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ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

Ja, genau!

2005-07-30 15:34:49 | 留学準備
朝、かわしまくんと駅で別れ、僕は青山の東京ドイツ文化センターへ。

九時半からセンター内のゲーテ・インスティチュートでドイツ語講座。
受講しているのは、初歩の中の初歩のVorkursというクラス。夏季集中講座で毎週土曜日に開講される。男女比は4:1くらい。事前にテキストを完璧に予習していったのだが、その必要はなかったみたい。きわめてアットホームな講義であった。ただし日本語は一切なし、ドイツ人講師はドイツ語とジェスチャーでテキストの内容を説明する。話している文章はわからないものも多いが、ニュアンスや表情で判断しながら講義は進む。ドイツ語って発音がシャープで心地よいなあ。今日の内容は挨拶と簡単な自己紹介のやり方。決まった表現を復唱して応用するだけで、難しい文法事項は一切出てこない。辞書さえ持ってきていない人が多いような、そんな講座である。Guten Morgenに始まり、Gute Nachtに終わる一連の挨拶を習った後は、自分の名前を言う練習。「あなたの名前は何ですか?」「私の名前は・・・です」という会話のキャッチボールを、16人で輪になって実際にキャッチボールをしながら練習。その後「え、ごめんなさい。もう一回言ってもらえますか?」という表現を習ってから、教室内を歩き回って出会った人の名前を聞く練習。相手に名前をきちんと覚えてもらえたら「Ja genau!(そう、その通り!)」。次は写真を指差しながら自分の家族を紹介する練習。名詞の性に対応して冠詞が変化する以外は、これも簡単な例文。MhmとかAh,mhmとかAhaとか相槌を入れると良いらしい。ここで一旦休憩をはさみ、後半は数の数え方からスタート。家族の呼び方もそうであるが、つづりを見なければ、発音自体は英語に似ているものも多い。神経衰弱や足し算引き算のゲームをしながら、とにかく何度も数字を口に出して読むことで体に覚えさせていく。最後に今日習った表現(挨拶、名前を言う、年齢を言う)を使って、グループごとに短い寸劇を作る課題がでる。僕が書いた脚本はこんな感じ。

(リョウコがヨウスケたちのそばをたまたま通りかかる。)
ヨウスケ 「やあ、こんにちわ」
リョウコ 「こんにちわ、ヨウスケ」
ヨウスケ 「これは僕の妹のアキだよ。彼女は17歳なんだ」
リョウコ 「こんにちわ、アキさん」 (やさしく微笑みかけながら)
アキ 「こんにちわ、・・・こちらはどなた?」 (と言ってヨウスケを見る)
リョウコ 「私の名前はリョウコよ」
ヨウスケ 「彼女は僕の友達のリョウコ。20歳だよ」
アキ 「こんにちわ。リョウコさん」
リョウコ 「こんにちわ」
(リョウコ 腕時計をちらりと見て、急いでいたことを思い出す。)
リョウコ「ごめんなさい(もう行かなくちゃ)。バイバイ!」
ヨウスケ、アキ「バイバイ!」

休憩時間に話していて驚いたのだが、リョウコさんも十月からミュンヘン大学に留学するらしい(僕はミュンヘン工科大学)。僕と同じ修士一年生で、第二外国語がフランス語だったところまで同じである。ドイツ語は苦戦しているようだが、社交的で生活力のありそうなイケイケのお姉さんなのできっと大丈夫だろう。

同じ講座に出ていた家具デザイナーの人と帰りの電車で一緒になる。今は家具の道に進んでいるが、もともとは、僕もよく知っている大学の建築学科の有名な研究室出身らしい。意外に共通点が多くて話が弾んだ。大学時代の彼女は世界をまたにかけるバックパッカーだったらしいが、ドイツはあまり行く機会がなかったので、ワーキングホリデーでドイツへ行ってデッサウのバウハウスを訪ねてみたいそうだ。ドイツに行きたい、という同じ志を持った人たちと話すと元気が沸いてくる。
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Ich moechte die Beine strecken. (足を伸ばしたいのですが)

