弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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管理職が部下を管理できない原因が部下にある場合はどうすればいいでしょうか。

2014-08-03 | 日記


 部下に問題があるために上司が部下を管理できていない場合は,上司に任せきりにせず,組織として対応することが何よりも重要です。
 問題行動が多い部下がいることを役員等が知りながら,本腰で対策を練らずにそのまま放置した結果,問題をこじらせるケースが多くなっています。
 問題から逃げずに正面から向き合い,組織として対応すれば,余程難易度の高い事案でない限り,問題は解決に向かうという印象です。


部下を管理できない管理職を解雇することはできますか。

2014-08-03 | 日記

部下を管理できない管理職を解雇することはできますか。

 新卒採用されて管理職 に昇格した社員や,地位を特定しないで中途採用された社員については,部下を管理する能力に欠けていたとしても,平社員として最低限の勤務をする能力がない場合でない限り,解雇 することはできません。
 初めから地位を特定して管理職として中途採用した社員については降格が予定されていないため,本人の同意を得ずに降格処分を行うことはできません。
 地位特定者については,原則として,降格ではなく解雇を検討することになります。


部下を管理できない管理職を管理職から外すことはできますか。

2014-08-03 | 日記

部下を管理できない管理職を管理職から外すことはできますか。

 人事権の行使としての降格処分は,就業規則等の根拠規定がなくても会社の裁量的判断により行うことができるのが原則です。
 ただし,その裁量も無限定のものではなく,相当な理由がないのに労働者に大きな不利益を課したような場合には,人事権の濫用により無効と判断されることがあります。

 賃金減額を伴う降格処分も行うことができますが,賃金の減額を伴う場合は,降格の効力を争われるリスクが比較的高くなります。
 賃金減額の程度は,人事権の濫用の有無を判断する際に考慮され,賃金減額の程度が大きい場合は人事権の濫用と判断されやすくなります。
 降格を行う必要性と賃金減額の相当性について,説明できるようにしておく必要があります。
 可能であれば,賃金減額を伴う降格に同意する旨の書面を取ってから降格させることが望ましいところです。


部下を管理できない管理職には,どのように対処すればいいですか。

2014-08-03 | 日記

部下を管理できない管理職には,どのように対処すればいいですか。

 まずは,自分で仕事をこなす能力と,部下を管理する能力は,別の能力であることをよく理解した上で,人員の配置を行うことが重要です。
 自分で仕事をこなす能力が高い社員であっても,部下を管理する能力は低いということは,珍しくありません。

 部下を管理できない理由が,単なる経験不足によるものである場合は,部下の管理方法について指導しながら経験を積ませたり,研修を受けさせたりして教育することにより,管理職 としての育成を図れば足ります。
 当該社員が管理職としての適性がないことが原因で部下を管理できない場合は,当該社員の能力でも対応できるレベルの管理職に降格させるか,管理職から外して対応するのが原則となります。


管理職からの残業代請求対策

2014-08-03 | 日記

 管理職 については残業代 を支払っていない会社がありますが,このような会社は,残業代請求の格好のターゲットとなっています。管理監督者であれば,時間外割増賃金,休日割増賃金を支払う必要がないことから,管理職については残業代を支払わない扱いにしているものと思われますが,管理監督者≠管理職ですので,管理職であれば直ちに管理監督者として残業代を支払わなくてもいいことにはなりません。
 また,会社経営者からは,管理職が部下を管理できなくて困っている,肝心なことは会社経営者である自分が全て対応しなければならない状態だが何とかならないか,といった相談も数多く寄せられています。勤続年数が長いとか,年齢が上であるとか,営業成績がいいとか,与えられた仕事をまじめにこなすことができるといったことは,管理職としてプラスの材料ではありますが,それだけでは不十分な場合があり,本当に管理職に向いているかをよく吟味してから管理職に据える必要があります。 管理職としての適性が低い人物を管理職に据えると,部下を管理できずに周りが迷惑を被るだけでなく,本人にも不満が蓄積し,退職してしまったり,残業代請求を受けることになったりしやすくなってしまいます。
 弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)は,管理職からの残業代請求の対応,部下を管理する能力の高い管理職を育成するためのコンサルティングを数多く行ってきました。会社経営者を悩ます管理職からの残業代請求の対応,管理職育成のコンサルティングは,弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)にご相談下さい。


有期契約労働者についても試用期間を設けることができますか?

2014-08-03 | 日記

有期契約労働者についても試用期間を設けることができますか?

