先ずこれは、柳美里の原稿ではなく、時事通信の記者によるインタヴュー記事です。
わたしが記者の前で語ったことの全てが掲載されているわけではありません。
「小学校低学年のとき、同級生に『お前の家に投票用紙はないだろう』といじめられたことがあって」
という記事中の言葉に対して、
「そんな小学校低学年の子どもなんているはずがない」
「在日の被害妄想」
「やはり朝鮮人は嘘つき」
などのさらなる誹謗中傷が沸き起こっていますが、
インタヴュー中、わたしはこのような言葉を続けています。
「やはり小学生の時に『国勢調査におまえんちは入らないだろ。おまえはナントカ人だからな(『朝鮮人』と言ったら教師に怒られるので、クラスメイトたちは『朝鮮人』という言葉をNGワードとして避けた)とも言われました。わたし自身、投票や国勢調査の仕組みをよく知らなかったので、同じ歳の子どもから『投票用紙』『国勢調査』なんて言葉が出てくるはずがない、と思いました。親だな。家庭で父親と母親がしゃべっている会話を聞いた子どもがそれをそのままわたしにぶつけているんだな、と……」
それからというもの、わたしは、保護者たちが小学校に集まる授業参観や運動会や学芸会に恐怖をおぼえるようになりました。
わたしは、小学校の担任にも、「おまえは日本語をしゃべれるのか?」などの質問をぶつけられ、驚きのあまり何も言葉を返せなかったことがあります。
小学校低学年の時は、「バイ菌」というあだ名で呼ばれていました。「バイ菌がよそうとバイ菌が感染る。汚くて食べられない」とクラスメイト全員が給食を食べることをボイコットしたため(派手に嘔吐する仕草をして笑いをとる男子もいた)担任教師が困り果て、クラスで(おそらく学校中で)一人だけわたしは給食当番から外されました。
記事の枠(文字量)の関係と、選挙の話題からは逸れるので省かれましたが、教師や保護者の差別意識が校内のイジメに関与(加担)しているケースは、現在でもある、と思います。
SNS内で大人たちが安易に用いている憎悪にまみれた差別や排除や誹謗中傷の言葉を、子どもたちがよくわからないままコピーして学校という社会で使う可能性は高い。
あなたは、匿名という仮面で顔を覆っているからといって、その指で打った言葉に対する責任から免れるというわけではありません。
あなたは顔を持ち、あなたがSNSで発した言葉が向かう先にも、顔がある。そのことを自覚した上で慎重に言葉を選ぶべきです。
Twitterにあふれるヘイトまみれの言葉に、あなた方の子どもたちも曝されているのです。