2005-07-29 17:16:20 | 留学準備
今日もNOVAに・・・(以下、省略)。

ミュンヘン工科大学の入学許可証が届いたとの連絡を受け、研究室へ。
TUMのロゴが入った紙を一枚手渡される。たまたままつむらせんせいがいらっしゃったので、渡航日程のことについて相談。できれば早めに現地入りしたかったのだが、事務手続きの関係で、現地に着くのは10月1日“以降”にしなければならないらしい。ちなみに同様の理由で3月31日”以前”に帰国しなければならないらしい。「六ヶ月もいけるんだから、ぜいたく言わないで☆」確かにその通りである。

二時から環境系院生室でDECo会。
前々回くらいから話に出ていた「明日にでもできそうな、なにか面白いこと」について相談。どうせならなにかコンペやイベントに出品するようなものにしようということになる。締め切りや発表の場が与えられていた方がモチベーションも上がるはず。いくつか候補が挙がる。また、次回以降も読書会は基本的活動として継続していくことを確認し、課題図書を決めて今日は終了。

今、午後五時。
これから泊まりがけでコンペの敵情視察に行ってきます。敵は巨大だけど、かならず弱点を見つけてやる。
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Bitte tanken Sie voll ! (ガソリンを満タンに入れてください!)

2005-07-29 02:47:09 | 留学準備
今日もNOVAに行かず。

昨晩から引き続き、夜を徹してコンペミーティング。
時間をかけてスタディをしたわりには進歩がなかった。第一案とは異なる壁にぶつかり、第二案にも行き詰まりを感じる。それぞれの案が相互補完的に結びつけばいいのではないかというアイデアも、共同設計者を納得させるまでには至れず。今晩考えたアプローチには可能性がないという結論を得て、徒労感だけを背負って明け方家路につく。

知らぬ間に眠ってしまい、正午すぎに目が覚めた。
不覚にも寝過ごしてしまったおかげで、久しぶりに気持ちのよい目覚めを得る。今日は、コンペにかまけて忘れていたもろもろのやるべきことを少しずつ片付けたい。

銀行窓口でインターナショナルキャッシュカード発行の手続き。
現地のATMでも貯金が引き出せる口座を新たに開設。日本の都市銀行に日本円で預けておいても、外国の提携ATMで現地通貨として引き出せる仕組み。便利である。しかし「預金口座」という扱いであるために、この口座で奨学金等の振込みを受けることはできないのだという。つまり、奨学金や大学からの留学給付金は今までどおり「普通口座」に振り込んでもらい、それを一旦引き出して、もう一度この「預金口座」に預け入れしなければならないのである。先輩の話を聞くと、このリレー作業は日本にいる親にやってもらうしかないようだ。さらに、宿舎の家賃は現地の指定銀行の口座からしか引き落としされないため、僕はミュンヘンの銀行にも口座を開かなくてはならない。給付金として得たお金が家賃として引き落とされるまでに必要な工程を想像すると気が遠くなる。引き出しと預け入れの繰り返しなので、手数料で目減りすることはないと思うが…。