 民法628条は,「やむを得ない事由」があるときに契約期間中の解除を認めていますが,労契法17条1項は,使用者は,有期労働契約について,やむを得ない事由がある場合でなければ,使用者は契約期間満了までの間に労働者を解雇 できない旨規定されています。
 労契法17条1項は強行法規ですから,有期労働契約の当事者が民法628条の「やむを得ない事由」がない場合であっても契約期間満了までの間に労働者を解雇できる旨合意したり,就業規則に規定して周知させたとしても,同条項に違反するため無効となり,使用者は民法628条の「やむを得ない事由」がなければ契約期間中に解雇することができません。
 このため,例えば,契約期間1年の有期労働契約者について3か月の試用期間 を設けた場合,試用期間中であっても「やむを得ない事由」がなければ本採用拒否(解雇)できないものと考えられます。
 3か月の試用期間を設けることにより,「やむを得ない事由」の解釈がやや緩やかになる可能性はないわけではありませんが,大幅に緩やかに解釈してもらうことは期待できないものと思われます。
 したがって,有期契約労働者についても試用期間を設けることはできるものの,その法的効果は極めて限定されると考えるべきことになります。

 では,どうすればいいのかという話になりますが,有期契約労働者には試用期間を設けず,例えば,最初の契約期間を3か月に設定するなどして対処すれば足ります。
 このようなシンプルな対応ができるにもかかわらず,有期契約労働者にまで試用期間を設けるのは,あまりセンスのいいやり方とは言えないのではないでしょうか。
 正社員とは明確に区別された雇用管理を行うという観点からも,有期契約労働者にまで試用期間を設けることはお勧めしません。


有期労働契約を締結し,正社員に相応しくなれば期間満了で辞めてもらうやり方はどう思いますか?

2014-08-03 | 日記

試用期間の趣旨で有期労働契約を締結し,正社員に相応しければ正社員として登用し,正社員に相応しくなれば期間満了で辞めてもらうやり方はどう思いますか?

 正社員について,試用期間 を設けたとしても,本採用拒否(留保解約権の行使)が,解雇権濫用法理(労働契約法16条)により無効とされるリスクがあることから,最初から正社員として雇用するのではなく,まずは有期労働契約を締結して正社員と同様の職務に従事させ,労働者に問題があれば雇止めし,問題がない場合には正社員として登用することがあります。
 このようなやり方の法的効力は,どのようなものなのでしょうか?

 判例上,労働者の適性を評価・判断するための有期契約期間は,契約期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き,試用期間として取り扱われることになり,有期労働契約期間中の労働者が正社員と同じ職場で同じ職務に従事し,使用者の取扱いにも格段変わったところはなく,また,正社員登用時に労働契約書作成の手続が採られていないような場合には,原則として解約権留保付労働契約と評価され,本採用拒否(留保解約権の行使)が許される場合でない限り,労働契約を契約期間満了で終了させることができないことになります(神戸弘陵学園事件最高裁第三小法廷平成2年6月5日判決)。
 したがって,労働者の適性を評価・判断することを目的とした有期労働契約を締結した場合に,契約期間満了時に問題社員との労働契約を終了させることができるようにするためには,契約期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意を書面でしておくとともに,正社員に登用する労働者については正社員登用時に労働契約書作成の手続を確実に採っておくべきことになります。

 当初の労働契約が有期労働契約の形式を採っていた場合の方が,長期雇用に対する期待が低いことが多いせいか,正社員の本採用拒否の形式を取るよりも辞めてもらいやすく,紛争になりにくい傾向にあるようですが,他方で,こちらが働き続けて欲しいと思っていてもすぐに辞めてしまいやすいという傾向もあります。
 また,正社員として長期間勤務し続ける希望が強い応募者は,最初から正社員として採用してもらえる会社に就職する傾向が強いですから,最初の契約を有期労働契約とした場合,長期雇用を希望する正社員タイプの人材を確保する競争では不利になる面があることは否めません。
 よほど魅力の高い職場,業務内容だとか,有期労働契約とすることに特別な意味があるのであれば別ですが,通常の中小企業においては,正社員として長期間働き続けて欲しい人材を募集する場合には,最初から正社員を募集し,よく応募者を見て慎重に選考して採用した方が,いい結果が出るように思います。


試用期間満了前に本採用拒否(解雇)することはできますか?

2014-08-03 | 日記

試用期間満了前に本採用拒否(解雇)することはできますか?

