ここ数日、発表に向けて自分の卒業論文を読み返していた。恥らいつつ読んでいたのだけど、当時「終章」として書いた文章の書き出しの一節が懐かしかった。
リチャード・バックミンスター・フラー。今までも、その名前や業績について少しくらいは知っているつもりだった。でも本当の意味での彼との出会いは、講義中に紹介された、彼の数奇な生涯と発言と思想を知ってからだった。リチャードとの衝撃的な「出会い」の後、しばらく軽い酩酊状態になっていた僕は、何かに憑かれたようにチラシをつくり、製図室の自分の机の横に貼り付けた。別に何の意味も無いのだけれど、ただなんとなくフラーのすごさを他の誰かにも知ってほしかったのだ。
これが、僕の運命を変えた、そのチラシなのです。(「これ」をクリックしてね)
九時に大学に集合。コンバージョンコンペのスタディを少々。
十時からなんばせんせいの大学院講義。今日は僕ら卒論生三人が卒業論文を発表する日。フランクロイド・ライト、レンゾ・ピアノに続き、僕は三番目に発表した。

僕の卒論の第一章は、バックミンスター・フラーがノーマン・フォスターに投げかけた一言で始まる。「君は自分の建物の重量を知っているかい?」 クリマトロフィス計画を通じて継承されたフラーからフォスターへというサステイナブルデザイン史の流れを卒業論文の概要としてまず説明し、その続きとして、フォスターの弟子であるリチャード・ホールデンのスタジオで過ごした半年間のミュンヘン留学のこと、サステイナブルデザインの今後を考えるために今かわしまくんらと活動しているDECoのこと、を最後に付け加えた。先生からは「まったく何言ってんだかって感じですけれど、卒業論文で学んだことがその後の活動につながっていくっていうのは僕としてはうれしいです」と補足してもらう。この時期に自分を振り返る絶好の機会を与えてくださった先生に感謝。忙しい中、聴きにきてくれた友達にも感謝。
昼過ぎから東京電力寄附講座のセミナー。けいかくんと二人で聴きに行く。なんばせんせいによる「箱の家」のコンセプト説明に続き、かわしまくんが「箱の家」の性能測定について成果報告。設計もやりながらこうして研究も充実している彼を素直にすごいと思う。「一年前はQ値のQの字も知らなかったのですが、彼はこの一年でよく勉強したと思います」と最後にまえせんせいが誇らしげに締めくくった。
休憩時間に、合流したかわしまくんと一緒に三人で先生からインフィルコンペのエスキスを受ける。また少しブレークしそうな予感。そのあと僕は椅子で少し仮眠。
図書館で、ひさしぶりに後輩に会う。休学したと聞いたのだが、復帰したようだ。「復学したというと先生から仕事を任されてしまうので、こっそり生活してます笑」と言いつつ、卒業論文・卒業設計に向けて今から準備を進めているらしい。
夜は今日卒論発表した三人で先生に晩飯をおごってもらう。場所は山猫軒。四年生のとき、卒論発表会後の打ち上げで訪れたのもここ山猫軒だった。おのくん曰く、研究室でここを訪れるのはあの夜以来とのこと。あのときは研究室といっても僕らが最初の卒論生で、先生助手秘書さんまで含めて総勢たった6人だった。
大学に戻り三人でコンバージョンコンペのスタディ。現代のクリマトロフィスだ!
帰り道、本郷通りを歩いていてすれちがいざま「こみやまさん!」と声をかけられる。卒業設計を手伝ってもらった後輩だった。学科も全然違うし、卒計の打ち上げ以来なのに、こんな暗がりの中でもよくわかったなと感動する。「7月にはSも東京に帰ってくるんですよ」 Sさんは前にも書いたけど、僕の卒計のプレゼンが12枚中1枚だけ時間内に印刷終わらなくて「くやしい」と言って泣いてくれた人。

「君は自分の建物の重量を知っているかい?」 まだ、はじまったばかり。