続いて、立原道造記念館に資料のことについて相談しに行く。
鈴木研でもらった招待券を使って入館。展示はタイミングよく立原の書簡に関するもので、先日全集の活字で目にした文面が立原自身の肉筆で展示されていた。文字のレイアウトもさることながら、便箋の紙質や封筒の手触りにも心を配っていたことがよくわかる。疎遠になりかけている友達に必死に呼びかけた「なぜ手紙をくれないのですか」「少し心配でたくさんさびしいです」「逢いたいな!」といった言葉には、活字でないだけによりいっそう迫ってくるものがあった。帰り際、事務室の学芸員さんに声をかけて資料のことについて相談をする。僕の地元群馬県の高崎市で、来月頭からブルーノ・タウトの工芸作品の展覧会が行われる。タウトは日本滞在中、高崎市の達磨寺にある洗心亭という離れに住んでいたので、そこを会場にして行われる回顧展である。その企画をしている作家さんが僕の知り合いで、たまたま立原研究会のことをメールで話したりしているうちに、その方が立原の「タウト・ノート」(タウトが東京大学で連続講演したときに立原が書いた記録ノート)に興味を持ったのであった。すずきせんせいに相談したところ、記念館の許可があればノートのコピーを渡してもよいという返事をもらったので、さっそく来てみたのである。しかし「現場では判断できないので、簡単な文面でよいので文書で請求してほしい」とのこと。明日もう一度行くことにしたが、二度手間になってしまった。残念。

大学の事務室で留学届けの書式をもらう。
今年度からAUSMIPの管轄が変わるため、去年までの書き方とは多少異なる。事務の方も対応に苦慮しているようだが、細かく書き方をアドバイスしてくれた。学生証を落としたときや、奨学金の相談に乗ってもらったり、いつも何かとお世話になってきた事務さんなので、僕が事務室に入るなり「お、こみやまくんが来た(待ってたよ。今日はどうしたの?)」みたいな感じできさくに話しかけてきてくれるのがちょっとうれしはずかし。研究室のことや留学のことなどを少々雑談。

夕方からコンペのミーティング。
昨晩同様、二人の考え方のズレが埋まらない。自分の主張に凝り固まっていて、納得できない相手の主張には生返事で答えるしかないという状態がつづく。計画案は右往左往するばかり。しかし、お互い疲れ果てたときにかわしまくんが口にした某有名建築が、僕らの考え方に共通の突破口を指し示してくれた。「ああいうのがいいと思うんだ。たとえばこういうところが。だから俺はそう考える」「それって昨日僕が言ってたのとどう違うの?同じじゃない?」「お前が言ってたのはそういうことだったの?それだったら俺も同じ」二人は大きく回って実は同じ場所に行き着いていたのかもしれない。某有名建築を媒介としてお互いの頭に浮かんだ共通項を、夢中で模型にする。僕らの目の前に現れたカタチからは、二週間考えてきたいろいろなことが、ほんのりと薫っていた。さらにその姿は、一番最初にかわしまくんがスケッチしたイメージにも、僕が最初につくったイメージ模型にも、似ているものだった。かわしまくん曰く「二人のうちのどちらからともなく出てきた」計画案。これを待っていたんだ。これで行こう。


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Wir haben einen Brief empfangen. (私たちは手紙を受け取った)