 試用期間 満了前であっても,社員として不適格であることが判明し,解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合であれば,本採用拒否(解雇 )することができます。
 試用期間中に社員として不適格と判断された社員が,試用期間満了時までに社員としての適格性を有するようになることは稀ですから,使用者としては早々に見切りをつけたいところかもしれません。
 しかし,試用期間満了前に本採用拒否(解雇)することを正当化するだけの客観的に合理的な理由を立証することができるかどうかについての判断が甘いケースが目立ちますので,客観的合理性の有無については,証拠に照らして慎重に判断する必要がありますし,本採用拒否(解雇)を試用期間満了前に行うことが社会通念上相当として是認されるかどうかについてもよく検討する必要があります。
 また,試用期間中の社員の中には,少なくとも試用期間中は雇用を継続してもらえると期待している者も多く,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)には紛争を誘発しやすいという事実上の問題もあります。
 したがって,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)は慎重に行うべきであり,十分に話し合って退職届を提出してもらえるよう努力するか,試用期間満了日での本採用拒否(解雇)とすることをお勧めします。


雇用確保に貢献し,就職できない応募者にチャンスを与える意味で採用することについてどう思いますか?

2014-08-03 | 日記

採用面接時に能力が低い応募者だということが判明した場合であっても,雇用確保に貢献し,就職できない応募者にチャンスを与える意味で採用し,試用期間中の勤務状況から役に立つ人材と判断できたら本採用拒否せずに雇い続けるというやり方をどう思いますか?

 「能力が低いのは分かっていたけど,就職できなくて困っているようだし,もしかしたら会社に貢献できる点も見つかるかもしれないから,チャンスを与えるために採用してあげた。」という発想は,雇用主の責任の重さを考えると,極めて危険な考え方です。
 緩やかな基準で認められる試用期間 中の本採用拒否(解雇 )は,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解雇)に限られますから,新たに本採用拒否に値する事実が判明しない限り,本採用拒否はおそらく無効と判断されることでしょう。
 採用されて試用期間中に本採用拒否(解雇)された労働者からは,全く感謝されず,それどころか「中途半端に採用されなければ,他社で正社員として就職することができたのに,人を物のように扱うブラック企業によって人生を狂わされた。」と非難されることも珍しくありません。
 使用者は,その応募者に魅力があって雇いたいと考える場合に初めて雇うべきであり,魅力がないと判断したら不採用とする必要があります。
 「雇ってあげる。」といった発想で社員を雇った場合,会社経営者は「いいことをしたのだから,感謝されないまでも,悪くは思われることはないだろう。」と思い込んだり,自分が面倒見のいい親分になったような気分に浸ったりして脇が甘くなりやすく,トラブルになるリスクが極めて高くなりますので,そうはならないよう,気持ちを引き締めて採用活動に当たって下さい。


「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」とはどんな場合?

2014-08-03 | 日記

「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」(三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)とは,具体的にどういった場合ですか?

 三菱樹脂事件最高裁大法廷判決は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」を以下のように言い換えて説明しています。
 「換言すれば,企業者が,採用決定後における調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが,上記解約権留保の趣旨,目的に徴して,客観的に相当であると認められる場合には,さきに留保した解約権を行使することができるが,その程度に至らない場合には,これを行使することはできないと解すべきである。」

 緩やかな基準で認められる試用期間中の本採用拒否(解雇 )は,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解雇)に限られます。
 採用当初から知り得た事実を理由とする解雇は,解約権留保の趣旨,目的の範囲外ですので,留保された解約権の行使としては認められません。
 したがって,採用面接時に知り得た事実を理由とする本採用拒否(解雇)は緩やかな基準では判断されず,通常の解雇の基準で判断されることになります。


試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否(解雇)できますよね?

2014-08-03 | 日記

試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否(解雇)できますよね?

 試用期間 中の社員の本採用拒否は,本採用後の解雇 と比べて,使用者が持つ裁量の範囲は広いと考えられており,三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決も,試用期間における留保解約権に基づく解雇(本採用拒否)は,通常の解雇と全く同一に論じることはできず,通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものと判示しています。
 しかし,最高裁は,他方で,試用者の本採用拒否は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」とも判示しており,客観的に合理的な理由がなければ本採用拒否ができないことは通常の解雇と変わりはありませんので,本採用拒否されてもやむを得ない事情を証拠により立証できなければ本採用拒否(解雇)することはできないことに変わりありません。