精神疾患 を発症して休職に入った社員の復職の可否は,「休職期間満了日までに,債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否か」により判断するのが原則です。
ただし,診断書等の客観的証拠により,間もない時期に債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善していると認定できる場合には,休職期間満了により退職扱いにするかどうかを慎重に判断する必要があります。休職期間満了時までに精神疾患が治癒せず,休職期間満了時には不完全な労務提供しかできなかったとしても,直ちに退職扱いにすることができないとする裁判例もあります。
職種が限定されている場合は,限定された当該職種について債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かを検討します。
通常の正社員のように,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合も,現に就業を命じられた特定の業務について,債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かを検討するのが原則ですが,労働者が,現に就業を命じられた特定の業務について,労務の提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模,業種,当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供を申し出ているならば,当該業務について,債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かを検討する必要があります(片山組事件最高裁平成10年4月9日第一小法廷判決参照)。