2005-07-27 18:52:29 | 留学準備
今日もNOVAに行かず(←反省のためにわざわざ書いてます)。

昼過ぎから立原道造研究会。
前回相談して決めた方針に従って、今日からは立原の落書きを整理する作業に入る。教務課から連絡があり、当時の工学部便覧を見せていただけることになった。現在の便覧の四分の一くらいの大きさのハンドブックである(ただし数年分がまとめて製本されているので分厚い)。当時開講していた科目の一覧表がB2サイズで織り込まれている。今とは違い、大学の専門課程は三年間。講義はだいたい通年で、その多くは学年とは関係なく履修できるようだ。立原が在籍していた三年間分をコピーさせてもらう。この一覧表と書簡・日記の記述をたよりに、立原が何回生でその講義を履修していたのかを特定していく。そうすればその講義ノート(=そこに描かれた落書き)がいつのものかわかるのである。立原を追体験するわけだ。たとえば工芸史概論は立原が三回生だった昭和11年度にしか開講されていないことがわかったので、ノート「工芸史概論」に書かれた落書きは昭和11年度に書かれたものである、といった具合。面倒な手数が必要だが、謎解きや推理のようで楽しい。僕の作業分担は、立原が知人に宛てた書簡の中から大学生活に関する記述を抜き出すこと。立原は毎日のように誰かに手紙を書いているので、あっという間に僕のノートは埋まっていった。試験直前に学友に宛てて出した「ノオトを写させて」という内容の手紙(立原は講義ノートを写すことを“ブランクうづめ”と呼んでいた)や、講義の課題がきっかけで仲違いしてしまった友達に宛てた詩的で長文な謝罪の手紙、などなど(ちなみに、一番多いのは詩集仲間に宛てて出した情報交換の手紙である)。全集には書簡の投函場所や宛名書きまでこと細かく記載されている。立原がいつどこでどんな気持ちでその文章を書いたのか。そのときどきの立原の息づかいまで聞こえてきそうな、まるで立原の生活そのものを見ているかのような気分。何気ない文面からも、すてきな言葉遣い・言い回しをいくつも見つけたので、記録ノートとは別に手帳にメモしたりする。本来は交わされた二人だけのものであるはずのごく私的な世界を盗み見しているという興奮と、そんなごく私的なものであっても表現者としての姿勢を崩すことのない立原への共感と。「芸術は小便のようなもの」と言ったという立原の気持ちがわかった気がした。誰のためというよりも自分自身のために、自然にわきあがってくるものを書き留めずにはいられなかったのだ。たとえそれがたった一人の友人のために書いた手紙であっても。



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Gute Nacht ! (おやすみなさい)

2005-07-27 05:15:03 | 留学準備
朝四時に帰宅。
昨夜から続いたコンペの話し合いは、おもわぬ助太刀も加わって、収穫を得て終われた。かなりの時間を費やしただけにホッとした。今まで考えてきたことが、つながりつつある感じ。まだ自分自身納得できない部分が多いけど、昨日までずっと考えてきて行き詰ってしまった案に比べれば、新しい案のほうがスタディの余地がありそうなカタチである。ただしタイトルは新しいものに変える必要があると思った。以前のものはけっこう気に入っていたのだが仕方ない。明日のスケジュールを決めて解散。寝不足になるとすべてが悲観的に見えてくるが、眠気の一線を越えると逆にすべてが楽観的に切り替わるらしい。その二段階変化を久しぶりに肌で感じた今日一日であった。

というわけでようやく眠れそう。寝不足つらい。
観ようと思って先週から借りていたDVDを、期限が来てしまったため結局観ずに返してしまった。早朝のリバティ(レンタルビデオショップ)に自転車を走らせながら、これだけが今日一日で唯一悔やまれること。おやすみなさい。
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Ich bringe dir Kaffe. (きみにコーヒーを持っていくよ)

2005-07-26 22:57:58 | 留学準備
今日もNOVAに行かず(そろそろ行きたい…)。

午前四時頃に万博から帰宅。
(万博での出来事については後日WEBページにreviewとして載せます)
帰りの道中をしっかりと後部座席で寝させてもらった(東名高速の往復を一人で運転してくれた友達の超人的頑張りにホント感謝感謝…)はずが、疲れはまだ残っている。汗だくだった体にシャワーを浴びて、カバンを整理してから、崩れるように少し眠る。

朝八時からかわしまくんとコンペのミーティング。
三日間のブランクゆえか、疲れて眠いせいか、二人の考えていることがまったくシンクロしないように思える。言いたいことが伝わらない、言ってることがよくわからない。言いたいことの本質からずれているのに、僕はさっきからいったいなにをこんなに必死になって説明しようとしているのだろう?気がつけば夕方になっていた。カタチらしきものはできたが、それのどこが良いのか自分たちでもわからない。僕らはどこで道を踏み外したのだ?もう一度二人でスタディ帳を読み返す。

