弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

近時の中労委は,不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲をどのように捉えていますか

2014-08-12 | 日記

近時の中労委は,不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲をどのように捉えていますか。

 近時の中労委は,不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲に関し,ショーワ事件平成24年9月19日決定において下記「労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理」を示しました。以後の事件でも同様の立場を取っていますので,「労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理」は中労委の確定した見解となっているものと思われます。
 中労委により労組法7条の「使用者」に該当する者として例示されているもののうち,①②は朝日放送事件最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決の判断と共通しています。③は,朝日放送事件最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決では触れられていません。おそらく,クボタ事件東京地裁平成23年3月17日判決の見解を取り入れたものと思われます。

【労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理】
 労組法7条は,労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために,労働者が自主的に労働組合を組織し,使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること,その他の団体行動を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものであるから,同条にいう「使用者」は,「同法が上記のように助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者」を意味し,
 ① 労働契約上の雇用主
が基本的にこれに該当するものの,必ずしも同雇用主に限定されるものではなく,雇用主以外の者であっても,例えば,
 ② 当該労働者の基本的な労働条件等に対して,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者
 ③ 当該労働者との間に,近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者
もまた雇用主と同視できる者であり,労組法7条の「使用者」と解すべきである。


労働審判から訴訟に移行した場合,最初から訴訟をした場合と比べて解決までの時間は長くなりますか?

2014-08-12 | 日記

労働審判に異議が申し立てられて訴訟に移行した場合,最初から訴訟が提起された場合と比べて,解決までの時間が長くなってしまうのでしょうか。

 労働審判 から訴訟に移行した場合,労働審判手続において既に争点の整理ができているケースが多いことから,和解交渉のため期日を重ねたというような事案でない限り,異議申立て後,判決までの期間は短くなっており,労働審判を経ずに訴訟が提起された場合と比較して,解決までの時間が長くなってしまうということは多くないようです。
 ただし,「訴状に代わる準備書面」の記載内容が労働審判手続を踏まえた内容になっていないような場合は,答弁書も労働審判における答弁書と同じような内容のものが提出されることになりがちであり,同じような主張・反論が繰り返された結果,解決までの時間が無駄に長くなってしまう可能性がありますので,訴訟に移行した後の主張書面には,労働審判の経緯を踏まえた主張・反論をしっかり記載する必要があります。


労働審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合,どのような流れで訴訟手続が開始しますか。

2014-08-12 | 日記

労働審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合,どのような流れで訴訟手続が開始しますか。

 労働審判 に異議を申し立てて訴訟手続に移行した場合,労働審判の代理人が引き続き訴訟を受任する場合であっても,新たに訴訟委任状を追完する必要があります。
 原告(労働審判手続における申立人)に対しては,異議申立てから2~3週間程度の間に,労働審判手続を踏まえた,「訴状に代わる準備書面」及び書証の提出,提訴手数料の追納及び郵便切手の予納が指示されることになります。
 これに対し,被告(労働審判手続における相手方)は,「訴状に代わる準備書面」に対する「答弁書」等を提出し,第1回訴訟期日に臨むことになります。


労働審判に対し異議を申し立てるかどうかは,どのように判断すればよろしいでしょうか。

2014-08-12 | 日記

労働審判に対し異議を申し立てるかどうかは,どのように判断すればよろしいでしょうか。

 労働審判 手続で解決しておくべきか,労働審判に対し異議を申し立てて訴訟で戦うべきかの判断は,当該労働審判の内容自体の妥当性のほか,他の労働者への波及効果等をも考慮して決定すべきものです。労働審判の内容に若干の疑問があっても,問題の程度が大きくない場合や,他の労働者への波及効果が低い場合については,労働審判に異議を申し立てる必要性が低いと考えられます。
 実際の労働審判事件では,代理人弁護士の意見を参考にするとよいでしょう。代理人弁護士が異議を申し立てるべきだという意見の場合は,異議を申し立てて訴訟で争うことも検討に値しますが,代理人の弁護士が労働審判手続で調停をまとめるべきだとか,労働審判に対し異議を申し立てずにそのまま解決した方がいいという意見を述べている場合は,異議を申し立てて訴訟で争っても良い結果に終わることは稀ではないかと思います。


労働審判手続で調停が成立しなかった場合はどうなりますか。

2014-08-12 | 日記

労働審判手続で調停が成立しなかった場合はどうなりますか。

 労働審判委員会から示された調停案を当事者のいずれかが最後まで受け入れなかった場合は,24条終了するような場合を除き審理の終結が宣言され,概ね調停案に沿った内容の労働審判 が当事者双方に告知されるか,審判書が送達されることになります。
 労働審判に対しては,告知・送達から2週間以内に異議を申し立てることができますが,当事者いずれも異議を申し立てなかった場合は,労働審判は裁判上の和解と同一の効力(既判力,執行力等)が生じます。他方,当事者いずれかから異議が申し立てられた場合は,異議を申し立てた当事者に有利な内容の部分を含めた労働審判の効力そのものが失われ,訴訟手続に移行します。
 労働審判に対し異議を申し立てた結果,移行後の訴訟で,労働審判で支払を命じられた金額よりも多額の金銭の支払を命じられるということは珍しくありませんので,労働審判に対し異議を申し立てるかどうかは慎重に検討する必要があります。


