福音ではイエスは旅に疲れ、井戸のかたわらに腰を下ろし、やってきたサマリアの女性に「水を飲ませてください」と言われました。先週の福音では、生まれつき目の見えない人に出会ったイエスは、安息日にも関わらず、彼の目を見えるようにしました。そして今日の福音では、激しく心を動かし、悲しむ人とともに涙を流すのです。
 この人間的な弱さや苦しみ、痛み、そしてそこにある共感compassion。この共感の中にこそ、本当のいのちがある。これも復活のメッセージです。


四旬節(イエスが荒野で断食・修行した40日間にちなんだもの)は灰の水曜日(今年は2月22日)ではじまるけれど、今年は額に灰は受けられなかったし、明日の受難の主日(枝の主日)は病床で過ごすから枝を手にすることも出来ない。

もしかしたら、復活徹夜祭(聖土曜日)には退院できるかもしれない。

でも、口で聖体を拝領できない場合は、そのパンをどうすればいいのだろうか?

ミサの前に幸田司教に訊いて、聖体拝領の列に加わらなければならない。

手術直後、自力では唾ものめない痰も吐けない状態で、看護師さんに小さなスポンジで舌先を湿らせてもらった時、イエスが十字架上で絶命前に言ったとされる「渇いた」という言葉が耳に響いた。

それまでのわたしは「渇いた」という言葉の意味を知らなかった。

聖金曜日の大斎の断食も、ほとんど食べることができない中での経験というのは初めて。

飢えや痛みの中で四旬節を過ごしている信徒のみなさんと共苦したい、と思う。





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