五時から一号館前広場コンペの公開審査を二人で聴きに行く。
選ばれた五組がプレゼンテーションを行う。建築系、土木系、都市計画系、それぞれのミックス、と各チームの構成はさまざま。提案内容は五者五様で「(なるほどこういう勝負の仕方もあるのか)」。決選投票の末、自分たちの勝負のしどころをうまくわきまえていたチームが優勝したように思えた。そのチームには僕の研究室の先輩も参加していた。院生室でその先輩を囲んでミーティングしている様子をたまに見かけたし、その先輩が立面図の樹木を鉛筆で一生懸命書き込んでいる姿もよく見かけた。審査後の表彰式。大きな身振りで喜びを表現するチームリーダーの横で、やさしくただニッコリとしているその先輩のたたずまいが印象に残った。

六時からひきつづきコンペのスタディ。
眠気と戦いつつ模型を組み立てる。かわしまくんが途中一旦抜けたので、今はしばしパソコンに向かって休憩中。かわしまくんが戻ってきたら、これからまた朝まで二人で集中してやります。


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Gute Reise ! (よいご旅行を!)

2005-07-23 15:57:15 | 留学準備
週末を利用して友達とレンタカーで愛知万博に行ってきます。
帰ったら詳しく報告いたします。
それではもうすぐ集合時間なので!
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eine lebhafte Diskussion (活発な議論)

2005-07-23 06:22:51 | 留学準備
今日もNOVAに行かず。

十時から駒場の生研でDECo会。
DECoの今後のあり方を定めるための話し合いを行う。会の根幹に立ち返るために、メンバーそれぞれがいかなる動機でDECoに参加したのかをあらためて表明しあった。僕はそもそもどんな会なのかもよくわからないうちにかわしまくんに誘われるままDECo立ち上げに参加した。もちろん、環境という視点から建築デザインをスタートすることについても自分なりの考えがあって参加しているが、それ以上に、“学生自身が立ち上げた”このような組織を使って実際に何ができるのか・これからこの組織はどうなっていくのか、の方に興味の重心があったりする。

四時から三田の建築会館でSBD小委員会に参加させていただく。
「サステイナブル」という言葉があまりにも日常化/一般化した結果、それを使うのをあえて控えたくなるくらいに本来の意味を離れて陳腐化してしまっているのではないか、ゆえに新しい言葉をつくる必要があるのではないか、という議題が出る。ほとんど同じことを僕も思ったことがあったので、興味深く議論を聞く。しかしむしろそれに対する反論の方が心に響いた。「確かに言葉としてサステイナブルは陳腐化し一人歩きしているかもしれないが、だからといってそれに変わる新しい言葉をつくりだせばそれで解決という発想も陳腐である。必要なことはむしろ、サステイナブルを正しく理解するためのより深い議論と考察の喚起ではないか」

大学に戻り、夜十一時から院生室でコンペのミーティング。
後輩のたちくんが合流し、今日から三人体制による作業が始まった。昨日までのアイデアを模型にしながら、それぞれ思ったことを自由に発言しあう。二人の間でアイデアが盛り上がりすぎて脱線しそうになると、もう一人がもともとのコンセプトに引き戻すといった具合。その脱線/引き戻しの役割を交代しながら三人体制がうまく機能したのは、根本的な問題設定について三人の考えが合意に達しているのが大きい。模型を作ったり壊したりしながら、解決すべき問題点が山のように見つかったことが、間違いなく今日の収穫。次のミーティングまでに考えておく宿題を確認して、明け方日が昇る頃に、解散。徹夜は体によくないが、まとまった時間集中して考え続けることはやはり絶対に必要だと思う。
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Ich bin der gleichen Meinung wie du. (僕も君に同感です)

2005-07-22 02:55:11 | 留学準備
朝十時半からAUSMIPのガイダンス。
担当のまつむらせんせいからAUSMIPプログラム全体の概要について説明を受ける。今年度から予算の出所が変わったものの、留学条件自体には大きな変更はなかった。僕が想像していた以上に好条件で留学できるようだ。去年度のAUSMIP留学生も来てくれたので、体験談をまじえ海外留学のアドバイスをいただく。ビザのこと、生活費のこと、大学生活のこと、旅のすすめ、などなど。不安よりも期待が高まるガイダンスだった。

