『土井善晴の魚料理』

去年、アイドル桂子からプレゼントされた料理本を、早起きし耽読しているランヤ本部長……

「刺繍の次は、料理ですか？」

と訊ねると、

「いやね、珍しいお魚が手に入ったとき困るでしょ？さばきかたと料理方法を頭に入れとけば、なにかと便利なんだよ」

だってさ桂子……

でも、これからの時代、お料理男子は、モテるよね。

働く女性の伴侶は、お料理お掃除必須だもんね。

東さん、毎日おいしいごはん作ってくれたな。

抗癌剤と放射線治療を受けながら、病室で料理番組を見ては、レシピをメモしてた、東さん……

この季節は栗が旬だから、よく栗と手羽元を甘辛く炒めた凝った料理を出してくれた。

あれ、もう一度、食べたいな。

ありんこ vs みりんこ

１週間ほど前から、２階寝室の窓から蟻が侵入し、行列をつくってる。
行列は、ベッドの上までつづき、寝てると、顔や腕をうろちょろしたり、髪のなかに分け入ったり……

最初は、そのたび起き上がって蟻たちを払ったり潰したりしてたけど、つぎつぎつぎつぎやってくるから、疲れちゃった、慣れちゃった。

10代20代で経験した野宿や、30代40代で経験した登山で(虫にたかられることを)たっぷりと鍛えられたしね。

でも、ときどきふっと、わたし、ほんとうはもう死んじゃってて、死体が腐ってて、蟻にたかられてるんじゃないかって、怖くなる。

生死の境は、わたしたちが信じてるほどくっきりとしたラインではなく、曖昧で脆いものだからね……