労働審判手続の第2回以降の期日は,どれくらいの時間がかかりますか。

2014-08-12 | 日記

労働審判手続の第2回以降の期日は,どれくらいの時間がかかりますか。

 労働審判 手続は,第1回期日で事実審理が終了していることが多いため,第2回以降の期日は調停をまとめるための期日になるのが通常であり,第1回期日よりも短時間で終わる傾向にあります。第1回期日で既に労働審判委員会から調停案が示されていたような場合には,解決金の金額を中心とした調停内容についての調整がなされることになり,当事者双方が調停案を直ちに受け入れたような場合は,期日は30分足らずで終了することもあります。
 ただし,第2回以降の期日であっても,当事者から新たな主張がなされそれが審理されることになったような場合には,事実審理に時間が取られることになりますし,当事者双方が調停案を直ちに受け入れなかったものの,もう少しで調停が成立しそうな状況だったため,その日のうちに調停を成立させるために交渉が継続されたような場合には,調停に長めの時間が取られることもあり得ます。私の経験でも,第2回期日に2時間30分かかったことがありました。
 したがって,事前に話がついているような場合を除き,第2回以降の期日についても2時間程度は時間が取られても支障が生じないよう,スケジュールを調整しておくべきでしょう。万全を期すのであれば,3時間程度,裁判所での時間を確保しておくことをお勧めします。


労働審判手続の第1回期日にかかる時間はどれくらいですか。

2014-08-12 | 日記

労働審判手続の第1回期日にかかる時間はどれくらいですか。

 労働審判 手続の第1回期日は,通常,2時間程度かかります。私がこれまで現実に経験した労働審判事件の第1回期日は,最短1時間20分~最長3時間30分かかっています。
 最低2時間,できれば3時間30分程度の時間を取られても不都合が生じないよう,スケジュール調整しておくべきでしょう。
 なお,第1回期日にかかる時間は,事案の複雑さの程度にもよりますが,同程度の事案であれば,申立書,答弁書において充実した主張反論がなされているケースの方が事実審理に要する時間が短くて済みますので,期日の所要時間が短くなる傾向にあります。


労働審判の第1回期日の出頭を弁護士に任せ,会社関係者は出頭しないことにすることはできますか。

2014-08-12 | 日記

労働審判の第1回期日の出頭を弁護士に任せ,会社関係者は出頭しないことにすることはできますか。

 労働審判 の第1回期日おける審理では,事実関係について説明する必要がありますが,事情をよく知る会社関係者が事実関係を説明しないことにはリアリティーがありません。例えば,解雇 した際の言葉のやり取り等の重要な事実関係を,解雇の現場にいたわけでもない代理人弁護士が説明したのでは,今ひとつ説得力がないということは,ご理解いただけることと思います。
 労働審判の第1回期日の出頭を代理人弁護士に任せ,会社関係者は出頭しないことにするのは,お勧めできません。紛争の実情を把握している会社関係者が1名から2名程度,出頭すべきです。


紛争の実情をよく知っている担当社員が第1回期日に出頭できない場合はどうすればよろしいでしょうか。

2014-08-12 | 日記

紛争の実情をよく知っている担当社員が第1回期日に出頭できない場合はどうすればよろしいでしょうか。

 紛争の実情をよく知っている担当社員が,第1回期日には出頭できない場合であっても,第2回期日なら何とか出頭できそうだという場合は,その旨,答弁書に記載して事情を説明するなどして,労働審判委員会と進行の調整をするべきでしょう。
 当該社員が退職するなどして第2回期日にも出頭できないような場合は,今残っている社員でベストを尽くすほかありません。このような事態になっても,書面等の客観的な証拠だけで,会社の主張がほぼ認められるくらいにしておけば,大きな問題は生じません。他方,客観的な証拠がほとんどない場合は,本来よりも不利な調停内容になる可能性があります。


労働審判期日には会社の誰が出頭する必要がありますか。

2014-08-12 | 日記

労働審判期日には会社の誰が出頭する必要がありますか。

 労働審判 期日では双方の主張を基礎付ける事実関係について質問されますので,問題となる事実関係について直接体験した人物が出頭する必要があります。問題となる事実を体験した本人ではなく,報告を受けただけの人物しか出頭できないと,伝聞での証言しかできないため証言の証拠価値が下がり,事実認定の上で会社に不利益となることがあります。
 また,調停に応じるかどうかその場で判断できる立場の人物が同行することも望ましいところです。いったん会社に持ち帰って検討してからでないとその内容で調停をまとめるかどうか決められないというのでは,まとまる調停もまとまらず,長期間にわたり訴訟で戦い続ける事態を余儀なくされる可能性が高くなります。調停に応じるかどうか判断できる立場の者が同行できない場合は,労働審判期日中は電話に出られるようにしておき,調停に応じるかどうか電話で指示できるようにしておくなどの対応が必要となります。