昼過ぎからかわしまくんとコンペのミーティング。
敷地調査からわかったことを踏まえ、僕らの提案が成立しているのかを検証する。通りかかった友達からいろいろとアドバイスをもらいながら、少しずつだが先は見えてきた。

一旦ミーティングを抜けて、四時からNOVA。
今日も新しい先生。おねえさん、高校生と一緒に三対一のレッスン。「普段僕はゾーンDでレッスンを受けていて、ゾーンEは今日で二回目なんです(だから大目に見てね)」とあらかじめ自己申告。そのせいか、先生の対応は前回よりもやさしかった(こりゃホントは禁じ手だよなあ)。今日は会話を途中で打ち切る方法について。これって日本語でも難しいけれど、確かに絶対に必要な技術である。まずは決められたフレーズを使う練習。「話を終わらせたい」「帰りたい」「行かせてくれ」と言いたい気持ちをぐっと心の中に抑え、遠まわしにニュアンスで気持ちを伝える。相手の方から自然と「どうぞ」という言葉を引き出すのがポイントである。ストレートに言いたいことを言い合うばかりがコミュニケーションではない。レッスンの最後は「通りでたまたま10年ぶりに再会した友達と、後日の約束をとりつつスムーズに別れる(なぜなら自分は歯医者に行くために急いでいるから)」というロールプレイング。僕らはあまりにもスムーズに別れすぎてしまい、先生から「いくら急いでいても、せっかく久しぶりに会ったんだからもう少し立ち話をしてから分かれたほうがいいわね」とアドバイスされてレッスンは終わり。今日もとても実用的なレッスンだった。

六時から技術と歴史研究会。
今日はふじもりせんせいの回。コンクリート技術とその表現の歴史について。「ペレより後、コルヴュジェより前」の時期に日本で展開されていたコンクリート表現技法の知られざる発達史である。レーモンド、本野精吾、丹下健三がその主役。ふじもりせんせいの言葉はどれも生き生きとしてわかりやすく、枝葉の話も含めて夢中でノートを取ってしまった。以下は夢中で書き取った言葉の一部。「コンクリートは材料固有のカタチを持たない、自分以外の誰にでも姿を変えられるアメーバのような存在」「コンクリート=泥が石になる=誰にでもできる錬金術」「林昌二は、打ち放しコンクリートは“型枠の表現に過ぎない”とし、“本野精吾のように表面を削ってこそ、コンクリートの本質的な表現が現れる”と言った」などなど。もっとも感動したのは、「丹下健三は広島のピースセンターの設計に際し、RC造をいかに木造建築のようにシャープ・繊細・上品に見せるかに尽力した。たとえば庇のつくる影を効果的に使うことで、梁せいを実際よりも細く見せた」という話。ああ、これが「デザインをする」ということなんだな。

晩飯を食べてから、院生室で再びコンペのミーティング。
カタチはころころ変わってきたが、言いたいことはだいぶ整理されてきた。二人が基本的アイデアに納得したところで今日は解散。タイトルも仮決定した。タイトルがすんなり決まるのはよい兆候。




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ein neues Verfarhren probieren (新しい手法を試す)

2005-07-20 22:13:53 | 留学準備
今日は予定が詰まっていたのでNOVAには行かず。

朝八時に現地で待ち合わせして、かわしまくんと某敷地調査。
地図を片手にぶらぶら歩いたり、「サブウェイ」で朝飯を食べながら道行く人を観察したり、展望台から見下ろしてみたり。帰りの電車の中で、二人がイメージしたことをすり合わせ戦略を練る。まだまだこれから。

昼過ぎから鈴木研の立原道造研究会。
遺された20冊強の講義ノートから立原の「落書き」を抽出する作業が終わったので、今後それをどのような方針で分類・分析・考察していくのかについて先生を交えて話し合う。ひとつひとつのスケッチが何を意味しているのかを特定するためには、時系列で並べて比較することが必要である。立原の各講義ノートが書かれた年代を特定するために、教務課に当時の時間割表もしくは立原の履修履歴(成績表)を請求することになった。電話で問い合わせると「現場の判断で開示できる資料ではないので文書で正式に請求してください」とのこと。学生で文面を考えて、助手のかとうさんに言葉じりを直してもらった。研究会の間もひっきりなしに電話やら来客やらがあって、研究室にはベルの音とノックの音が鳴り止まない。すずきせんせいは引っ張りだこで、作業室と研究室を行ったりきたりとても忙しそうだった。

六時にやまだくんと原美術館で待ち合わせ。
研究会が終わってからすぐ秋葉原に自転車を飛ばし、京浜東北線に飛び乗る。品川駅からタクシーに乗って、なんとか入場時間に間に合った。お目当ては「KRUG×KUMA」。KRUGはフランスのシャンパンメーカー。隈研吾さんがKRUGのシャンパンから想を得て設計した「世界初の、形状記憶合金でつくられた建築」が原美術館の中庭に展示されている。完全な入場予約制なのだが、やまだくんが予約をして僕を一緒に誘ってくれたのだ。順番が来るまでKRUG×KUMAのブースでメイキング映像を観る。未知の素材の扱いに悪戦苦闘する姿がプロジェクトXばりに映し出される。カーサブルータスに掲載されたような当初のイメージでは、構造体は人間の手の温度によって容易に軟化し変形可能で、手を放すと自然と元の形に戻り、触った部分の色が人肌の温度に応じて変化するというものだった。しかし自重を支えることさえ容易ではない構造体をどうやってもたせるか、温度によって変化する素材をどうやったら効果的に見せることができるか、といった問題がプロジェクトメンバーの頭を悩ませる。オーク構造設計の新谷眞人さん率いる構造設計チーム、形状記憶合金開発者チーム、それらを統合しどうしたら美しく見えるかに苦心する設計チーム。最終的にできたのは、合金のリングで構成された高さ2.2メートルの半円ドームであった。30℃付近で性質が変わる形状記憶合金でできたリング(一部普通の金属性のものもあり)が連なってドームを形成し、それを半透明な樹脂の繊維が覆う。実際に体験してみると、温度による合金の変位はわずかなものだし、自重を支えきれずにドームの頂部はつぶれていたし(やまだくんはけなげにも下の写真のように凹みを一生懸命直そうとしていた)、触っても色が変わったりはしないけれど、それは緑の庭にライトアップされて何かの結晶のようにきらきらと輝いていた。

「晩餐会で味と温度の関係に対するKRUGのこだわりを知ったとき、温度に反応して変化する建築というアイデアが生まれた」「自分のつくるものにヴィジョンは常にもっていたい。でも見る人には感じ方を強制したくない」と語る隈氏。「人―建築/人―人のコミュニケーション」という生暖かい概念を、「体温の交換(熱の移動)」という誰にでもわかる物理現象に還元するっていう発想がクールでかっこいい。目指すべき情緒的な概念や状態が、科学的にどんなアルゴリズム・メカニズムで達成されうるのか(あるいは置き換えられるのか)、それが是か非か(可か否か)も含めて、最近の僕の興味。それって建築学そのものかもしれないけど。意図的に用意できる部分と、人為的に操作できない結果的事象との間の、連続的な(もしくは非連続的な)境界面に興味がある。

ひとしきり写真を撮りまくった後、二人でそば屋に入って晩飯。お互いの大学の近況や、研究室の活動、コンペの情報、万博の話などを語り合う。彼の研究室では夏休みに直島で民家の改修をするらしい。凄腕のコンペハンターでありながら、ばりばり体を動かしてリアリティある活動もしている彼が、ちょっとうらやましい。ものが産み落とされる現場に立ち会う経験が、僕らには不足しがちな栄養素。
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